価格競争から価値競争へ、JATA経営フォーラムで示されたATによるマネタイズ戦略
JATA髙橋広行会長
日本旅行業協会(JATA)は3日、2月26日から配信予定の「第34回JATA経営フォーラム2026」に向け、基調講演を公開収録した。訪日旅行市場が拡大する一方で、価格競争や収益性の低下が課題となるなか、アドベンチャートラベル(AT)を軸に、旅行会社がいかに価値を創出し、持続的な収益モデルを構築していくかがテーマとなった。
冒頭の会長挨拶でJATA会長の髙橋広行氏は、2025年の訪日外国人旅行者数が4268万人、消費額が9.5兆円に達し、訪日旅行が日本経済にとって重要な基幹産業へと成長している現状を紹介した。一方で、日本人の出国者数は回復途上にあり、円安や物価高といった外部環境の変化が旅行業界に影響を与えていると指摘した。そのうえで、「安く行けるから旅行に行く時代から、価値があるから旅行に行く時代へ、我々自らがトレンドを作っていかなければならない」と述べ、価格を起点としたビジネスモデルからの転換を呼びかけた。
また、髙橋氏は、昨年JATAと韓国観光公社で共同開催した韓国での「咸安の落火ノリ」ジャパンデーイベントに日本から約1000人が参加した事例を紹介し、「価値あるものに対しては、お客様はお金も時間も惜しまないということを改めて実感した」と強調。インバウンドについては、「アウトバウンドや国内旅行が伸び悩むなかで、成長分野である訪日市場を事業の柱の一つとして捉えるべき」と述べ、地域のインバウンド市場の開拓にあたっては、商品造成や送客のノウハウを持つ旅行会社こそが、その中心的な役割を担えるとの考えを示した。
続く基調講演では、鶴雅リゾートで海外事業の運営を担いながら、日本アドベンチャーツーリズム協議会のグローバルマーケティングディレクターも務める高田健右氏が登壇した。高田氏は、「フィジカルアクティビティ」「異文化体験」「自然との交流」という三要素のうち、少なくとも二つを含む旅行というATの定義を紹介し、ATは訪日旅行市場において高付加価値化と持続性を両立できる有効なアプローチであると位置づけた。
高田健右氏
講演の中心となったのは、ATによるマネタイズの考え方だ。高田氏は、「高付加価値は高コストではない」と明言し、「地域資源は新しく作るものではなく、すでにそこにあるものをどう捉え直し、どう編集するかが重要」と指摘した。例えば、自然は単なる景観ではなく生業や信仰のフィールドとして、文化は伝統工芸そのものではなく作り手の人生や哲学として、食は郷土料理ではなく季節や風土、知恵の集合体として捉え直すことで、体験価値は大きく高まると説明した。
価格が上がる体験の共通点としては、通訳ではなく解釈者としての役割を果たすガイドの存在、人数や時期を限定した希少性、参加者に学びや変化をもたらす構成、そして「その人のため」に設計された体験であることを挙げ、「体験そのものと魅せ方を掛け合わせることで、価格は作れる」と語った。これにより、価格競争から脱却し、価値を軸に選ばれる商品造成が可能になるとした。
また、ATが持つ特性について、「自然や文化を守るだけではなく、きちんと利益を生み、それを継続することがアドベンチャートラベルの考え方」と述べ、サステナブルであることと収益性は両立すると指摘。少人数・高付加価値で展開できるATは、量の拡大に依存せず、結果として地域に持続的な収益をもたらすモデルになり得るとした。
高田氏は講演の締めくくりとして、ATは旅行会社が本来持つ企画力や編集力を最も発揮できる分野だと強調した。そのうえで、「コロナ禍やDXが進んで、旅行会社が必要ではなくなる時代が来ると言われることもある。ただ、こういった人に寄り添う旅行づくりは、やはり旅行会社にしかできないことだと信じている」と述べ、価値を起点とした商品造成において旅行会社が果たす役割の重要性を示して講演を締めくくった。

