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【発行人コラム】柳家小三治ー人間国宝の「旅」

  • 2022年2月9日

柳家小三治という噺家をご存じだろか。

 江戸落語の大看板、人間国宝。

 古典落語の名人にして、「まくらの小三治」とも言われ、高座に上がってから降りるまで、二度にわたり我々客を楽しませてくれました。テレビ等でのタレント活動はされなかったのですが「まくら」だけを集めた本も出版されていますので、それをご覧になった方もいるかもしれません。

 「まくら」にて旅に関するお話をされる事が度々あり、それが面白いのはもちろん、色々な気づきを与えてもらいました。

 そもそもこの方は根っからの旅好きでは無く、もともとは英語も不得手中の不得手。わざわざ飛行機に乗って、言葉も通じないような場所に行く人の気が知れないと思われていた節があります。

 そんな方が、仕事や義理がらみで海外へ行くうちに、いつの間にか筋金入りの旅好きとなります。数々のトラブルや不自由に見舞われるのですが、それを楽しむ、或いは克服する事に挑戦する、そんな旅の達人になります。

 数々のエピソードは「ま・く・ら」や「もうひとつま・く・ら」をお読みいただきたいのですが、最も印象に残ったフレーズをご紹介します。

「人間の心が規則よりちょっと前にいつも混じってるって、それなんですよね」※①

 これは言葉の出来なかった師匠と現地の航空会社のスタッフとの電話、スーパーマーケットのレジでの出来事から師匠が感じたことです。

 最後にもう一つ
「旅ってものはほんとうにいいもんですよ。いろいろな人に出会ったりね。わぁー、いい出会いだなと思ったのが、次の日には忘れちゃたりするっていう。それもまた旅のよさなのかもしれないですね」※②

 本当に残念ながら、小三治師匠は昨年10月に81年間の生涯を閉じられました。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

※①及び②は講談社文庫「ま・く・ら」から引用させて頂きました。

岡田直樹
㈱エフネス代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人。27歳でエフネスの前身㈱ルゥエストを創業し、31周年にあたる今年に至る。旅行素材のホールセール、観光関連企業への決済サービス提供、緊急対応代行、業界誌トラベルビジョン運営等々、主に観光産業内のB2B事業に携わる。
㈱ティ・エス・ディ代表取締役、一般社団法人インバウンドデジタルマーケティング協議会理事、㈱ミックナイン社外取締役​