世界遺産知床のネイチャー・リゾートを目指してー北こぶし知床ホテル&リゾート専務 桑島敏彦氏

  • 2021年6月10日

3つの宿泊施設でユニークな自然体験
「クマ活」などCSR活動も積極に展開

-昨年からのコロナの影響はいかがでしょうか。

桑島 24室のホステルについては、昨年からクローズしています。北こぶし知床については、概ね売上は半減しましたが、オンシーズンの「Go To トラベル」の時期にお客様が増えたため、宿泊単価は少し上がりました。KIKI知床ナチュラルリゾートの昨年の売上は19年比で40%ほどです。

 足元では5月、6月、7月の売上は非常に悪い状況です。北海道では緊急事態宣言(編集部注:5月末時点)が続いており、斜里町でも5月24日にクラスターの発生が判明しました。そのため、北こぶし知床は、5月25日から6月3日まで休館することにしました。KIKI知床ナチュラルリゾートは今年7月頃に再オープンしようと考えています。

 また、ネイチャーガイドもコロナの影響を大きく受けています。インバウンドで人気が高い流氷ウォークの売上比率が高かったのですが、その需要が消えたため非常に大変な状況です。

-厳しい状況が1年以上続いていますが、どのようなコスト削減の取り組みを行っていますか。

桑島 人件費については、雇用調整助成金の取得のために、少人数でのマルチタスクを実施しています。また、お客様にはご迷惑をおかけしましたが、オープンしていた2ヶ所のうち、1ヶ所でまかなえる集客のときは、1つのホテルにまとめました。コスト削減とともに感染対策からもいくつかのサービスを割愛しましたが、現在はしっかりとした感染対策を確立しています。

-「ネイチャー・リゾート」を目指すということですが、その意図を教えて下さい。

桑島 知床エリアの一般的な観光のイメージはウトロ温泉でしたので、当社でも以前は和風旅館として販売していました。しかし、地域をどのように活かしていくかを考えたとき、温泉地のイメージでは知床は光らない。関東の人なら箱根や草津に行きます。関西だったから、有馬や城崎に行くでしょう。当社のターゲットは関東や関西ですので、その人たちを呼ぶためには温泉地としての売りでは弱いと思います。

 知床の素晴らしさは、何と言っても自然体験です。たとえば、ヒグマの密集地では世界一の場所です。経験豊富なネイチャーガイドも揃っています。その素材を見つめ直すなかで、自然体験が満喫できると同時に自然学習ができるネイチャー・リゾートになりたいと考えました。1泊ではなく、2泊、3泊してもらえるような地域にしていきたいと思っています。

-CSRにも積極的に取り組んでいらっしゃいます。その内容をお聞かせください。

桑島 北こぶしリゾートは、2020年から知床のクマを守るための活動「クマ活」を始めています。いま、ヒトとクマの関係が危うくなっています。互いのテリトリーを侵さず、知床の地でいかに共存できるか。「クマ活」は、その道を探す活動です。

 また、17項目のSDGsの中で、北こぶしリゾートが特に重要な対応目標として捉えているのが「質の高い教育をみんなに」と「住み続けられるまちづくりを」です。「クマ活」などを通じて、お客様や従業員に知床の自然への理解を深めてもらい、ネイチャーリテラシーの向上を目指しています。

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