帝国ホテル京都開業、インバウンド依存に慎重 社長インタビューで戦略語る

帝国ホテル代表取締役社長執行役員 風間淳氏

 帝国ホテルは3月5日、京都・祇園に「帝国ホテル 京都」を開業した。30年ぶりの新規開業となる同ホテルについて、代表取締役社長執行役員の風間淳氏がインタビューに応じ、ブランド戦略や需要見通しについて説明した。規模拡大ではなくブランド価値の向上を目的とした拠点と位置付け、国内顧客を基盤とした持続的な需要創出を重視する考えを示した。

 帝国ホテルが京都・祇園に開業した新ホテルは、全55室のスモールラグジュアリーとして展開する。国の登録有形文化財である弥栄会館の一部を保存・活用し、歴史的景観と現代的機能を融合した施設である点が特徴だ。開業当日はテープカットや祇園甲部の芸妓による祝賀演出も行われ、地域文化との連携を強く打ち出した。

 今回の出店について、風間淳社長は「京都への進出は10年以上前からの強い思いだった」とし、必ずしも収益規模を追求したものではないと説明する。客室数55室という規模についても、収益最大化よりブランド価値の発信を重視した結果であり、「数字的なボリュームではなくブランド」と明言した。

 また、京都市場についてはインバウンド需要の拡大による競争激化とコスト上昇を指摘しつつも、ハイエンド市場は限定的であり過度な競争状態にはないとの認識を示す。一方で、インバウンド需要については「恩恵は大きいが依存はリスク」とし、過去の危機で需要が急減した経験から、国内顧客を基盤とする重要性を強調した。日本人顧客からの評価を高めることが、結果的に海外市場での評価にもつながるとの考えだ。

 需要構成については、将来的にインバウンド比率5〜6割を目指すが、開業当初は認知不足もあり国内客中心で推移する見込みだ。海外市場については大手チェーンのような会員基盤を持たないことから、旅行会社や国際的ネットワークを活用した地道なマーケティングを進める方針。旅行会社経由の販売についても、需給動向を見極めながら柔軟に対応するとしており、流通面での連携余地は残されている。

 施設面では、弥栄会館の外壁や意匠を保存・再利用し、日本古来の素材を活用した空間設計を採用した。客室には畳を取り入れるなど、日本的価値を前面に打ち出しており、インバウンドを意識した設計ではなく「日本らしさ」を軸に据えた点も特徴である。

 同社にとって京都は、東京・大阪・上高地に続く国内拠点であると同時に、ブランドを再定義する役割を担う。風間社長は「東京を凌ぐポテンシャルもある」とし、ブランド牽引役としての機能に期待を寄せる。今後の出店については、国内主要都市での新規展開には一定の区切りを示しつつ、リゾートなど新たな領域での可能性には含みを持たせた。

 なお、館内外の様子は、別途フォトニュースとしてまとめている。施設の詳細な空間や意匠については「フォトニュース」もあわせて参照されたい。