公共交通機関を利用して自転車とともに移動する「輪行」。旅の工程を一部省略でき、サイクリングしたい場所へ気軽に向かえるのが特徴です。飛行機や電車などの選択肢がある輪行ですが、昼行便や夜行便のある高速バスを利用すれば、費用を抑えて遠方でのサイクリングを楽しめるのでおすすめですよ。
今回は、輪行初心者が押さえておきたいポイントをはじめ、輪行できる高速バス・バス会社を紹介します。バス会社や便によって運行区間が異なるため、ぜひご自身の発着地点や目的地に合わせて活用してみてください。
いつもと違う環境でサイクリング!高速バスで輪行する魅力
高速バスを利用すれば、普段なかなか訪れないエリアでのサイクリングがぐっと身近になります。鉄道や飛行機を使った場合も遠くには行けますが、高速バスはさまざまな場所にアクセスでき、観光地や山間部などに到着する便もあるのが魅力です。
さらに、深夜便の高速バスに乗れば、移動中に睡眠をとって朝からサイクリングを楽しむこともできます。料金も比較的リーズナブルな場合が多く、自転車と一緒に旅をする手段としてはコスパ抜群といえるでしょう。浮いたお金を使って旅先で美味しいものを食べたり、観光を楽しんだりと、旅の幅を広げやすいのもうれしいポイントです。
時間と費用を有効に使いながら、サイクリングを通じて新しい風景に出会える高速バスを活用した輪行で、ぜひ自転車旅行へと出かけてみてください。
高速バスで輪行する際にチェックしたいポイント

輪行が可能な高速バスはいくつかありますが、バス会社ごとに対応が異なります。自転車の持ち込みができるかどうかはもちろん、持ち込む場合の重量制限や注意事項などは事前に確認しておきたいポイントです。
また、バス会社によっては輪行を前提とした専用プランや特別ルールを設けているところもあります。スムーズに輪行旅をスタートさせるためにも、ここで紹介するポイントを参考にして、予約前に必要事項をチェックしておきましょう。
重量制限や注意事項・規定
高速バスで輪行する際は、まず重量制限を確認しましょう。多くの高速バスでは荷物に重量制限を設けていますが、10kg以内や30kg以内など、バス会社によって異なるため注意が必要です。
また、高速バスの規約についても目を通しておきましょう。たとえば、自転車を持ち込む際に車内の荷物席スペースを使うのか、トランクを使うのかは各社で対応が違います。さらに、予約や積込料が必要だったり、輪行袋に入れる必要があったりするケースも多くあります。
重量制限を超えたり、バス会社の規定に従わなかったりした場合は、乗車を拒否されるかもしれません。安全で快適な輪行を楽しむためにも、各社の規定は必ずチェックしておきましょう。
輪行プランの有無
多くのバス会社は、自転車の持ち込みに関する規定をWebサイト上にまとめる形にしていますが、中にはサイクリスト向けに「輪行プラン」を提供しているところもあります。通常の荷物扱いではなく、自転車専用の収納スペースやサイクルラックが用意されている場合もあり、安心して預けられるのが特徴です。
輪行に慣れていないと、思わぬトラブルに見舞われる可能性もあります。輪行初心者や大事な自転車が傷つかないか心配な人は、輪行プランのある高速バスを利用してみるのも良いでしょう。
【2025年】輪行で利用できる高速バス・バス会社9選

ここからは、輪行に使える9つの高速バス・バス会社を紹介します。2025年4月時点の情報なので、実際に予約される際は、各社の規約などをあらためて確認してください。
また、このほかにも国内には数多くのバス会社があるので、目的地や利用のしやすさなどに合わせて探してみるのもおすすめです。
アミー号(アミイファクト)|サイクリストにうれしい輪行プランが魅力
「アミー号」は、関東・関西間だけでなく、関東・新潟間や名古屋・新潟間を行き来する高速バスです。その中でも、東京・大阪間を運行するアミー号の703便と704便では、完全予約制での輪行プランを利用できます。同便では京都で下車することもできるため、京都の町でサイクリングを楽しんでみても良いでしょう。
ただ、バス1台につき自転車は2台までとなっているほか、積込料として1,500円がかかり、代理店経由では輪行プランが予約できない点に注意が必要です。詳細について、公式Webサイトをよく確認しておきましょう。
アミー号(アミイファクト)
【電話番号】050-3533-6500
【積込料】1,500円
【予約方法】オンライン予約システム
【公式Webサイト】https://www.amy-go.com/sp/rinkou.html
ブルーストーク|関東~九州まで幅広くアクセスできる
「ブルーストーク」が運営する高速バス予約サイト「バスのる.jp」では、ブルーライナーやサンアンドムーンといった高速バスの予約が可能です。どちらもバス1台につき先着2台まで自転車を載せられますが、3列シートタイプのバスは対象外となるため注意しましょう。
ブルーライナーやサンアンドムーンは幅広い場所にアクセスでき、関東をはじめ、関西や中部、中国、九州エリアが乗車地となっている点が特徴です。
このほか、バスのる.jpでは輪行の参考になる情報が掲載されているため、輪行が不安な方は目を通しておくと良いでしょう。
ブルーストーク
【電話番号】06-6371-1131
【積込料】1,500円
【予約方法】オンライン予約システム
【公式Webサイト】https://www.busnoru.jp/sp/rinko/(バスのる.jp)
アルピコ交通|長野を中心に関西・関東を走行

長野をはじめ大阪や京都、名古屋、新宿への輪行を検討されている方は、「アルピコ交通」の高速バスを検討してみてください。長野県内の乗車地が多く、白馬や松本、上高地といった観光地にも停まるため、長野から乗車する方や長野への輪行を検討している方には特におすすめです。
なお、持ち込める自転車はロードバイクのように解体・組み立てが可能なものか、折りたたみ式自転車に限られ、どちらも輪行袋に入れることが必須です。また、自転車はトランクや車内の荷物席スペースで預かってもらうことになりますが、夜行便では持ち込み不可である点には注意しましょう。
このほか、共同運行会社の場合は自転車の持ち込みについて規約や取り扱いが異なる可能性もあるので、予約前に運行会社に確認するのが無難です。
アルピコ交通
【電話番号】0570-550-373
【予約方法】オンライン予約システム
【公式Webサイト】https://www.alpico.co.jp/traffic/
JR四国バス|四国で快適なサイクリングはいかが?
四国各地を結ぶ高速バス路線を展開している「JR四国バス」。高松や徳島、松山、高知といった各都市への移動に便利で、しまなみ街道などサイクリストの聖地にもアクセスしやすいのがうれしいポイントです。
四国の道は信号が少なく豊かな自然が広がっているため、サイクリングにぴったりなスポットといえます。列車ではアクセスしにくいエリアへの移動もカバーできるため、自由度の高い輪行旅が楽しめるでしょう。
なお、自転車の積み込みが可能な路線は以下のとおりです。
- 観音寺エクスプレス号
- なんごくエクスプレス号
- 黒潮エクスプレス号
- 高知徳島エクスプレス号
- 高松エクスプレス広島号
- 吉野川エクスプレス号
積込料は1台につき300円と低料金なので、四国をまわる際はぜひ活用してみてください。
JR四国バス
【電話番号】087-825-1657(香川)ほか
【積込料】300円
【予約方法】電話、オンライン予約システム
【公式Webサイト】https://www.jr-shikokubus.co.jp/
JRバス関東|東京から草津や安房白浜にも行ける

関東エリアを幅広く運行しているJRバス関東の高速バスでも、輪行が可能です。東京発着で群馬の伊香保・草津温泉や千葉の館山・安房白浜といった観光地への直行便があり、サイクリング旅のスタート地点として申し分ないでしょう。
なお、東京・茨城県境町の路線では自転車を無料で持ち込めますが、伊香保・草津・佐野・館山・安房白浜などの路線では500円が必要になります。また、10kgの重量制限があったり、総容積や長さの制限があったりするため、予約の前に確認しておきましょう。
JRバス関東
【電話番号】0570-048905
【積込料】500円
【予約方法】券売機、電話、オンライン予約システム
【公式Webサイト】https://www.jrbuskanto.co.jp/jwp/
本四海峡バス|明石海峡大橋をわたる高速バス

淡路島と神戸・大阪・京都を結ぶ「本四海峡バス」では、輪行袋に入れた状態であれば折りたたみ自転車の持ち込みが可能です。四国でのサイクリングはもちろん、本州側から淡路島方面へのアクセスにも便利なので、関西エリアにお住まいの方はぜひ利用してみてください。また、本四海峡バスは明石海峡大橋を通るため、高速バスの車内から海の眺望を楽しめるのもうれしいポイント。
本四海峡バスでは、以下の路線で自転車の持ち込みが可能。このうち、大磯号のみ事前にバス会社への確認が必要です。
- 阿波エクスプレス大阪号
- 阿波エクスプレス神戸号
- 阿波エクスプレス京都号
- かけはし号
- くにうみライナー
- 大磯号
混雑時など、トランクルームに余裕がない場合は自転車の積み込みを断られる可能性があるため、乗車日を検討したり、空き状況を確認したりしておくのが無難でしょう。
本四海峡バス
【電話番号】0120-922-008
【予約方法】電話、オンライン予約システム
【公式Webサイト】http://www.honshi-bus.co.jp/index.html
西鉄グループ|九州一帯で幅広く運行

福岡を拠点に九州全域へ高速バスを展開しているバス会社が「西鉄グループ」です。輪行袋に入れてあれば折りたたみ自転車を持ち込むことができるので、佐賀や熊本、大分などでのサイクリングが楽しめます。
特に、西鉄グループの高速バスは温泉地や自然豊かな観光地へ向かう路線が充実しており、都市部からスムーズに移動できるのも魅力です。
なお、西鉄グループでは自転車を分解せずに最大18台まで車内に持ち込める貸切バス「CYCLE CARGO」もあり、サイクリスト向けのツアープランも提供されています。グループでの貸切も可能なので、興味がある人はぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
西鉄グループ
【電話番号】050-3616-2150または0570-00-1010
【予約方法】券売機、電話、オンライン予約システム
【公式Webサイト】https://www.nishitetsu.jp/
琴平バス(コトバス)|四国~東京・愛知・福岡を結ぶ
香川県を拠点にしている「琴平バス」通称コトバスは、四国と東京・愛知・福岡を結ぶ長距離バスを運行しています。輪行袋に入っていれば、ロードバイクのように分解できる自転車や折りたたみ自転車を預けることが可能です。
ただ、すべての便で自転車を預けられるわけではありません。琴平バスでは積み込み可能な自転車の台数に限りがあるため、輪行で利用する際は予約前に電話かメールで問い合わせる必要があります。当日になって乗車拒否されるリスクを回避するためにも、こうした確認は入念に行っておきましょう。
琴平バス(コトバス)
【電話番号】050-3537-5678
【予約方法】電話、オンライン予約システム
【公式Webサイト】https://www.kotobus-express.jp/
岩手県北バス|東京~岩手間を運行

東京と岩手を結ぶ路線を中心に運行している高速バス会社「岩手県北バス」。都市部から東北地方への自然豊かなエリアへのアクセス手段として重宝されており、「岩手きずな号」と「MEX三沢」のバスであれば輪行に対応しています。
岩手きずな号は、東京ディズニーランドから久慈駅までを運行し、途中には盛岡駅や八幡平にも停車します。また、MEX三沢は東京ディズニーシーから十和田市まちなか交通広場までを運行しており、八戸や三沢駅などで途中下車することも可能です。
折りたたみ自転車と分解・組み立てが可能な自転車を積み込むことができますが、いずれも輪行袋などのケースに収納することが条件です。また、岩手県北バスは繁忙期やトランクの空き状況によっては、自転車の積み込みを断られる可能性があります。そのため、輪行の日程については慎重に検討しておきましょう。
岩手県北バス
【電話番号】019-641-1212
【予約方法】電話、オンライン予約システム
【公式Webサイト】http://www.iwate-kenpokubus.co.jp/
輪行で高速バスを利用する際の注意点

高速バスでの輪行は遠方でのサイクリングを手軽に楽しめるのが魅力ですが、いくつか気をつけるべき点もあります。特に輪行初心者の方や慣れていない方だと、せっかくの輪行が楽しめなくなる可能性も。ここで紹介する2つの注意点を、事前に確認しておきましょう。
慣れていないと分解や袋詰めに手間取ることも
輪行初心者の方にとって、自転車を分解したり輪行袋に入れたりするのは意外と時間がかかる作業です。特に、ロードバイクのように折りたたみではない自転車を持ち込む場合は、前輪・後輪の取り外しやハンドルの向き変更などの工程が必要になります。
また、こうした作業に慣れていないと、袋詰めの際に手間取ってしまうだけでなく、パーツの紛失や破損といったリスクもあるでしょう。そのため、分解や袋詰めに慣れていない場合は、出発前に練習しておいたり、必要な工具類をそろえておいたりするといった対策を講じる必要があります。
普段はなかなか行けない場所でのサイクリングを楽しむためにも、事前に余裕を持って準備を進めましょう。
自転車が傷つく可能性がある
輪行では、自転車が傷つく可能性がある点にも注意が必要です。たとえ輪行袋に入れていたとしても、積み込み時や高速バスの運行中に自転車が傷ついてしまう可能性があります。また、輪行可能な高速バス会社のほとんどは、自転車を預けた場合の破損や傷が免責になっているため、高価な自転車やパーツの多いモデルを持ち込む際は特に注意しましょう。
もちろん、できるだけ傷がつかないように対策することも可能です。ディレイラー(変速機)やフレーム、ホイールなどを保護するクッション材やカバーを用意すれば、走行中の衝撃を和らげることができます。また、高速バスに積み込む前にライトやボトルなどの付属品を取り外しておくのもおすすめです。心配な方は、こうした対策・準備も検討しておくと良いでしょう。
高速バスで輪行を拒否された場合の対処法

まれにですが、乗車当日になって輪行を断られてしまうことがあります。特に高速バスは乗り合いとなるため、繁忙期でトランクルームに空きがなかったり、輪行袋が過度に汚れていたりすると積み込みを拒否されてしまうかもしれません。このほか、以前は輪行OKだったものの、バス会社の規定が変わったことを知らずに予約してしまうケースも考えられるでしょう。
高速バスで輪行を拒否された場合の選択肢は3つあります。ひとつは、自転車を近くの駐輪場に置いたり自宅に輸送したりして、自分だけがバスに乗車すること。愛車に乗ることはできませんが、目的地でレンタサイクルサービスを利用できれば、遠方でのサイクリングを楽しめるでしょう。
もうひとつは、バスへの乗車をキャンセルすること。キャンセル料が発生する可能性がありますが、自転車を駐輪場に停めたり自宅に輸送したりする時間が取れない場合は、思い切って諦めることもひとつの手です。
最後の選択肢は、配送業者に依頼して自転車を目的地まで輸送してもらうこと。目的地で無事に受け取れればサイクリングを楽しめますが、梱包が必要だったり追加の費用がかかったりするほか、運送業者によって取り扱いの可否や条件が異なる点には注意が必要です。
高速バスで輪行する際は、当日になって拒否されることがないよう、バス会社の規定やルールを十分に確認しておきましょう。
高速バスを活用して輪行を楽しもう!

高速バスを使った輪行によって、非日常のサイクリング体験を手軽に楽しむことができます。もちろん、バス会社の規定やルールなどに従う必要があるため、事前の確認は必須です。ただ、本記事で紹介したように、予約しておけば輪行可能な高速バスや、輪行専用のプランを用意しているところもあるので、確実に輪行したい場合はこうした高速バスを利用すると良いでしょう。
今回ご紹介した内容を参考に、ご自身の旅のスタイルや目的地に合わせて快適な輪行旅を楽しんでみてください。