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自然を学び、繋がり、行動する「協働プラットフォーム」を-サステナブルアイランド石垣 田村陽子氏

  • 2022年8月24日

美しい島を末長く楽しむために、長期ビジョンでの解決策を探る

-具体的な活動内容について教えてください。

田村 石垣島では漂着ゴミが非常に多く、ゴミ処理場も逼迫しています。ホテルなどはビーチクリーンを行っているので周辺は綺麗ですが、その横はゴミだらけなのが現実です。沖縄に着くのは潮流に乗ってアジアから来るゴミですが、沖縄で出たゴミはハワイに流れ着きます。根本から解決しなければならない問題です。

石垣島の漂着ゴミ

 SIIではペットボトルの削減のため、マイボトルを作って販売し、他団体が作成する給水所を示すマップの紹介をしています。また、行政に掛け合い、コンタクトのアイシティさんが行っているコンタクトレンズケースのリサイクル活動のための回収ボックスを市の施設に設置してもらいました。このほか、使い捨て容器なしで買い物ができる店舗を応援する「プラゴミ削減ショップマップ」の配信やビーチクリーン情報の配信、行政の環境課の方を招いての島のゴミ問題に関する勉強会なども実施しています。

マイボトルと給水所マップ

 ウェブサイトではこうした海洋プラスチックに関する情報発信のほかにも、産業と連携したサンゴ礁保全や環境問題を身近に感じられる映画の紹介もしています。例えば、サンゴ礁の減少は食糧危機にも繋がることをご存じでしょうか。サンゴ礁は海のゆりかごと呼ばれていて、世界中の海の魚の4分の1を生み出しています。そのサンゴ礁がなくなると小さな魚が育たず、それを食べる大きな魚も育たなくなる。生物多様性は減少し、生産力も落ちます。既に影響は出始めていますが、沿岸漁業で魚が獲れなくなり、種類も減るという負のスパイラルが起こります。

-観光産業に関わるものではどのような取り組みをされていますか。

田村 まずはサステナブルツーリズムの現状を伝えることからだと考えています。例えばグレートバリアリーフでは、1つのダイブサイトに入れる業者の上限が決まっていたり、ゾーニングされたりしていますが、日本にはこうしたツーリズムの規制がほとんどありません。諸外国の管理の状況や、サンゴ礁の科学的なリミットを伝えるなどの取り組みが必要です。ダイビングに関しては、環境に配慮した業者の評価・認定を行う「グリーンフィンズ」という認証があるのですが、SIIでは彼らが推奨するガイドラインも発信しています。

 また、SIIでは、「リーフランド(Reef-Land)プロジェクト」という取り組みのなかで、長期的なビジョンを持ち、島の持続性を考えて活動する若い事業者をストーリーとして紹介しています。海とサンゴ礁に優しい産業としてきちんとした基準を作り、守っている事業者に対して地域で認証を与え、認証を取得した生産者を推奨し、そこから原材料を調達するレストランやホテルにも認証を与える民間団体もできましたが、それらを優先して観光客に紹介したり、行政にも協力してもらいながら経済圏を作り、広めていきたいと考えています。

 このほか、観光に関連する話題としては、昨年、石垣島の沖合に日本初の大規模な人工浮島(ポンツーン)を作り、シュノーケルの基地にするという計画が発表されました。観光需要も落ち込んでいたところで、コロナ後の目玉作戦として石垣市も歓迎したのですが、ポンツーンについてはオーストラリアにも多くの事例があり、しっかりとした人数制限をしなければサンゴが死んでしまうという調査結果も出ています。SIIではこうした事例も盛り込み、提言書を提出しました。先方も環境への影響は認識していなかったそうで、真摯に受けて止めてくださいましたが、現状では計画の変更の話は聞いていません。今後も様々な業者や個人から意見をまとめて提供していく予定です。

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