JTB・じゃらん・楽天+サブスクサービス「HafH」が語るAIの未来とは?-WiT Japan 2025

AIを活用した10年後の旅行の姿とは 流通における課題も

JTBの岩田氏

 また、ディスカッションでは、柴田氏がAIの発展を踏まえたうえで「10年後の旅行はどのように変化しているか」を質問した。これに対し、楽天の皆川氏は「旅行の検討段階から予約完了まで一気通貫でできるようになる」と予測。加えてパーソナライズされた世界で、AIによるさまざまなコンシェルジュサービスが実現しているとの考えを語った。ユーザーインターフェイスも現在のスマートフォンから「これまでと全く違うユーザー体験が提供される」との見通しだ。

 JTBの岩田氏も、AIがパーソナライズされたコンシェルジュサポートを提供する旅行が一般化すると予想した。その一方で、旅行者があえてAIを使わず、未知の体験を求めて旅行を自分で計画・手配するケースも増えると予想。「情報を得てから行くのではなく、初めて旅行先を訪れたときに感動を得る場面がある、そうした経験を求めるお客様も増えてくるのでは」と話した。

 リクルートの大野氏は、AIにより旅行者と各地の観光事業者のマッチングが進むと予想した。ただし、「10年後の予測は難しい。大きなイメージを持ちつつ、手探りで現実に即した手を打つ努力をしなければならない」とも話した。

 一方で「現在と変わらない」と回答したのがKabuK Styleの砂田氏だ。AIの活用による更なる発展は技術的には可能としながらも、そのために必要な大量の学習データを旅行会社が自社で囲い込み、共有しないことが障壁になっていると指摘。旅行業界の発展のためにはデータを開放してオープンな環境を作るべきと主張した。

 続いて柴田氏が「OTA以外に10年後に旅行流通でそれなりのシェアを獲得しているプレイヤーは?」と尋ねた質問では、楽天の皆川氏が「全く違うユーザー体験を提供できるAI専業プレイヤー」、JTBの岩田氏が「サプライヤーの直販、またはそれを束ねる企業」と回答した。

リクルートの大野氏

 一方、リクルートの大野氏は「AIエージェント的なプレイヤーがユーザー接点をとる」としながらも「事業者の経営・業務支援など深いところに入り込めば、日本固有のマーケットで我々自身のプレゼンスを高められるのでは」と語った。

 砂田氏は音楽業界を例に10年後の展望を説明。音楽業界ではストリーミングサービス「Spotify」が人気で収益を上げているが、「その裏でレーベル側もしっかりと収益を確保している」ことに触れ、「旅行業界もそういった構図になることはありうる」との見解を示した。

 ただし、同氏は旅行業界の課題として「商品在庫へのアクセスが難しい」点を説明。特に日本の旅館が顕著だが、大手旅行会社やOTAが在庫を独占する傾向にあるという。砂田氏はAIエージェントの台頭などにより、大手旅行会社やOTAとコンシューマーとの接点が減少することがありうるかもしれないとしながらも「なかなかひっくり返すのは難しい」との考えを述べた。