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日本航空、2020年度は2866億円の赤字、売上収益は65%減
新中期経営計画では2023年度にコロナ禍前の利益水準へ

中期経営計画、23年度にコロナ禍前の利益水準に

 5月7日には「2021~2025年度JALグループ中期経営計画」も発表された。同中期計画は、2030年に向けてグループのあるべき姿をまとめた「JAL Vision 2030」を目指し、「コロナ禍からの早期回復とビジョン実現に向けて非常に重要な時期となる前半5年分のタイムラインを示したもの」(代表取締役社長執行役員・赤坂祐二氏)との位置付けだ。

 中期計画では、23年度にはコロナ禍前の利益水準である1700億円 (EBIT)を達成し、最終年度となる25年度には1850億円レベルを目指す。計画は事業戦略、財務戦略、SDGs達成に向けたESG戦略の3つの柱で構成される。

 事業戦略では、フルサービスキャリア(FSC)事業においてA350を中心とする新型機材導入の促進やアジアやオセアニアの共同事業の拡充を進めることで収益性を向上し、LCC事業ではアジア・ハワイ・太平洋線の国際線を運航するZIPAIR、中国特化型のSPRING JAPAN、国内線ネットワークのJetstar Japanによりマーケット開拓を強化する。その一環として6月にはSPRING JAPANを連結子会社化し、JALグループのスケールメリットを活かし高品質で低コストなサービスを実現し、中国発インバウンド需要の取り込みを図る。このほか非航空事業についても日航の強みである顧客基盤を活用したマイルや金融、物販のサービスを展開し、次世代エアモビリティの事業化にも取り組む。これに伴い事業構造改革も推進し、収入割合はESCの依存度を下げ、成長分野のLCCや非航空事業のシェアを拡大する。

 23年度のEBIT1700億円達成に向けた利益成長イメージについて常務執行役員経営企画本部長・経営管理本部長の斎藤祐二氏は「FSCの収益向上と貨物の増収で120億円、ネットワークの拡大による増収で100億円、事業領域の拡大で160億円を見込む。さらに25年度の1850億円達成に必要となる150億円分は各領域の利益成長を上乗せする」と内訳を示した。

 このほか財務戦略では23年度にEBITマージン(売上高利益率)10%以上、ROIC(投資利益率)9%、1株当たり純利益260円を目指す。投資計画としては、21~23年度は投資規模は抑制しつつ成長投資を厳選して実施。年間約1500億円、3年間で4500億円規模の投資を行う。24~25年度は持続的成長に向けた投資を積極化しA350-1000の国際線への導入や事業領域の拡大、SDGs達成への取り組みに年間約2000億円、2年間で約4000億円を投資する。またコロナ禍の影響で大量の航空券払戻しが発生するリスクを経験したことから、イベントリスクに備えコロナ禍後は旅客収入の5.0~5.6カ月分を適正水準とする手元流動性を維持していく方針だ。

 ESG戦略では25年度のCO2排出量を19年度実績の909万トン未満に抑える。CO2排出量削減に関しては、30年には19年度比90%の排出量レベルを実現し、対策を実施しなかった場合との比較で約200万トンを削減する。このためにはA350やB787などの省燃費機材への更新を進め全燃料搭載量の10%をSAF(バイオ燃料などの持続可能な航空燃料)に置き換える。すでにSAF燃料製造会社であるFulcrum社に出資し燃料確保に努めているほか国産SAFのサプライチェーン構築にも取り組む計画だ。

 このほかESG戦略のKPIとして25年度にはグループ内女性管理職比率30%を達成する目標も掲げている。