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特色の維持と効率化、両立のナローパスに挑む-エア・ドゥ代表取締役社長 草野晋氏

  • 2022年1月14日

ソラシドエアとの共同持ち株会社設立へ準備を進行中
国内・国際チャーターに手応え

 新型コロナウィルスにより航空業界は大打撃を被っている。そうしたなか、いずれも地域に根差した運航に努めてきたエア・ドゥとソラシドエアは、共同持ち株会社の設立に向けて準備作業を進めている。エア・ドゥが地域航空会社としてどのような状況にあり、共同持ち株会社設立後の新体制で何を目指すのか、草野晋社長に伺った。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

エア・ドゥ代表取締役社長の草野晋氏

-エア・ドゥの概要と特徴を説明してください。

草野晋氏(以下敬称略) 北海道を拠点に10路線を展開し、1日60便から62便を運航しています。コロナ禍の影響を受けなかった2018年度に販売した旅客数は、エア・ドゥ販売分で210万人でした。従業員数は約1000人です。

 エア・ドゥはもともと北海道の地域経済活性化のために北海道の企業や個人が出資して1996年に設立され、初就航は1998年12月でした。B767型機1機を保有し札幌/東京路線で1日3便の運航を開始しました。現在はコスト構造改革や機材の入れ替えを行いながら、ソラシドエアとの共同持ち株会社設立に向けて全力で動いています。

 コロナ下における明るい話題としては、ポケモンのキャラクターであるロコンとアローラロコンを描いたB767型機の特別塗装機材「ロコンジェット北海道」の就航があります。この取り組みが北海道地域の観光振興の一助になることを望んでいます。

-ロコンジェット北海道の反響はいかがですか。

草野 11月8日にロコンジェット北海道のプロジェクトを発表したのですが、発表当日のツイートランキングで3位まで上昇したとの報告がありました。想像以上の反響で改めてポケモンの人気の高さを実感しました。また11月29日には羽田で機体のお披露目式を行い、12月1日には千歳空港で初便式を実施しましたが、その際にも多くの報道陣とファンが集まって下さったのは嬉しい驚きでした。

 このプロジェクトは、株式会社ポケモンと北海道庁の包括連携協定を通じたご縁で始まりました。このキャラクターが「北海道だいすき発見隊」として北海道の魅力PRを担っていたことから特別塗装機が実現したもので、北海道庁や知事もプロジェクトを応援してくれました。この背景を忘れずロコンジェット北海道を地域のために役立てていきたいと思います。

-草野社長の自己紹介もお願いします。

草野 私は1960年の東京生まれですが、両親はいずれも北海道生まれで、北海道の航空会社の社長に就任したことには運命を感じています。大学卒業後、1983年に日本開発銀行(現在の日本政策投資銀行)に入行してからは、主に企業審査部門と、都市開発案件のファイナンス関連部門の仕事を担当。2008年のリーマンショック以降の不動産投融資案件も担当しました。

 エア・ドゥには2015年3月に入社し6月に副社長に就任。2019年6月から社長を務めています。就任当初は北海道・十勝が舞台のNHK連続テレビ小説「なつぞら」放映の効果で北海道旅行人気が高まり業績も好調だったのですが、1年も経たずにコロナ禍に襲われることになってしまいました。

-コロナ前の搭乗者の属性について、国内旅行者と訪日旅行者の割合はどれくらいでしたか。

草野 パスポートチェックをしていないので正確な国籍は分かりませんが、搭乗者名から日本人か外国人かを判断した結果では、19年度上期の外国人比率は平均3%。外国人が最も増える8月でも4%弱です。海外ではエア・ドゥの航空券を購入しにくいため、日本到着後に国内移動目的で購入するケースに絞られ、インバウンド比率が低いのだと考えています。

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