JTB・じゃらん・楽天+サブスクサービス「HafH」が語るAIの未来とは?-WiT Japan 2025

セッションの様子

 先ごろ開催された旅行テクノロジー業界の国際会議「WiT Japan & North Asia 2025」では、「Japanese OTAs: Building For The Next Age」として、毎年恒例の国内OTAのセッションが開催された。今回は楽天、リクルート、JTBといったおなじみのメンバーに加え、旅のサブスクリプションサービス「HafH」を運営するKabuK Styleも参加。AIの活用を中心に議論が交わされた。

4社のAI活用状況は?顧客対応にどの程度有用?

楽天の皆川氏

 パネルディスカッションでは、モデレーターを努めたWiT Japan共同創業者でベンチャーリパブリック代表取締役社長の柴田啓氏が各社にAIの活用状況を尋ねた。

 これに対し、楽天グループ トラベル&モビリティ事業 事業戦略部ジェネラルマネージャーの皆川尚久氏は、これまでのバックヤードでのAIの活用に加え、新たに昨年からAIを活用したユーザー向けのコンシェルジュサービスを試験的に導入していることを説明。「詳細を話せる段階ではないが、ユーザーの動向を見ながらプロダクトを改善し、実用化に向けていきたい」と話した。

 リクルート 旅行ディビジョン Vice Presidentの大野雅矢氏は、昨年と同様、試験導入中の「じゃらんAIチャット」について言及。利用者のコンバージョンレート(CVR)が高いというメリットがある一方、「活用している絶対数が限られており、全面的な導入に至っていない」と現状を述べた。

 JTB Web販売事業部長の岩田淳氏は「会社として活用が進んでいないのが現実」としながらも、社員の意識変革に取り組んできたことに触れ、現在はマーケティングのオートメーション化やツアーの値付けなど、内部で活用し始めている旨を語った。ただし「お客様に向けたサービスにたどり着くまでは、まだ計画が必要」という。

KabuK Styleの砂田氏

 KabuK Style代表取締役の砂田憲治氏は、展開するサブスクサービス「HafH」で価格・行動・キャンセル予測を実施していることを説明した。現在は客室タイプのマッピングに注力しているが、日本の客室タイプの表記が統一されておらず、「世界的にかなり特殊なマーケット。マッピングが進まなかった」と振り返った。ただし、この1年で精度を約8割まで上げており、「どこかでリスクをとればディストリビューション可能なレベルになってきている」という。

 また、同氏は生成AIの活用として、公式LINE上で旅行相談ができるAIサービス「ハフっち」の提供を開始したことを説明。そのうえで、AIのさらなる活用を見据え、「来年のWiTの大きなテーマがMCP(Model Context Protocol)になっているのでは」と持論を語った。MCPとは、AIとPMSやサイトコントローラなどさまざまな外部システムをスムーズにつなぐための標準プロトコル、つまり仕組みのこと。MCPを利用すれば、共通フォーマットでデータがやり取りできるようになるため「AI用のUSBポート」とも例えられている。