オーストリア、業界向けオンラインイベント開催、ロックダウン緩和で夏の需要復活に期待

プレスカンファレンスの様子 ©ÖW/Chris Lendl

 オーストリア政府観光局は、旅行業界向けのオンラインイベント「atb. virtual 2021」を5月17日から3日間にわたって開催した。オンラインで開催するのは今回が初めて。ポストコロナを見据えた旅行トレンドを議論するパネルディスカッションをはじめ、バイヤーとセラーとのネットワーキングも実施された。同局によると、32カ国から約1600人がイベントに登録したという。

 オーストリアでは、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、ワクチン接種も進んでいることから、3度目のロックダウンを5月19日に大幅に緩和。飲食店、小売店などの営業が再開し、ホテルについても陰性証明書あるいはワクチン接種証明書などの提示が求められるが再開が認められた。

オーストリア政府観光局のペトラ・シュトルバCEO ©ÖW/Chris Lendl

 オーストリア政府観光局のペトラ・シュトルバCEOは、オープニングセレモニーで「5月19日はオーストリア観光が再開する特別な日」と位置づけ、今夏のバケーションシーズンに向けて、主にEU諸国からの観光客を迎える準備を進めていく考えを示した。

 また、エリーザベト・ケスティンガー農業・地域・観光大臣は、「観光はオーストリア経済にとって不可欠な産業。再びオーストリアをトップレベルの観光デスティネーションにしていく」と強調するとともに、「コロナで観光産業の弱さも露呈した」と指摘。今後も連邦政府として、観光をより魅力的な産業にしていくとともに、雇用対策などで業界を支援していく方針を明らかにした。

エリーザベト・ケスティンガー農業・地域・観光大臣 ©ÖW/Chris Lendl

 一方で、シュトルバCEOは「(観光再開に向けての)最優先事項は安全安心の確保」としたうえで、徹底した感染対策を継続していく必要性を主張。観光局では、20言語でオーストリアの衛生対策を世界中に透明性をもって発信していくとした。

 オーストリアがまずターゲットにする市場は、ドイツやオランダなどの近隣国。シュトルバCEOによると、ドイツでは今夏のバケーション先としてイタリアやスペインとともオーストリアが選ばれており、「レジャーデスティネーションとしてのオーストリアへの関心は高まっている」と自信を示した。

パンデミックで旅行傾向に変化

 また、パンデミックのなか、昨年から旅行傾向にも変化が表れ始め、これまで以上にサステナブルツーリズムやスローツーリズムを好む旅行者が増え、ウォーキングやトレッキングなど自然の中で新鮮な空気を求めるアウトドアアクティビティの人気が高まっていることから、「オーストリアには大きなアドバンテージがある」とした。

カルマシン・リサーチ&アイデンティティのソフィー・カルマシン氏 ©ÖW/Chris Lendl

 プレスカンファレンスに登壇した調査会社カルマシン・リサーチ&アイデンティティのソフィー・カルマシン氏は、同社の調査結果から大きなトレンドとして、サステナビリティ、地域性、健康の3点を挙げ、「自然やアウトドア体験など、人と距離が取れる旅行を望む傾向が強い。これは、もう二度とロックダウンはしてくないという人々の気持ちを表しているものだ」と説明した。

 このほか、需要回復に向けたカギとして、感染対策、多様な価格、オンラインブッキング、柔軟なキャンセルポリシーを挙げた。

オーストリア政府観光局パートナー・マネージメント責任者のフローリアン・グレースヴァング氏 ©ÖW/Chris Lendl

 オーストリア政府観光局パートナー・マネージメント責任者のフローリアン・グレースヴァング氏は、今後のプロモーション方針として「さまざまな施設やアクティビテへのアクセスについての情報を海外に積極的に発信していく」と説明した。需要喚起策としては、5月中旬から周辺国向けにマルチチャネルキャンペーンを展開。自然とアウトドアを中心に訴求を強めていく。

 インバウンド市場の再開では、EU諸国からの旅行者受け入れが第一段階となるが、シュトルバCEOは、EU以外からの旅行者受け入れについても言及。「ワクチン接種が加速している米国は今後期待が持てるが、オーストラリアやアジアについては今年は極めて限定的にならざるを得ない。本格的な回復には時間がかかるだろう」との見通しを示した。

観光産業の発展にはデジタルイノベーションが不可欠

オーストリア連邦産業院 観光・余暇産業部門のロベルト・セーバー部長 ©ÖW/Chris Lendl

 5月19日のロックダウン緩和は、経済界にとってもターニングポイントになる。オーストリア連邦産業院観光・余暇産業部門のロベルト・セーバー部長は、「オーストリアは、モダンと伝統が融合したデスティネーション。文化的遺産や食などのコンテンツに加えて、観光のプロフェショナル人材も多い。アフターコロナでは競争が激しくなるだろうが、オーストリアには大きなアドバンテージがある」と話し、オーストリアの観光産業はコロナ前よりも力強くなると期待をかけた。

オーストリア連邦産業院のハラルド・マーラー総裁 ©ÖW/Chris Lendl

 また、オーストリア連邦産業院のハラルド・マーラー総裁は、「ポストコロナに向けた経済活動のカギとしてデジタル化を挙げた。「コロナ禍では、小さな飲食店でもフードデリバリーのデジタルプラットフォームを活用するなど新しい傾向が出てきた」と説明。観光分野でも、競争に勝ち抜くためにはさまざまなデジタルイノベーションが必要になるとの見解を示した。

 このほか、セーバー氏は自由な移動だけでなく経済活動にとって不可欠な要素としてグリーンパスポートを挙げた。オーストリアは独自にPCR検査の陰性結果やワクチン接種歴を示す証明書の仕組みを構築しているが、ケスティンガー大臣は、欧州連合(EU)が進めるているデジタル証明書について、「今年6月初旬の導入を目指し、各国で調整を進めている」と説明した。

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