休業補償に関する真実 -報道が生む誤解-

 このところ、各メディアから、新型コロナウイルスによる影響で社員を休業させる場合、あたかも給与全額を国が「雇用調整助成金」でほぼ100%助成するかのような報道が相次いでいます。直近では、以下のようなものがあります。

「国や自治体からの休業要請の対象ではない中小企業向けにも助成を拡充する。前年賃金の60%までの分の助成率は従来通り最大9割のままだが、60%を超える分については全額を補助する。4月8日以降の休業に遡って適用し、従業員を解雇しないことを条件とする」

「知事の要請を受けていなくても、休業手当のうち賃金の6割を超える部分については、助成率を10割に上げる。労働基準法上の支払義務は6割だが、超過部分を国の雇用保険で負担することで、企業に賃金全額の支払いを促す。いずれの拡充措置も、従業員を1人も解雇せずに雇用を維持した中小企業が対象」

 この部分だけを読めば、会社が休業手当を給与の6割としても、10割(=全額)支払っても、会社の負担は変わらないと、大半の人は誤解します。しかし、この助成金の1日当たりの助成限度額は8330円で変わらないのです。

 月給35万円(賞与・手当など全て含む)の社員を丸々1ヶ月休ませ、休業補償を支払う場合の実際の会社の負担は概ね以下の通りです。

※4月~6月の特例対象期間
※当該月の勤務日(平日)を20日と仮定
※下記試算は過去の月給額等々により、実際には必ずしも以下の通りとなりませんが、あえて概算値を採用

① 休業手当として月給の60%を支払う場合
会社が払う額面手当:21万円
理論上の助成額:21万円×90%=18万9000円
会社が実際に受け取る助成額:16万6600円
会社の実質負担額:4万3400円

② 休業手当を月給の100%払う場合
会社が払う額面手当:35万円
理論上の助成額:(35万円×60%×90%)+(35万円×40%×100%)=32万9000円
会社が実際に受け取る助成額:16万6600円
会社の実質負担額:18万3400円

 なぜこうなるかと言うと、助成率などが引き上げられようとも、雇用調整助成金の1日当たりの上限が8330円と決められているため、それが引き上げられない限り、会社が得る助成額は変わらないからです。

 現状、ほぼすべての旅行会社の収入はゼロだと思われ、それがいつまで続くのか全く分からない状況です。一方、家賃などの固定費や会社負担の法定福利費は出ていくため、大半の会社にとって、①の4万3400円の支出でさえ相当に厳しいものがあります。ましてや、②の18万3400円を払える会社がいかほどあるのでしょうか?

 新たに借入をして、なんとか6割の休業補償をねん出し、雇用だけは維持しようとしている経営者が大半です。

 旅行業界、特に中小企業においては、痛みを分かち合いながら耐え、需要の回復を待つ以外の選択肢は事実上無いと思っています。

 どうか皆さん、誤解を与えるような報道を鵜呑みにせず、労使一体となり、業界としても力を合わせ、この難局を乗り超えて参りましょう。

株式会社エフネス 代表取締役
兼トラベルビジョン発行人
岡田 直樹