国土交通大臣 金子恭之氏
①国民の安全・安心の確保
(能登半島における自然災害からの復旧・復興)
能登半島地震の発生から2年、そして、復興中の奥能登を襲った豪雨から約1年3月が経ちました。震災や豪雨によって亡くなられた方々の御冥福を改めてお祈りいたします。
被災地の賑わいと笑顔を一日も早く取り戻し、被災された方々の生活やなりわいの再建が叶うよう、国土交通省を挙げて、復旧・復興を、急いでまいります。
観光については、能登地域の観光拠点・観光資源の再生に向けて、宿泊施設の事業再開・事業継続に向けた計画の策定、復旧後の誘客促進を図るためのコンテンツ造成等の支援や、被災地の状況を踏まえた観光プロモーションに取り組むとともに、復興状況に応じた手厚い旅行需要喚起策を行うことを検討してまいります。
(中略)
能登空港については、令和6年12月25日からは震災前と同様、一日2便に復便しております。引き続き、権限代行により、滑走路等の早期復旧を目指します。
(令和7年の自然災害等からの復旧・復興)
昨年は8月に九州・北陸地方を中心に被害が発生した大雨や、八丈島に上陸した台風22・23号、大分県大分市で発生した大規模な火災など、全国各地で様々な災害が発生しました。また、12月には青森県東方沖で最大震度6強の地震が発生し、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を初めて発表しました。
8月6日からの大雨では、多数の中小河川の氾濫や土砂災害、断水等が発生しました。私も熊本県の被災現場を視察し、深刻な被害を目の当たりにしました。国道10号網掛橋では護岸崩壊により通行止めが発生したため、並行する東九州自動車道(隼人東IC~加治木IC)において代替路(無料)措置を実施しました。11月9日には網掛橋の応急復旧の完了により通行止めが解消されましたが、引き続きこれらの被災した施設の本復旧等を進めてまいります。
10月中旬に八丈島を襲った台風第22・23号では、最大で4,000戸を超える断水や八丈一周道路(都道)の三根~中之郷間で通行止め等が発生しました。被災された方の生活再建に向け、関係機関が連携して応急給水、被災施設の復旧作業等を行い、11月15日には全域で断水が解消されたほか、八丈一周道路の中之郷~末吉間については10月9日に緊急車両等・10月31日に一般車両の通行が可能となり、末吉~三根間についても10月17日に緊急車両等の通行を確保し、現在は一般車両の通行確保に向けて復旧作業を行っているところです。
11月に発生した大分県大分市の大規模な火災に対しては、九州地方整備局に「大分市佐賀関復興まちづくり・住まいづくり支援チーム」を設置し、まちと住まいの復興に向けた助言等の支援を行っているほか、消防庁とともに検討会を設置し、木造密集市街地における大規模火災に対する今後の消防防災対策のあり方の検討を行っています。
12月8日の青森県東方沖の地震については、私も被災地を視察し、八戸港やJR八戸線といったインフラやNTT鉄塔の被害状況を現場で確認するとともに、青森県知事・八戸市長とも意見交換を行い、被災地域の皆様に寄り添った災害対応、早期復旧を進める決意を新たにしたところです。
また、過年度に発生した災害についても復旧・復興に必要な取り組みを行っており、例えば熊本県を中心に被害が生じた令和2年7月豪雨については、国・県・流域市町村等が一体で取り組んでいる「球磨川水系流域治水プロジェクト」により、河道掘削や遊水地整備、そしてプロジェクトの根幹となる川辺川ダムといった抜本的な治水対策を強力に推進しています。この豪雨で被災したJR九州肥薩線については、令和4年から国も入ったJR肥薩線検討会議を中心に議論を進めてきており、八代駅~人吉駅間については、昨年4月に熊本県とJR九州との間で、上下分離方式による鉄道での復旧に関する最終合意が行われたところです。
引き続き、できる限り現場に赴き、被災された方の生の声を聞きながら、地域の一日も早い復旧・復興に全力を尽くすとともに、地域住民の生命・身体・財産を守り抜くためには「できることは全てやる」という考えのもと、さらに災害に強い国づくりを進めてまいります。
(東日本大震災からの復興・再生)
東日本大震災からの復興・再生は、政府の最優先課題の一つです。『福島の復興なくして、東北の復興なし。東北の復興なくして、日本の再生なし』。この強い決意の下、現場の声にしっかりと耳を傾け、被災者の方々のお気持ちに寄り添いながら、被災地の復興・再生に取り組んでまいります。
国が主体となって整備を進めてきた復興道路・復興支援道路550kmについては、令和3年12月18日に全線開通しました。このうち、例えば、三陸沿岸道路は圏域の骨格軸を形成し、時間短縮により交流人口を拡大するとともに、多くの企業立地を促進しており、間接効果や、災害に対する強靱性、低炭素化など、多様な効果を発揮しています。引き続き、常磐自動車道における暫定2車線区間の4車線化及び小高スマートICの整備を推進してまいります。
観光関係では、実際に現地を見ていただくことが最大の風評対策と考えています。福島県に対し、滞在コンテンツの充実・強化等の取組を支援すると共に、ALPS処理水の海洋放出による風評対策として、岩手県から茨城県の沿岸部に対し、国際環境認証であるブルーフラッグ取得等の取組を支援してまいります。
(輸送の安全の確保)
令和6年1月の羽田空港での航空機衝突事故を踏まえ、昨年6月に公布された「航空法等の一部を改正する法律」により、空港における滑走路の安全対策の強化や、ヒューマンエラーの未然防止を目的としたパイロットの技能発揮訓練(CRM訓練)の義務付けを行いました。引き続き、航空の安全・安心の確保に万全を期してまいります。
令和4年4月に、北海道知床において小型旅客船が沈没し、乗客乗員計26名が死亡・行方不明となる重大な事故が発生しました。改めて、お亡くなりになられた方々とその御家族の皆様方に対し、心よりお悔やみを申し上げるとともに、事故に遭遇された皆様とその御家族に重ねて心よりお見舞い申し上げます。国土交通省では、事故発生以来、海上保安庁の巡視船艇・航空機等による捜索を実施してきました。また、「海上運送法等の一部を改正する法律」に基づき、船員の資質向上や監査の強化などの対策を行うとともに、本年4月からは、安全統括管理者・運航管理者の資格者証保有者からの選任が義務化される予定です。引き続き、皆様に安心して利用いただけるよう、安全・安心対策に万全を期してまいります。
(クマ被害への対応)
クマによる人身被害が相次いでいることを踏まえ、昨年11月に「クマ被害対策パッケージ」が決定されました。国土交通省としては、河川におけるクマ出没防止対策、インバウンドを含む観光客への多言語による情報発信を行うこととしております。同パッケージを踏まえ、国土交通省としても、クマ被害の防止に必要な対策を着実に実行してまいります。
②力強い経済成長の実現
(基幹的な交通体系の整備)
鉄道分野においては、整備新幹線、リニア中央新幹線について、地元の理解を得つつ、着実に整備が進められるよう、必要な取組を行ってまいります。
現在建設中の北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)については、昨年3月、有識者会議の報告書において、完成・開業は現時点では概ね2038年度末頃の見込みだが、開業時期については今後改めて精査が必要とされました。また、昨年12月、建設主体である鉄道・運輸機構より、現時点の想定では、事業費が最大1.2兆円増加するおそれがあるとの報告がありました。この報告を受けて、有識者会議を開催し、改めて事業費の精査を進めてまいります。関係者の理解と協力を得て、北海道新幹線の整備を着実に進めるよう努めてまいります。
残る未着工区間について、北陸新幹線(敦賀・新大阪間)については、一日も早い全線開業に向けて、与党でのご議論も踏まえつつ、鉄道・運輸機構とともに、丁寧かつ着実に取り組んでまいります。九州新幹線(新鳥栖・武雄温泉間)については、引き続き、新幹線整備の必要性、重要性についてご地元の皆様に丁寧に説明をしていくとともに、佐賀県との間でも議論を続けていくなど、ご理解を得られるよう取り組んでまいります。
また、整備新幹線として最初に整備された北陸新幹線(高崎・長野間)は、令和9年9月末で開業から30年を迎えます。開業から30年間収受することとされている整備新幹線の貸付料のそれ以降の取扱い等を含め、今後の整備新幹線の貸付のあり方について議論するため、交通政策審議会の下に「今後の整備新幹線の貸付のあり方に関する小委員会」を設置しました。こうした場での議論も通じ、整備新幹線の整備財源となる貸付料について、開業後31年目以降も適正に収受できるよう、検討を進めてまいります。
リニア中央新幹線(品川・名古屋間)については、建設主体であるJR東海において、山梨リニア実験線を除く工事区間約243kmのうち、約9割の区間で工事契約が締結され、工事が進められています。未着工の静岡工区については、「静岡工区モニタリング会議」を通じて、JR東海の対策状況を継続的に確認するとともに、静岡県とJR東海の協議に国土交通省も入って一層の対話を促すなど、早期開業に向けた環境整備を進めてまいります。名古屋・大阪間も含め、関係自治体やJR東海と連携し、一日も早い全線開業に向けてしっかりと取り組んでまいります。
基本計画路線を含む幹線鉄道ネットワークについて、地域の実情を踏まえ、高機能化に関する調査や方向性も含めた検討など、更なる取組を進めてまいります。
航空分野のうち、羽田空港については、2020年3月から現在の飛行経路の運用を開始しており、引き続き、騒音・落下物対策の更なる充実を図るとともに、地域への丁寧な情報提供を行ってまいります。また、機能拡充に向けて、空港アクセス鉄道の整備等を進めてまいります。
近畿圏空港については、2030年前後を目途とした関西3空港全体での年間発着容量50万回に向けて、昨年3月より開始した新たな飛行経路について、安全面・環境面に配慮した着実な運用を行うほか、必要な機能強化を推進してまいります。
中部空港については、現滑走路の大規模補修時における継続的な空港運用及び完全24時間運用の実現等を目的とした代替滑走路事業を推進してまいります。
その他地方空港については、北九州空港及び屋久島空港の滑走路延長事業、那覇空港の国際線ターミナル地域再編事業、丘珠空港の滑走路延長に係るPI(パブリック・インボルブメント)や環境影響評価の取組みなどを推進し、ゲートウェイ機能の強化を図ってまいります。
(成田空港の機能強化)
成田空港については、地域との共生・共栄の考え方の下、国際競争力の強化、インバウンドの受入れ、国際物流ネットワーク構築の観点から、B滑走路の延伸及びC滑走路の新設等の「更なる機能強化」を着実に進め、年間発着容量50万回の早期実現を図ってまいります。
(質の高い都市鉄道ネットワーク)
都市鉄道については、昨年10月に新空港線(蒲蒲線)の速達性向上計画を認定し、事業化したところです。これにより、新宿や渋谷などの国際競争力強化の拠点と羽田空港とのアクセス利便性の向上が期待されます。このほか、国際競争力の強化等に資する都市鉄道ネットワークの充実を図るため、なにわ筋線、東京メトロ有楽町線(豊洲~住吉)、同南北線(品川~白金高輪)などの整備を着実に進めてまいります。また、成田空港の発着容量拡大を見据え、鉄道アクセスの機能強化について、国際観光旅客税の活用も含め、具体的な支援を検討してまいります 。
(持続可能な産業の実現、各分野の担い手の確保、生産性の向上)
地域を支える基幹産業を活性化し、成長力を高めていくことが求められています。持続可能な産業の実現に向け、各分野における担い手の確保、生産性の向上に取り組んでまいります。
(中略)
バス・タクシーの担い手確保や経営力強化に向け、早期の賃上げや人材確保・養成の取組、経営効率化に向けた投資への支援を推進するとともに、特定技能外国人の受入れ等を進めてまいります。
(中略)
旅客船事業者についても、インバウンド需要の拡大や、離島航路の維持確保、DX・GXの推進に向けた設備投資支援等に取り組んでまいります。
(航空ネットワークの維持・確保、空港業務DXの推進)
我が国国内航空の事業環境は、新型コロナを契機とした需要構造の変化、世界的な物価高やドル高円安の影響による燃料費、整備費等の外貨建てコストの増大等を背景に、厳しい状況におかれています。
航空ネットワークは、公共交通として国民の社会経済活動を支えるとともに、インバウンドの受入れをはじめ、我が国の成長戦略にも不可欠な「空のインフラ」です。地方創生や観光立国の実現に不可欠である航空ネットワークの維持・確保のため、国内線事業の構造改革や航空機燃料税の軽減措置等を行うこととしています。
また、インバウンド需要の動向に柔軟に対応するため、グランドハンドリングや保安検査をはじめとする空港業務の処遇改善や人材確保・育成への支援とともに、制限区域内における無人運転の実現等、DX化による生産性の向上を両輪として推進してまいります。
(国際民間航空機関(ICAO)を通じた国際連携強化)
国際民間航空機関(ICAO)は国連の専門機関の一つとして、航空の安全をはじめ、航空分野における国際的なルール形成において極めて重要な役割を担っています。
本年1月に、国土交通省出身の大沼俊之氏が、アジア大洋州地域初のICAO理事会議長に就任しました。大沼氏の就任は、我が国が航空分野において積み重ねてきた信頼の証であり、国際的な議論をリードする体制を築くうえで大きな前進です。
この機会を捉え、大沼氏率いるICAOとの協力関係を一層強化し、さらには国際連携も深化させながら、民間航空の持続可能な発展に積極的に貢献してまいります。
(グリーン・トランスフォーメーション)
カーボンニュートラルやネイチャーポジティブなど、地球環境問題を巡る世界の潮流は大きく変化する中で、まちづくり・インフラ、交通・運輸などくらしと経済を支える幅広い分野を所管する国土交通省の果たす役割は大きいと認識しております。環境施策を巡る様々な社会経済情勢の変化を踏まえ、昨年改定した「国土交通省環境行動計画」に基づき、様々な関係者と連携し、脱炭素・サーキュラーエコノミー・自然共生の取組を推進してまいります。
(中略)
交通分野においては、EV車両等の導入等による支援を行うとともに、AIオンデマンド交通やMaaSの導入等による利便性向上を進めることで、環境負荷の低減を図りながら、公共交通の利用を促進してまいります。
(中略)
自動車分野においては、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、関係省庁と連携し、商用電動車(トラック、バス、タクシー)の導入を強力に支援するとともに、商用電動車のラインナップの拡充や性能の向上に向けた取組を進めて参ります。
航空分野においては、航空法等に基づく「航空運送事業脱炭素化推進計画」及び「空港脱炭素化推進計画」の認定を引き続き進めてまいります。また、持続可能な航空燃料(SAF)、空港への再エネの導入促進等に取り組んでまいります。
鉄道分野においては、回生電力の活用、エネルギー効率の高い車両の導入、水素燃料電池鉄道車両の社会実装、バイオディーゼル燃料や鉄道アセットを活用した再生可能エネルギーの導入推進等、鉄道ネットワーク全体の脱炭素化に向けて取り組んでまいります。
(国際園芸博覧会の開催に向けた取組)
神奈川県横浜市で開催するGREEN×EXPO 2027(2027年国際園芸博覧会)は、令和8年3月に開幕1年前となり、開催準備を一層強化する必要があります。GREEN×EXPO 2027では、花や緑、食と農の魅力に加え、地球環境問題の解決に資する優れた国内技術を世界に発信することを目指しています。関係省庁や自治体、経済界、GREEN×EXPO協会などが緊密に連携し、オールジャパンの体制で、開催準備を進めてまいります。



