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「需要はすでに十分にある」22年はカナリア諸島、ユニバーサル旅行を強化-スペイン政府観光局 局長ハイメ・アレハンドレ氏

  • 2022年1月11日

旅行会社向け研修旅行も再開
観光分野のサステナブル対策として74億ユーロを投資

―日本人旅行者の需要回復はいつ頃からだと予測していますか。
アレハンドレ氏

アレハンドレ 需要はすでにあります。しかし問題は日本では帰国後の隔離期間を含めて規制が厳しい点で、世界標準になればスペイン旅行の需要が顕在化します。スペインは世界的に1、2を争う人気デスティネーションですが、コロナ禍の日本でもスペインはハワイと同程度の人気があるとの調査結果も出ています。

 またインターネット上で「スペイン」関連を検索ワードとする動きは2021年1月以降増えており、その検索結果からの離脱率も低いとの調査結果もあります。したがって回復のためにすべきことは、すでに存在する需要を顕在化するための、規制緩和であることははっきりしています。

 昨年の11月下旬にコロナ禍後として初めて、旅行会社の研修旅行を実施しました。参加者の反応は主に「思っていた以上にスペインに行くことが簡単だった」「現地状況は落ち着いており日常が戻っていた」「安心・安全に関する心配はない」の3点でした。ですから需要はすでに十分にあります。あとは帰国後の隔離期間の緩和をおこなうことだけです。

―ウィズコロナ時代には旅行のスタイルも変化すると思います。この点についてはどう見ていますか。

アレハンドレ 変化は多岐にわたると思います。旅行者のFIT化がますます進み密集や人混みの回避を望む人が増えます。反対に、PCR検査等の各種手続きに関する不安からグループで周遊するオーガナイズツアーを望む者も増える傾向が見られてもおかしくありません。

 デスティネーションの好みに関しては、日本人旅行者に関して言えば変わらないかもしれません。バルセロナやマドリード、トレド、セビージャといった日本人にとって大きな魅力を持つ都市が多くあるため、田舎町の小さなホテルやペンションでの滞在型観光を楽しむといった変化は起こりにくいと思われます。

 ただし、これまでの平均滞在日数は7~8泊でしたが、今夏に実施した調査では15日滞在してもいいとの回答が増えたのが特徴で、滞在日数が伸びる可能性はあると思います。その理由の一つがコロナ禍による働き方の変化で、リモートワークの浸透によりワーケーションのハードルが下がったことが挙げられます。8日間のビジネス出張に8日間のバケーションを組み合わせる。そんなスペイン旅行が増えてくれることを歓迎します。

 スペイン側の観光セクターにみられる変化としては、これまでのスペイン訪問客にはなかった動きへの対応があります。たとえば美術館に入場するため、どれくらいの行列に並ぶ必要があるか、入場制限がかかるのはいつ頃かといった情報は、コロナ禍前は求められませんでしたが、今は状況が変わっています。ですから日本の旅館で温泉浴場の混雑具合などを知らせる表示システムやアプリがあるように、スペインでもこうした情報の提供を強化しつつあります。

 さらにパンデミック時に一番大切なのは不安の解消です。その点で日本人旅行者にとっての最大の不安材料である言語の壁を取り除くため、健康不安を感じた際など、さまざまな場面で日本語アシスタンスを受けられる体制作りも進められています。

―観光産業でもSDGsやサステナブルへの取り組みが必須となってきましたが、スペインではどのような取り組みがなされていますか。
持続可能な観光を実現している地区も多く、例えばエル・イエロ島は再生可能エネルギーを利用した最初の自給自足の島(写真提供:スペイン政府観光局)

アレハンドレ サステナブルは国の観光政策の柱の一つです。またこれは一つのセクターが取り組むものではなく皆で力を合わせて進めていく内容であり、CO2削減、水の無駄使いやプラスチックごみの削減、食べ残し問題の解決など、いずれも同様です。

 ですからスペインでは国全体のサステナブル対策として520億ユーロを予算化しており、その7分の1を観光分野におけるサステナブル対策に当てています。またデスティネーションのサステナビリティを増すためのプロモーション予算も含まれます。たとえば夏の多客期を分散化するためのプロモーションです。観光プロモーションにおける紙の使用を減らしデジタル化するための予算も含まれ、環境負荷の軽減にも取り組んで行きます。

 さらに昨年の11月下旬にスペイン政府は「スペイン世界遺産都市」に対して環境やサステナブルの向上に対する4500万ユーロの支援の予算化を発表しています。

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