エチオピア航空新社長、ビジネス堅調でデイリー化に意欲、直行便化検討も-旅行会社へのコミッション継続

  • 2022年11月30日
(左から)新支社長のウォルデキダン氏、退任したアブレハ氏

 エチオピア航空(ET)はこのほど、都内で日本支社長の交代の会を開催した。11月24日付で新日本支社長に就任したハイル・ウォルデキダン氏は本誌の独占インタビューに応え、「日本とアフリカを結ぶ唯一の航空会社として、日本と世界、特に日本とアフリカを貿易・社会・経済的に結び付けていきたい」と意欲を示した。需要の回復を見据え、現在週4便で運航中の成田/仁川/アディスアベバ線は、2023年後半にコロナ前と同程度の週5便に戻す考え。さらに同氏は「市場の回復に応じてデイリー化したい」と意気込みを語った。日本市場は全体の4割から5割を占めており、「2023年には需要は完全に回復すると楽観視している。2023年、特にゴールデンウィークはFITとグループの予約が入ってきており、強い需要がある」という。

 ETは2015年4月、週3便で成田/香港/アディスアベバ線を開設。その後2018年に香港経由から仁川経由に変更し、2019年7月には週5便に増やして運航していた。運航機材はビジネスクラス24席、エコノミークラス246席のボーイングB787-8型機。

 ETでは新型コロナ発生後、アフリカを中心に旅客機の一部の座席を外し貨物用に転用して運航するなどの取り組みを通し、コロナ禍においても堅調に成長し続けているところ。日本路線については旅客機を減便しつつも運航を継続し、今年の9月2日からは週4便で運航している。ETによれば、日本路線のコロナ前のロードファクターは約78%。コロナ後は需要が低迷したが、5月末ごろから日本政府による入国規制の緩和と韓国市場の回復に合わせてロードファクターが改善しつつあるといい、「過去4ヶ月の搭乗率は75%を超えており、韓国からアフリカへの需要はコロナ前の伸びを上回っている状況」という。

 ただし、ETとしては仁川経由については不満がある状態。ウォルデキダン氏はその理由として、乗客が仁川でセキュリティチェックを受ける必要があることに触れ、「仁川経由には満足していない。別の経由地も検討するほか、日本路線を独立させたい」と直行便化にも意欲を示した。その一方で「日本路線は長距離で運航コストが高く赤字傾向にある」と課題を挙げ、継続的に運航するために運航コスト等を考慮した上で検討を進めていく方針だ。なお、ETは2021年12月から2022年3月にかけて、韓国政府がコロナの影響でETの乗り入れを禁止したことなどにより、成田/アディスアベバ間で直行便を運航していた。

ウォルデキダン氏はこれまでミドルイースト&アジアリージョナルディレクターや調達供給マネジメントディレクターなどを歴任してきた

 日本市場については、現状としてはビジネス需要がメインのところ。同氏によれば、現在アフリカには日本の大使館または領事館が55ヶ所あり、560社超の日本企業が進出。国際協力機構(JICA)も23ヶ国で政府開発援助(ODA)に取り組んでいるほか、多くのNGOも活躍している。成田/仁川/アディスアベバ線は企業の出張需要や政府・外交関係者の渡航需要が高く、ビジネスクラスも好調だ。こうした現状を踏まえ、今後はエチオピアに加え、アディスアベバ空港をハブとしたアフリカ各国に乗継するビジネス客を引き続きターゲットに据え、インハウスや業務渡航系旅行会社経由の販売促進をめざしていく考え。

 一方、レジャー需要についてはまだそれほど多くないが、旅行会社の団体ツアーなどで利用されているところ。ウォルデキダン氏は「日本ではアフリカの観光情報があまり知られていないが、訪れるべき魅力的な場所は多い」と語り、エチオピア国内に加え、ケニアのモンバサやタンザニアのキリマンジャロ、ザンジバル、南アフリカなどの観光地をアピールした。例えばETはアディスアベバ/ナイロビ線を週28便、ヨハネスブルグ線を週17便運航しており、アフリカ内の62都市への路線を有している。このためエチオピアに加えエチオピア以遠の観光需要も取り込みたい考えだ。このほか増加傾向が続くというアフリカ発の訪日需要や、VFRなどの取り込みもねらう。

 ウォルデキダン氏は日本の販売戦略について「旅行会社と共に協力して成長していきたい」と語り、旅行会社との関係性を重視していることを改めて強調した。ETではオンラインでの直販にも力を入れているが、「航空需要の8割から9割は旅行会社かGDS経由であり、航空業界は旅行会社に大きく依存している。我々の収益の大部分は旅行会社経由もので、旅行会社の皆様に大いに助けていただいている」という。今後は引き続き旅行会社向けのサポートを強化する方針で、IATA代理店に対してはコミッションを提供。旅行会社に対するインセンティブも検討しているという。

ソロモン・アブレハ氏

 なお、日本支社長の交代の会では前任のソロモン・アブレハ氏も登壇。これまでの約8年間の経験を振り返り、関係者への謝意を表明するとともに新任のウォルデキダン氏にエールを送った。なお、アブレハ氏は今後、コートジボワールのアビジャンでアビジャン/ニューヨーク線の開設の準備に関わるという。