【労務のいろは】副業と兼業の実務-リスク排除のために

(3)健康管理の実施
 労働者が副業・兼業をしているかにかかわらず、健康診断(労働安全衛生法(以下「安衛法」)第66条第1項)、長時間労働者に対する面接指導(安衛法第66条の8等)、ストレスチェック(安衛法第66条の10)等を実施しなければなりません。(健康確保措置)

 上記健康確保措置の実施対象者の選定に当たっては、副業・兼業先における労働時間の通算をする必要はありません。ただし、会社の指示により当該副業・兼業を開始した場合(例えば在籍型出向等)には、副業・兼業先の労働時間を通算して、必要に応じて健康確保措置を実施することが適当であるとされています。

(4)秘密保持について
 他社で雇用されている社員を自社で雇用する場合、下記の様な企業の秘密情報等の漏洩問題が生じることが懸念されます。

①他社の企業秘密等が自社に流れてしまうリスク
②自社の企業秘密等が他社に流れてしまうリスク

それぞれ差止請求や損害賠償請求などが生じる可能性があります。このようなリスクをいかに防止するか検討する必要があります。例えば以下のような対応があります。

・就業規則・誓約書により秘密保持義務、違反した場合の処分を定めておく
・重要情報へのアクセスを制限しておく
・情報漏洩を意図的に行った社員を厳格に処分しておく
・競業他社で勤務している者を採用しないようにしておく

これ以外にも社員に研修等を行うなど、リスクを少なくするための対策を講じておく必要があると思います。

おわりに

 これまでは副業・兼業を禁止することが当たり前のような社会でしたが、新型コロナウイルスによる在宅勤務や短時間勤務、また急速な人材不足により副業・兼業が当たり前のように行われる社会に変化しつつあります。しかし、企業側としては情報漏洩のリスク等問題の多さから、導入には慎重にならざるを得ません。リスク排除のためには副業・兼業に関する届出により副業・兼業先を正確に確認することや、時間外労働による未払い残業代が発生していないか等の確認などが必要となるはずです。

 まずは「ガイドライン」を確認し、就業規則を変更するなどして、可能な限りリスクを排除した仕組みづくりから行っていくべきであると思います。以下参考となる資料です。

副業・兼業の促進に関する ガイドライン わかりやすい解説
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A

岡部大介
特定社会保険労務士。医療労務コンサルタント。岡部社会保険労務士事務所代表/合同会社Deyコンサルティング代表社員。
東京都八王子市出身。大学卒業後、建設会社、サービス業を経験し、2006年社会保険労務士登録。2011年より岡部社会保険労務士事務所設立。手続き業務、給与計算、規程作成、助成金申請、労務相談を行いながらクライアントに寄り添うサービスを目指す。