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地域に分け入るJAL社員たち~石川県編~

  • 2022年3月14日

CAの経験活かし、誰もが安心して金沢を楽しめる環境づくり
小松市が世界に誇る産業コンテンツを観光へ

 客室乗務員や業務企画職など、幅広い職種の社員が各都道府県の自治体等に出向している日本航空(JAL)。シリーズ「地域に分け入るJAL社員たち」では、出向者と自治体の担当者、それぞれの目線で地域の魅力や課題、相互への期待などを語っていただくことを通して、ポストコロナに向けた地域創生を考えていく。

 歴史ある町並みや新鮮な日本海の幸など、観光地としても人気を集める石川県。更なる地域の活性化に向け、金沢市では文化やスポーツの誘致に、小松市では産業観光に力を入れている。

石川県金沢市役所

文化スポーツ局オリンピック関連事業推進室 杉原伶佳さん

学生時代から海外の文化や世界遺産などに興味があり、世界を身近に感じられるような仕事がしたいと思い、JALに入社しました。入社後は客室乗務員として約4年間、国内線・国際線に乗務していました。

1年程前に金沢市役所への出向の社内募集があり、東京オリンピック・パラリンピックのフランスとロシアの選手団受け入れ業務や大会を通じた地域活性化事業などに携わる業務であることを聞きました。これまでの経験を生かしながら、選手団や金沢市のお役に立ちたいと思い応募し、昨年4月に出向することになりました。ホストタウン事業以外にも金沢市のスポーツ関連イベントや金沢SDGs推進事業にも携わっています。

-住んでみて初めて知った地域の特色や、お薦めの観光素材はありますか。

 金沢といえば「金箔」を思い浮かべる方も多いかと思います。金箔貼り体験は国内外問わず観光客にとても人気があると伺い、先日私も体験してきました。金箔はとても繊細で扱いが難しそうだと思いましたが、世界で1つだけのオリジナル金箔工芸品を作ることができ、大満足な経験となりました。金沢市内の飲食店やカフェでは、金箔が施された金沢漆器や九谷焼など美しい器に盛られた食事を楽しむことができます。

 山や海が近く、加賀野菜や海の幸など新鮮でおいしい食材を使った料理も魅力の1つです。また、金沢の料理と器のコラボレーションの美しさにも大変惹かれ、自分の感性を磨く時間にもなっています。金沢のさまざまな伝統工芸にも日々触れることができ、心も豊かになっています。

休日に友人と一緒に金箔貼り体験をした時の作品

-出向して最も解決したいと感じた課題は何でしょうか。

 オリンピック・パラリンピック選手団の事前合宿の受け入れ業務を行った際、海外の選手団のグルテンフリーやラクトースフリーといった食の多様性への対応に難しさを感じました。コロナ禍の来日で、ホテルと練習場以外は外出できない選手の方々にも、金沢の食材を使った料理を安心して楽しんでいただきたいと思い、金沢市内のホテルの担当者と何度も話し合い、試行錯誤を重ねながら誰もが一緒に楽しめるメニューを準備しました。

 国籍を問わず食が多様化しているので、今後金沢市の飲食店やホテルなどがより理解を深め、柔軟に対応できるよう取り組んでいく必要があると思っています。誰もが安心して金沢ならではの食文化を楽しめる環境づくりを行うことで、今後のインバウンド旅客やアスリート団体の合宿などの誘致にも繋がればと思います。

ホテルで和食を楽しむフランスパラリンピック選手達。とても好評でした。

-今後の需要回復も見据えて、コロナ後はどのようなターゲットにどのような商品・素材を紹介していきたいですか。

 金沢は藩政期の建築、レンガ造りの近代建築、21世紀美術館などの現代建築までいろいろな建物が点在する「建築のまち」とも言われています。

 市ではまちなみや自然を感じながら歩いてゴールを目指す「金沢ウォーク」というイベントを年に一度開催しています。いくつかのコースが設定され、歴史と自然が感じられる金沢のまち歩きを楽しむことができます。また、観光客向けの周遊バスや「まちのり」といった便利な公共シェアサイクルサービスもあります。このようなイベントやサービスを通して金沢の魅力をさらに感じてもらえたら嬉しいです。

文化スポーツ局オリンピック関連事業推進室 桑原秀忠さん

金沢好きが高じて、36歳で民間企業から転職しました。現在はオリパラ関連や全国大会誘致等を担当しています。

金沢で最も好きな季節は冬です。まちは鉛色の雲と白い雪のモノトーンに覆われ、厳しい寒さと暴風の中、雪との格闘を強いられますが、風・雨・雪が描く景色は刻々と変化し、同じ光景は二度と見ることができませんし、その美しさは見飽きることがありません。また、食卓には脂の乗り切った日本海の幸と良質な米・麹・水で醸す美酒が並び、赤いカニと甘えびが純白の雪に鮮やかなコントラストを描きます。金沢の冬は厳しさと引き換えに極上のご褒美も与えてくれるのです。年を重ねるごとに、金沢への愛情が深まっています。

-観光資源やお薦めの食、特産品などをご紹介ください。

 金沢は1583年に加賀藩祖前田利家公が金沢城に入城してから今日まで戦禍や大規模な自然災害を経験しておらず、藩政期のまちなみが残り、350年以上前の古地図と現代地図を重ねても実に8割以上の道筋が一致します。歴史的な建物や構造物は徒歩圏内に集積し、美術や工芸技術、食文化や風習までもが数百年間も失われずに引き継がれています。

 亜高山地から日本海にかけて高低差1,644m、面積の約60%を占める林野、豊富な水資源にも恵まれ、歴史遺産、自然、武家文化、茶道、加賀料理、加賀友禅、金箔、九谷焼、蒔絵、象嵌など、多くの魅力が詰まった宝石箱のようなまちです。一方で、金沢21世紀美術館に代表される現代アートも盛んで、新旧の文化がコラボしたイベントが数多く開催されるほか、近年は若手アーティストがセカンドオフィスを設けるケースも増えています。

金沢の古地図

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