中国PKG回復は18年比わずか2割、JATAが西安での大型イベントで活性化狙う

 日本旅行業協会(JATA)は、2025年11月に中国・西安で「西安城壁ウォーキングイベント」を実施する。アウトバウンドの中でも特に回復が遅れている中国レジャー市場の再活性化を目的に、中国駐東京観光代表処と連携し実施される大規模企画で、旅行各社による商品造成と販売促進の後押しを狙う。

 中国へのレジャー旅行は、2024年11月に短期滞在ビザ免除措置が再開されたものの、他の方面と比較して著しく回復が遅れている。JATAでは主要旅行会社9社からの報告に基づき、中国への募集型企画旅行取扱人数の2018年からの推移をまとめた。それによると、2025年1~6月の取扱人数は、査証免除前の2024年同時期と比較して約3.5倍に伸長したものの、2018年比では20.5%にとどまっている。

主要旅行会社9社による中国への募集型企画旅行取扱人数の2018年(1~6月)比の推移

年(1~6月累計) 2018年比(%)
2019 76.0%
2020 7.0%
2021 0.4%
2022 0.6%
2023 2.0%
2024 6.0%
2025 20.5%
※本表はJATAの発表資料をもとに作成

 旅行会社の商品造成や販売が十分に再開されていない現状に加え、人材不足や中国方面に精通した担当者の減少が遅れの要因とされている。アウトバウンド促進協議会(JOTC)東アジア部会中国ワーキンググループの大森賢一座長(阪急交通社東日本営業本部メディア営業三部長)によると、実際に阪急交通社では中国に関わるスタッフ数が2018年当時の約3分の1に減少しているという。

 こうした状況を受けて、中国ワーキンググループでは、旅行会社が単独では取り組みにくい中国商品の企画造成を後押しする仕掛けとして、JOTCのスケールメリットを生かし、合同イベントを企画。11月7日に西安の城壁を舞台にしたウォーキングイベントを実施する。会場となる西安城壁は、明代に築かれた周囲13.7kmの歴史的構造物で、イベントでは3km・7km・13.7kmの3コースを設け、幅広い世代の参加を見込む。

 開催地に西安を選んだ背景には、大都市圏への観光客集中を避け、中堅都市への誘客を促す狙いがある。兵馬俑をはじめとした著名な観光資源に加え、漫画「キングダム」の舞台として若年層の関心も高いことから、年配層から若者層までを視野に入れた商品造成が可能と判断された。中国駐東京観光代表処の全面協力のもと、武将パフォーマンスや獅子舞による歓迎セレモニー、参加記念キャップの配布なども予定され、イベントの独自性を打ち出す。

 現時点でHIS、JTB、クラブツーリズム、ベルトラ、阪急交通社など10社が参画を表明しており、引き続きJATA会員旅行会社からの参画を募集している。オンライン販売を含め柔軟に対応可能としており、今後の商品造成や販路拡大が期待されている。

 中国ワーキンググループでは、本イベントを成功事例とし、今後は北京や上海など他都市でのイベント企画の展開も視野に入れる。旅行業界が連携して新たな仕掛けを創出することで、中国へのアウトバウンド市場全体の回復を本格化させる構えだ。