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【ホテル総支配人リレーインタビュー】第11回 雲仙観光ホテル代表取締役社長総支配人 船橋聡子氏

  • 2021年12月9日

名門クラシックホテルの矜持と戦略
スタンダードルームを売らない選択

-建物が国の登録有形文化財に指定される歴史的建築物であるからこその運営の難しさはありますか。

船橋 歴史的建造物ゆえに免耐震補強工事などの際にも景観美を損なわない施工が求められ、時間、経費とも増大するのはクラシックホテルの宿命です。しかしそれ以外はプラス面も大きく、例えば文化財として地元自治体からも大切にしていただいており、雲仙市や長崎県は当ホテルを迎賓的な用途で使ってくださいます。

-東京ステーションホテル藤崎斉総支配人からの質問です。「大商圏に立地するホテルとは異なる、地方のリゾートとしてのご苦労も喜びもあると思います。元々外国人用リゾートホテルとして誕生したわけですが、特に、その魅力を国内だけでなく海外まで伝え、雲仙まで誘致するのは簡単ではないと思いますし、グローバルマーケティングに長けていなければできません。そうした取り組みについて、リゾートホテルの経営やオペレーションにおいて気を付けていることと併せて伺いたいと思います。」

船橋 立地的に、人材の確保、定着が難しい面はあります。このホテルが好きでも、家庭の事情で勤務が難しくなったり、特に若い従業員は周辺にアクティビティがないと長続きしづらいとうこともあります。一方で地方リゾートの喜びは、皆が一体感を持ってホテルを創っていけることです。「宴会担当だから宿泊は分からない」「宿泊担当だから料飲は知らない」とはなりません。館内コンサートでもワンチームで取り組みました。ホテリエとして喜びを共有できますし、コンサートの出演者や観客からも「このホテルでのコンサートは心地良い。なぜなら『私は知りません』というスタッフがおらず、全員が同じ目的意識を持っていることが分かるから」と言っていただける。さらにお客様同士が友人になり、新しい人の輪ができていく。リゾートホテルならではの醍醐味を感じます。

 海外へのアピールは、私が様々な場所へ直接出向いています。また日本にある各国の在日商工会議所には可能な限り入会し、有益と思われる国際コンソーシアムにも積極的に加盟しています。海外での関連イベントにも時間が許す限り参加し、ネットワークを広げる努力を重ねています。そうした取り組みが実を結び、世界的なツーリズムコンソーシアム「Traveller Made」には西日本エリアの日系ホテルとして2番目に加盟することができました。

-読者にメッセージをお願いいたします。

船橋 私の持論は「コンペティターはいない」です。他者と競争している限りは、人の目を気にしてしまいます。これほど無益なことはありません。それよりも自分が持つ宝を磨くことに集中すれば、周りはその輝きにきちんと応えてくれます。競争よりも協働を意識し、個々の唯一無二を掘り起こして磨きをかけていくことで、業界全体で人々との共感を共創していきましょう。

-最後にバトンを渡される方のご紹介と、船橋様からその方へのご質問をお願いいたします。

船橋 ホテル日航福岡総支配人の大月照雄さんです。九州マーケット最大商都の博多は、革新的かつ首都圏および関西圏との往来も簡便で、東証1部上場企業の支店支社数は上位を占めます。ビジネスマーケットとしてのニーズは高く、レジャーマーケットとしてもハブアンドスポークに適した好立地で、両セグメントへの訴求力は他の地方都市の追随を許さないものと考えます。コロナ禍により両者ともに消滅、もしくは激減しましたが、不透明な時世のなか、生き残りをかけてパラダイムシフトされるコアヴァリューは何でしょうか?また、博多エリアにはラグジュアリーコレクションのプロパテイ進出も控えています。エリア熟成の商機ととらえ、ターゲットセグメンテーションをどのように講じていかれるのでしょうか?

-ありがとうございました。