仏ヴァル・ドワーズ県、印象派軸に"海外最大市場"の日本強化 地下鉄誘致計画も

  • 2025年9月30日
(左から)フランス観光開発機構日本事務所 日本・ASEAN代表のジャン=クリストフ・アラン氏、ヴァル・ドワーズ県議会議長マリー=クリスティーヌ・カヴェキ氏、フランス観光開発機構プロモーション・マネージャーの神谷明子氏、ヴァル・ドワーズ県観光局会長のジュリアン・バシャール氏

 フランスのヴァル・ドワーズ県議会議長のマリー=クリスティーヌ・カヴェキ氏、ヴァル・ドワーズ県観光局会長のジュリアン・バシャール氏がこのほど来日し、大阪で旅行会社40社を対象に観光セミナーを開催した。セミナー後の記者会見ではスローツーリズム促進やシャルル・ド・ゴール空港(CDG)までの地下鉄敷設誘致など、観光開発を含めたインフラ整備の取り組みについて語った。

■ 日本は海外最大市場、印象派を含めたスローツーリズムを提案

 ヴァル・ドワーズ県はパリ北部約20キロにあり、ゴッホ終焉の地オーヴェール・シュル・オワーズ、2026年に没後100年を迎えるモネゆかりのアルジャントゥイユなどのある印象派の地として知られる。CDGからオーヴェール・シュル・オワーズへは30分ほどとアクセスも至便。さらにこれまでのべ2000本以上の映画等が撮影されている映画ロケ地でもあり、カヴェキ議長は「撮影地にふさわしい景観が十分にある証」と景観美を強調した。

 同県の年間観光収入は約30億ユーロ(約5兆2400億円)で、主要産業の一つをなす。観光客数は年間約3900万人にのぼり、外国人客はそのうち約20%。海外最大市場が日本で、2024年は25%増を記録している。同県では日本を重要市場と位置付け、主要素材の印象派を軸に、さらに県内部への誘致拡大を図りたい考えだ。

ヴァル・ドワーズ県の見どころのひとつ、岩肌をくりぬいて建てられたラ・ロシュ=ギヨン城 © CDVO / DRONY

 その方策の一つが、同県の観光政策コンセプトでもあるスローツーリズム。ホテル代が高騰するパリを避けた宿泊地としての活用のほか、古城や城館ホテルでの特別な滞在を通して印象派関連施設や古城、グルメといった見どころを巡る旅を提案した。

 さらに同県では観光誘致拡大を視野に入れたインフラの整備にも取り組んでいる。そのひとつがリバークルーズを目的としたオーヴェール川流域の河川整備。完了は2030年頃で、アムステルダムとパリを結ぶリバークルーズや、サイクリングと組み合わせた運用を見据えている。

 また、2040年を目途とした長期計画として同県が尽力している最大の取り組みのひとつが地下鉄の誘致だ。これはパリ西部のデファンスからCDGを結ぶ路線で、県内に10駅の建設を想定。空の玄関口CDGとのアクセス向上により、県内の滞在時間・日数向上の可能性も見据え、「観光やビジネスなど、大きな効果が期待できる。実現させたい」とカヴェキ議長は話す。

■ 大阪府との友好協定37年、日本との深い関係をアピール

ナレッジ・キャピタルでのVR展示『オーヴェール=シュル=オワーズのゴッホ:最期の旅』 © Knowledge Capital

 このたびセミナーが開催された大阪府と同県は1987年に友好協定を締結し、相互に経済発展、学術協力、文化交流の促進を行っている。2022年からは国際奨学金制度のもと、大阪府の学生を中心に毎年数名が同県中心都市セルジー・ポントワーズのCYセルジーパリ大学に留学しているほか、同大学と大阪のデザイン専門学校が共同でゴッホをテーマとした漫画を制作するなどの交流も行われている。このたびセミナー会場となった大阪ナレッジ・キャピタルはアンギャン・レ・バンの芸術センターと映像技術やテクノロジー分野の提携・開発などを行っており、セミナー後に参加者はナレッジ・キャピタルで公開(※現在は終了)したオーヴェール・シュル・オワーズ城のVR展示『ゴッホ最後の旅』も体験した。

 また、同県には任天堂、クボタなど日本企業55社が拠点を置くなどビジネス面でのつながりも深く、「MICEなど、カンファレンスを中心としたビジネスの可能性も十分にある」とバシャール会長。「大阪の方々はもちろん、多くの日本人の来訪をお待ちしている」と両者はそれぞれに熱く語った。