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アフターコロナの空の旅、鍵を握る「顔パス」技術の未来とは

  • 2021年10月12日

「無限大の可能性」、カードもスマホも不要に
ワクチンパスポートへの活用案も

「ワクチンパスポート」への活用にも期待

NAA取締役経営企画部門長の宮本秀晴氏

 今後の旅行市場の課題については、ゴー氏が特にワクチン接種歴や検査結果を国家間で相互に照合しあえるようにする取り組みが遅れていると指摘。また、国家間だけでなく民間主導のワクチンパスポートもIATAトラベルパス、コモンパス、IBMパス、AOKパスと複数の種類が乱立しているが、それらすべての利用を旅客に求められるはずもないため、例えば「スターアライアンス・バイオメトリクス」の中で予約記録とワクチン接種証明や検査結果を統合して管理するような仕組みが求められていくとの予想で、その実現には業界全体での連携が必要だと訴えた。

 これについては、NAA宮本氏もWHOやICAOによる国際規格の統一に期待。NAAとしてはコロナ禍で空港での手続きにかかる時間が増えているのに対して、出入国管理や保健など関係当局も多いが、空港外でのオンライン手続きの活用などにより安心・安全と利便性の両立をめざしていくという。

可能性は「無限大」、旅行のすべてを顔パスも

NEC取締役執行役員副社長の石黒憲彦氏

 セッションでは生体認証技術の未来についての予想も話され、旅行中の決済やホテルへのチェックインや客室の出入り、公共交通機関やタクシーの利用、レンタカーの引き渡しから乗り降りまで様々な可能性が示され、ゴー氏は「無限大の可能性があると確信している」とコメント。

 また、NECはすでに南紀白浜で実証実験を始めており、地域のホテルやレストラン、土産物店、テーマパーク、空港を生体認証技術で結んですべての決済を可能としていることも紹介。クレジットカードやスマートフォンを出さなくても現地サービスが利用できるようになる姿が示された。

課題はプライバシー、「ユーザーが自ら判断」へ

NECアメリカ バイスプレジデントのジェイソン・ヴァンサンス氏

 生体認証技術やワクチン接種歴などをデジタル化する際に懸念されるのがプライバシーの問題だが、NAAでは利用者が顔認証情報とフライト情報を関連付けることに同意して初めてシステムに情報が保管されるようにし、フライトの出発後24時間で自動で消去される仕組みを構築。

 また、スターアライアンスも暗号化ソリューションを活用して保存する情報を最小限にしたほか、ユーザーが自由に個人情報を管理できることを重視しており、例えば「A国またはB地域に出発するが、その場所では生体認証を使いたくない」というように、スイッチのように簡単に切り替えられるシステムをめざす。さらに、生体認証情報の保管場所の分散化や、虹彩認証や指紋認証などセキュリティの強化にも取り組んでいくという。