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【フランス現地レポート】100年ぶりの祝祭:パリ・オリンピック2024

  • 2022年2月10日

スポーツと歴史遺産の融合、大会史上最もグリーンな「コンパクト五輪」

 パリ2024では32競技329種目が予定されている。東京五輪で実施された野球、ソフトボール、空手が外される一方で、新たにブレイキンが加わる。参加選手は男女同数で、競技会場・関連施設はパリ市内・郊外にとどまらず、地方、海外領土と合計63の自治体に及ぶ。「コンパクト五輪」のコンセプト通り、会場の95%は既存の競技施設の他、グランパレ・エフェメール(Grand Palais Éphemère:仮設グランパレ)のような期間限定のアリーナ、仮設スタンドが活用される。新型コロナ対策に多くの予算が割かれたため、同じ会場で複数の競技を開催するなど効率化が図られ、当初の計画より2億8000万ユーロの経費削減を実現する。

 パリ市では近年、環境政策として「緑化プロジェクト」が重点的に進められているが、シャンゼリゼ通りの起点となるコンコルド広場にも新たな緑地スペースが2024年までに整備される。ここはフリースタイルMBX、ブレイキン、スケートボード等の会場となる。トライアスロンや陸上、ロードサイクリング等の会場となるイエナ橋付近も、ソフト・モビリティを活用した歩行者優先ゾーンに生まれ変わる。現在お色直し中のエッフェル塔付近には、新たに「特別な緑地帯(庭園)」が作られるという。

「スポーツを街の中に」、シャン・ド・マルス(エッフェル塔スタジアム)はビーチボールの会場に ©Paris 2024

 アンヌ・イダルコ市長の下に打ち出された「パリで泳ぐ(Nager à Paris)」プロジェクトに沿って、セーヌ川でトライアスロン、オープンウォータースイミングが予定されている。パリ市の担当者によると、近年セーヌ川の水質は格段に良くなっており、1970年代はわずか2種類だったセーヌ川に生息する魚が現在、35種類に増えているという。実際、夏のパリの風物詩「パリプラージュ(Paris Plage)」の一環として、ここ数年サンマルタン運河とウルク運河(貯水池)を区切って、プールとして活用する試みが行われている。1923年から水質汚染のため遊泳禁止になっているセーヌ川での遊泳が、果たして1世紀ぶりに実現するのだろうか。

 ヴェルサイユ市では、ヴェルサイユ宮殿の敷地内で馬術、近代五種競技が行われる。パリ郊外北西部のコロンブ市では、フィールドホッケーが予定されている。1907年に建設されたイヴ・デュ・マノワール・オリンピック・スタジアム(Stade Olympique Yves-du-Manoir)は、映画「炎のランナー(Chariots of Fire)」の舞台になった、前回のパリ五輪のメイン・スタジアム。1938年のFIFAサッカーW杯やラグビーのシックスネーションズ等、かつては多くの国際イベントがここで開催されていた。サッカーはパリ・サンジェルマンの本拠地パルク・デ・プランス(Parc des Prince)以外にも、ボルドー、ナント、ニース、マルセイユ、リヨン、サンテティエンヌで試合が開催される。セーリング競技はマルセイユ。サーフィンは、主催者が「世界でも比類のないほど素晴らしい波」と胸を張る、パリから約1万5700キロ離れた仏領ポリネシアのタヒチで行われる。

ヴェルサイユ宮殿で馬術と近代五種競技を開催 ©Paris 2024

 選手村はパリの北郊外7キロから10キロに位置する、サントゥアンヌ市(Saint-Ouen)、サンドニ市(Saint-Denis)、リル・サンドニ市(L’Ile –Saint- Denis)の3つの自治体にまたがって建設される。約51ヘクタールの敷地内にセーヌ川が真ん中に流れる施設となり、中洲のリル・サンドニ島を繋ぐ新しい橋が架けられる。100%再生可能エネルギーの利用、廃棄物ゼロ政策の実施、会期中は村全体をゼロ・エミッションカーが走る等、「持続可能な開発モデル」を実現し、五輪期間中、地球に優しい環境に合計約2万2000人のアスリート・関係者を迎える予定だ。会期終了後、施設はオフィスや住宅として再利用される予定で、移民層が多いこの地域の再開発計画も兼ねている。

「持続可能な開発モデル」を体現する、環境に優しいオリンピック村 ©Paris 2024

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