武藤事務次官、観光の重要性を強調、「新たな挑戦へ」

新国土交通事務次官の武藤氏  国土交通事務次官にこのほど就任した武藤浩氏は、7月7日に開催した交通・運輸系専門誌との初めてのインタビューにおいて、「観光は地方創生の切り札であり、政府の成長戦略の柱」と語り、重要性を改めて強調した。その上で「観光の基幹産業化」と「日本の観光先進国化」の2つの目標に向けて「新たな挑戦に踏み切る覚悟が必要」と意気込みを示した。

 急速に拡大する訪日旅行については、政府が今年3月に策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」の内容を踏まえて、「欧・米・豪および富裕層を新たなターゲットとして、国際観光マーケット全体での熾烈な競争に勝ち抜く」と語った。ビザの取得要件緩和やMICEの誘致促進を戦略的に展開することで、新たな市場を開拓する考え。また、出入国審査やWiFi環境の整備などをおこなうことで、リピーターの獲得をはかりたいとした。

 海外旅行については、「国の将来を担う若者が、海外旅行を通じて国際感覚を養うことが極めて重要」と強調。観光庁を含む関係省庁などと議論を進め、若者の海外旅行の活性化について、今年度中に結論を得る考えを示した。国内旅行については「旅行消費額の約8割を占めており、極めて重要」と述べ、地方の観光資源の掘り起こしや滞在プログラムの拡充、日本版DMOの形成などを促進するとした。

 そのほかには旅行における安心・安全の問題についても触れ、テロ対策に関しては「常に緊張感を持ち、対策の整備と運用のスキルアップをおこなうことに尽きる」との見方を示した。軽井沢での事故で注目を集めた貸切バスの運賃の問題については「安全のためのコストアップは必要であり、(消費者の)認識も広がってきているのでは」とコメント。旅行会社にはバス事業者の適切な選定をおこなった上で商品を販売することを求めた。

 航空関連では、首都圏空港の機能強化について「急増する訪日外国人旅行者の受け入れや我が国の国際競争力の強化、地方創生などのためには必要不可欠で、全力で取り組みたい」と意欲を示した。羽田については、17年度の概算要求に機能強化に必要な工事費や環境対策費などを盛り込む考えを説明。成田については、20年以降の抜本的な容量拡大に向け、関係自治体と協議を進めていることなどについて語った。

 武藤氏は1979年に運輸省に入省。大臣官房広報課長、大臣官房人事課長、航空局監理部長、観光庁次長、自動車局長、大臣官房長などを歴任したのち、2014年7月からは前職の国土交通審議官を務めていた。