地域に分け入るJAL社員たち ~北海道編~

  • 2021年11月30日

 2020年11月に「地域事業本部」を創設し、地域活性化への取り組みを加速している日本航空(JAL)。客室乗務員や業務企画職など幅広い職種の社員が各都道府県の自治体等に出向している。新シリーズ「地域に分け入るJAL社員たち」では、出向者と自治体の担当者、それぞれの目線で地域の魅力や課題、相互への期待などを語っていただくことを通して、ポストコロナに向けた地域創生を考えていく。

北海道阿寒郡鶴居村役場

産業振興課 課長補佐兼商工観光係長 國安知也さん

札幌市出身。1994年にJALセールスに入社し、北海道で主に法人への航空券や旅行商品等の販売など営業業務を担いました。2014年より東京勤務となり、財務部での経理業務や宣伝部でのスポーツ選手の航空券手配等を担当。今年からは鶴居村で商工観光担当として、商工会や観光協会と連携して、コロナ禍による経済対策として補助交付等の事業者支援や、企業誘致および新規起業者や雇用の支援、村や近隣地域の観光PRなどの業務を行っています。
-住んでみて初めて知った地域の特色や、お薦めの観光素材はありますか。

 自然豊かで美しい街並みです。「日本で最も美しい村」連合に加盟し、「タンチョウが住まう暮らし」と「酪農大地の景観」といった地域資源があります。国立公園に囲まれ牧草地が広がり、タンチョウやエゾシカやキタキツネなどの自然動物を毎日見ることができ、家の窓を開けると鳥や虫の鳴き声が聴こえてきます。

 酪農が主産業で特産品のチーズはJALの国際線・国内線のファーストクラスで提供する機内食に採用されるなど絶品です。釧路湿原内の木道の散策や、タンチョウの観察などがおすすめですが、夕暮れ時の空や満天の星空を眺めるなど、ゆったり流れる時間を感じて過ごすのがとても気持ちが良いです。

ナチュラルチーズ「TSURUI」

-出向して最も解決したいと感じた課題は何でしょうか。またそれに対して実施している取り組みがあれば教えてください。

 村内の施設は公共施設が多く、行事やイベントも行政主導で行われるものがほとんどであることから、ほぼ全てが利用中止や開催中止の判断をせざるを得ない状況でしたが、民間主導であれば可能な範囲で利用や開催が出来るものもあると感じておりました。来年度はクラフトビール工場やキャンプ場などで民間事業者の開業予定があることから、その準備等の支援活動を行っています。

-今後の需要回復も見据えて、コロナ後はどのようなターゲットにどのような商品・素材を紹介していきたいですか。

 インバウンドはまだ見通しが立てられない状況ですが、国内外へ情報発信し、夏期間は釧路湿原や酪農風景、サイクリングやガイドツアーなどを、また、タンチョウは鶴居村が日本で一番生息数が多く、キラーコンテンツであることから、冬期間は給餌場やねぐらなどの人気スポットを紹介していきたいと思います。食としては特産品のチーズやワイン、エゾシカなどのジビエに加え、新しい特産品として期待されるクラフトビールはアウトドアとの親和性も高いので、シーズンを問わず楽しめる観光資源として紹介していきたいと思います。

-観光事業者や他の自治体と連携して取り組みたいことがあれば教えてください。

 アドベンチャーツーリズムやワーケーションなど中長期的な滞在型旅行が見込まれるなか、1つの自治体のみに滞在するというのは難しいと思うので、近隣の地域と連携した取り組みが必要になると思います。北海道、ひがし北海道、釧路管内といった単位で連携した活動が実施されていますが、来年度以降は近接して関係性の深い弟子屈町・標茶町・鶴居村の3町村での取り組みも強化し、湖や川などそれぞれが持つ魅力を合わせて発信し集客を図っていきたいと思います。

NPO法人美しい村・鶴居村観光協会事務局長 服部政人さん

大阪府出身で、北海道鶴居村に移り住んで32年、ライフワークで世界中の青年たちを受け入れるホームステイホストを始めて23年目。延べ人数900人強の若者との交流がインバウンド事業の礎になっています。

釧路湿原を有する鶴居村には、特別天然記念物タンチョウが生息し、乳牛が草を喰む牧歌的な風景が広がります。土地ならではの長期滞在型観光を運営していく上で、村の人材、自然、農村景観による地域活性化に努め、「日本で最も美しい村」の観光を目指して、「2600人の村で暮らす旅」を進めています。広大な風景のなか、村人との心の交流も含めた非日常な時間を体感できる旅です。
-観光資源やお薦めの食、特産品などをご紹介ください。

 タンチョウ観察にカヌーやサイクリング、おいしいチーズやワイン、ヒツジやウマなどの動物たちとの触れ合いなど、たっぷり楽しんでいただきたいから、暮らすような旅「農泊」を進めています。農泊は、長期滞在型のあたらしい旅のかたちです。暮らしや仕 事、自らのライフスタイルを自由に選べる時代だからこそ、「農村で暮らす」リアルを体感できる旅が大事と感じています。移住者との交流や農家との触れ合いから、ここならではの素敵な価値観を味わえます。

音羽橋のタンチョウ

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