「家庭画報」の読者に旅行を-出版社による新規参入の勝算は

誌面との連動商品で早期黒字化へ
「プレミアム旅行社」代表の秋山氏に聞く

-旅行事業参入の手段として、完全子会社の設立を選んだ理由をお聞かせください

秋山氏 秋山 これまではコンテンツの特徴に合わせて旅行会社と協業し、加えて年4回、大手旅行会社と「家庭画報の旅」という名のツアーを共同企画してきたことを考えると、合弁会社の設立や旅行会社とのアライアンス強化などの選択肢もあった。しかし最終的には、コンテンツの世界をより忠実に実現するためには100%出資の子会社を設立するのが一番良いという結論に至った。付き合いのあるクライアントや旅行関係者からは、予想以上の反響をいただいている。

 ちなみに今年の1月には、誌面のコンテンツを活かした新しいビジネスを創出することを目的として「家庭画報ビジネス戦略部」を立ち上げていた。そのなかで、旅に関する事業を本格化する方針を定めていた。

-商品造成の方向性をお聞かせください

秋山 これまでと同様に、基本的には家庭画報で展開する国内外の旅のコンテンツと連動して、他の旅行会社とは異なる“プレミアム”な商品を作っていきたい。そのほかにも、オリジナルな商品の企画造成を手がけていきたいと考えている。「夢と美を楽しむ」というコンセプトは、そのままプレミアム旅行社の商品作りにもつながると思う。

 国内旅行は1泊から3泊程度を考えているが、食事などにはこだわりを見せたいので、価格帯は1泊でも10万円を超えるだろう。海外旅行は、欧米など長距離方面であれば、ビジネスクラスを利用して100万円を超えるものも想定している。

-家庭画報のコンテンツと連動させるにあたり、販売のタイミングはどうしますか

秋山 販売のタイミングには2パターンあり、1つは記事の掲載と同時に発売できる商品、もう1つは記事からは遅れて発売する“季節もの”の商品だ。季節ものは、たとえば桜に関する特集は毎年4月号で掲載するが、関連するツアーはその年末か次の年始めに発売して、次の桜のシーズンに催行することになるだろう。

 一方で、季節ものの特集はその1年前に取材し、同時にツアーの企画の準備を始めることができるので、ケースによっては発行のタイミングでツアーの告知をすることもできる。当然のことながら、記事と一緒にツアーを紹介するパターンの方が読者の反応は良いので、掲載と発売のタイミングについてはよく見極める必要がある。

 たとえば16年のグラーフェネック音楽祭の時には、創刊700号記念の6月号で28ページの特集を組み、最後の1ページで8月17日に出発するツアーの募集広告を掲載した。しかし6月号の発売日は4月30日で、出発までの期間が短かったため、念のため4月1日発売の5月号でも2ページの募集広告を掲載した。

 一方、17年のザルツブルク音楽祭の時は、新春特大号の1月号で30ページの特集を組み、最後の1ページでツアーの予告と、資料請求を呼びかける広告を掲載した。発売日の12月1日からツアーを開始する8月まではかなりの日数があり、募集広告を完成させることが難しかったからで、その後、3月1日発売の4月号では改めて、2ページの募集広告を掲載している。