若手同士の交流会-ベルトラ創業者 荒木篤実氏
ちょうど10年程前、海外事業開拓のため、ロンドンに在住した時期があった。理由は英語圏でもあり、また働く場としても人気の場所であったため、人材確保面で有利だと思ったからだ。確かにいい人材はそれなりにいたのだが、実際には、物価(サラリー)は日本の1.5倍、がその労働生産性は0.5倍。結果的に、経営側としては、日本より3倍ほど高い労働コストとなり、とても効率が悪かった。やむなく数年で撤退したのだが、収穫もあった。それは若手がとてもイキイキと働いていたことだった。彼らは仕事が終わるとほぼ必ずオフィス近くのパブで、路上にはみだしつつ、ビール片手にワイワイガヤガヤと2時間は立ちっぱなしで語り合っていた。そのうち、知らない人とも議論になり、さらに盛り上がる。そんな光景がほぼ毎日どこのストリートでもみられたものだった。
その頃、同じ大学出身の同輩同士の組織が現地にもあり、人材確保のため、よく定例のオフイベントに参加していた。その企画運営をしていた幹部から、いろいろ話を聞いているうちに、「持ち回り制度」というのがどうやらイベント継続の鍵となっていることに気がついた。つまり、輪番的に、自分もそのうち必ず主催側にまわる、という運営方針である。その後、自身の居住地でもあるルクセンブルクでも同じ組織をつくり、まわしはじめてすでに5年以上になるが、うまく機能している。
日本でも同種の組織があり、幹事をさせていただいている。ここでの課題が、若手がなかなかイベントに参加してくれないことであった。この課題が最初に議論になったとき、私は自分が若かった頃、その種のイベントが正直嫌いだったことを思い出した。理由は単純で、年配の先輩方に頭をさげにいく会というイメージが強かったからだ。
このことを踏まえて、若手同士でもっと横のつながりを増やすことをメインの目的に変える必要性があると考えた。そのようなイベントがどうやったら実現できるのかと議論を続けてきた。
そして、幹事に若い世代がはいってきてくれたタイミングで、早速これを実現しようと、数年前から、試行錯誤を重ねた。だが、回を重ねるうちに、どうもマンネリ感がでてきてしまう。横の人脈を広げるネットワークイベント、というコンセプトはいいのだが、参加費もかかるため、一回参加したら、もういいかな、的な感覚になる方が多く、逆に毎回来てくれる方は固定化されてしまっていた。
そこで、他大学と共同でこの若手交流会の幅を広げてみては、とのアイデアがだされ、先日実施の運びとなった。場所は青山のオシャレなカフェを会場に選定。各大学の若手が中心になって集客に奔走していただいた。結果、4大学出身者で100名を超える参加者イベントとなった。
若手経営者の方もお呼びして、事業プレゼンも披露いただき、質問もたくさんでていた。その後は、興味関心を軸にゆるくグループ分けを行い、自由闊達に会話を楽しんでいただいた。これらの様子をみて、ロンドンでのケースにだいぶ近づいたと、少し気持ちが明るくなった。なにより、笑顔があちこちにあふれていたのがとてもうれしかった。
旅行業界は、IT、金融、コンサル、商社などの人気業界に比べると、若手の人気度がまだまだ低い。業界的に利益率が低いため、どうしても給与体系も正直見劣りがするからだろう。その分働き甲斐がという方でささえられているようにも思う。人を喜ばせたい、自分も世界中のものにふれたい、そういうピュアな心で、この業界にはいってきてくれた若い力を、会社の垣根をこえて、お互いがいろんな人とであえるようにしたら、もっと魅力ある業界になるだろう。そう思いながら、同じ時間と空間をシェアしながら、キラキラ顔からあふれでる彼らのエネルギーが、とても眩しく感じられる、素敵なひとときであった。
パクサヴィア創業パートナー。日産自動車勤務を経て、アラン(現ベルトラ)創業。18年1月から現職。ベンチャー経営とITマーケティングが専門。ITを道具に企業成長の本質を追求する投資家兼実業家。