トリファ、OTA事業参入を検討 eSIM企業から旅行インフラ企業へ

  • 2026年6月30日
トリファ代表取締役の嘉名雅俊氏

 海外eSIMアプリ「トリファ」を展開するトリファが、OTA事業への参入を視野に入れていることが分かった。嘉名雅俊代表取締役は6月30日の新CM発表会兼事業戦略発表会後の本誌取材に対し、航空・宿泊手配などOTA領域への展開について、「旅行会社として成長していくために、そういった領域への進出は社内でも十分に検討している」と述べた。具体的な開始時期や対象商材については回答を控えたが、「十分に可能性はある」と述べ、展開を否定しなかった。

 トリファは2020年に創業し、2021年に海外eSIMアプリ「トリファ」をリリースした。嘉名氏は発表会で、パンデミック収束後の約2年で売上が15倍に拡大し、アプリの累計ダウンロード数は200万件を超えたと説明した。同氏は自社を「eSIMの会社」ではなく、海外旅行のあらゆる障害を取り除く会社と位置づけており、eSIMはあくまで旅行者との接点を得る入口だとしている。eSIMを起点に、入国手続き、海外旅行保険、VPN、ラウンジパスに加え、将来的には決済や交通予約まで含めた「旅行インフラ」への進化を掲げる。

 成長投資も加速している。同社は6月、シリーズCラウンドでエクイティとデットを合わせて総額約50億円を調達し、累計調達額は約63億円となった。資金使途には、決済や交通予約サービスなどeSIM以外の旅行関連領域への新規事業展開、東アジア各国への展開、AI投資、組織体制の拡充を掲げる。決済領域についても、嘉名氏は「決済領域もやりたいという話はしている」と説明した。ただし、現地決済なのか、予約・手配に伴う決済なのかなど、具体的なサービス像は未公表である。現時点ではeSIMを主軸としながら、旅マエ・旅ナカの周辺領域を順次取り込む構想段階とみられる。ANA未来創造ファンドも出資しており、ANAホールディングスは国際線ネットワークを活かしてトリファを支援する方針を示している。

 今回の発表会で公表した米国渡航認証ESTAの申請サポートサービス「入国手続きサポート」は、こうした事業拡張の一環となる。同サービスは、パスポートをスマートフォンで撮影すると氏名や生年月日などの基本情報を自動反映し、日本語入力でESTA申請を支援するもの。eSIM利用者向けには、eSIM料金に同サポートを含む「シンプルプラン」を用意した。ESTA申請経験者353名を対象にした同社調査では、56.4%が申請時に不安や困りごとを経験し、70.3%が申請に手間を感じたと回答しており、同社は渡航手続きの負担を新たな旅行の障壁と捉える。

 嘉名氏は発表会で、旅行者の手配行動にも変化が起きていると指摘した。スマートフォン上で地図、翻訳、SNS、AI検索を使いながら個人で旅を組み立てる旅行者が増える一方、選択や準備の手間は増しているという。同社のデータでは、大容量プランを選ぶユーザー比率が1年で30%から60%へ倍増しており、現地でスマートフォンを使いこなす旅行者が増えていることも、周辺サービス拡張の背景にある。

 旅行会社との関係も広がっている。トリファは4月、日本旅行グループの日旅産業と販売パートナー契約を締結し、2026年春から日本旅行の全販売チャネルで「トリファ」の取り扱いを開始した。嘉名氏は本誌取材でも、今後日本旅行を含む旅行会社や旅行関連事業者とともにトリファを訴求していくことに注力する方針を示した。

 海外展開では、2024年に台湾へ進出し、すでに全体売上の約1割を海外が占めるという。嘉名氏は発表会で、今後は東アジアNo.1を目指すと説明した。台湾に続く重点市場として韓国、香港を挙げ、まずはeSIMサービスとしてNo.1を目指しつつ、その先はeSIMに限らず旅行の障害を取り除くサービス全体での成長を狙う考えを示した。