【欧州文化首都'26】多角的なアプローチが可能なフィンランド・オウル、冬のオーバーツーリズム緩和にも

  • 2025年6月3日

 2026年度の欧州文化首都(European Capitals of Culture)に決定しているフィンランドの中部都市オウル。2011年にトゥルクが選ばれて以来フィンランドの都市が選ばれるのは15年ぶりとあって、現地では意欲的に準備が進められている。実は世界的にもじりじりと注目を集めているオウルとはどんなデスティネーションなのか? お披露目がてら開催された、主要マーケットを対象としたプレスツアーに参加した。

ビジネスマンも多い中堅都市・オウル

 欧州文化首都は1985年に初めてローンチされた当初こそ実際の首都など主要都市にフィーチャーしていたが、近年ではオープンコンペによって選出されている。タイトル戴冠期間は1年間で、年を通じて毎月のようにさまざまなイベントが開催され、大きな経済効果をもたらすとともに観光促進にも大きく寄与するため、インフラ整備や都市開発にも力を入れる自治体が多い。

 オウルでも200万人のイベント来場者、20%の旅行者増を見込んでいるといい、新たなホテル建設や図書館のリニューアルといったインフラの整備を開始している。

オウル空港に降り立つと、さっそく文化首都の看板が。オウル空港はヘルシンキ・ヴァンター空港に次ぐ規模の国際空港だが、発着本数はそれほど多くない

 ヘルシンキから北へ約1時間のフライト、または夜行列車で5時間という位置にあるオウルは、ラップランドではないがフィンランド北エリアの主要都市だ。人口21万5000人の中堅都で、かつて世界最大のシェアを誇った携帯電話端末大手・ノキアの"城下町"として発展したことで知られ、モバイル通信事業に強いハイテク産業の街として一目置かれる存在だ。なにしろ、ノキアショック――2008年ごろから顕著になってきたスマートフォンブームに乗り切れず、大規模なレイオフを余儀なくされた――を経てもなお、技術者が多いという街の特性を活かして起死回生に成功した地方都市なのだ。

オウル文化財団のアンヌ・ホットネン氏によると、文化首都のテーマは「Cultural Climate Change」。人、アートとテクノロジー、文化と自然を結びつけるイベントが年を通じて開催される

 そんなビジネスとテクノロジーの街、オウル。シティセンターはこぢんまりとしているがショッピングモールのほか、瀟洒なレストランやカフェがありどこでも歩いて行ける。図書館やオペラ座といった文化施設もあり、観劇やファインダイニングでのダインアウトなど夜のお楽しみがあるところが都会的だ。

シティセンターに位置するOriginal Sokos Hotel Arenaのスタンダードルーム。オウル市内にはラディソンやラップランドホテルといったシンプルで手ごろな価格のホテルが多い
高い建物はほとんどなく、落ち着いた環境のシティセンターエリア。スーパーマーケットやドラッグストア、カフェや雑貨屋などがひととおりまとまっているので街歩きしやすい
現在改装中の市庁舎も文化首都イベントの会場となる。フィンランドで2番目に電気が通った場所とのことで、オウルが早いうちから産業の拠点であったことがわかる
11か所のユニークなカフェやレストランをめぐるフードツアーも造成。文化首都イベントに合わせ、食文化やサーミ文化などを紹介するプランが進行中だ
街にはシアターもあり、バックステージツアーは子どもにも人気。ここでは来年1月から4月にかけ、北方少数民族サーミ語のオペラ『Ovlla』を上演する計画が進んでいる
有名ソムリエもいる本格的なファインダイニング『Alfred Kitchen &Bar』。瀟洒でレベルの高いレストランがいくつもあるところがビジネスの街らしい

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