クレカ不正利用防止のアクルが旅行業界向け新ツール、定額制アピール

訪日市場拡大で宿泊商品のチャージバックが急増
独自の認証ツール提供で、旅行業界全体の対策強化へ

旅行業界向けに認証ツール、業界全体での不正防止対策を

サービスのイメージ(※クリックで拡大)  こうした状況を受け、アクルでは旅行業界向けに、上記4つの対策を補完するソリューションとして、不正防止認証ツール「ASUKA for Travel」を開発した。そのきっかけについて、近藤氏は「昨年3月ころに決済代行会社やその取引先でチャージバックの課題を抱えていたOTAから相談を受けたが、旅行領域に効果的な解決策を提案できなかったため」と話す。

 同氏によれば、物販系のECであれば、受注から商品の発送までにリードタイムがあり、その間に不正をチェックするタイミングがあるが、旅行商品は即時決済が多いため、既存の対策だけではチャージバックの被害を防ぐのは難しいという。

 そこで、「ASUKA for Travel」では、注文動線のなかで不正利用を弾く仕組みとして、カード情報の入力時に同社独自の認証ツールを提供。近藤氏は「詳細は明かせないが3Dセキュアよりも簡単な仕組み。お客様の販売サイトはほとんど変更せず、基本的にシステム接続のための開発も必要ない。最短2週間程度でサービスを提供できる」とアピール。「簡単な仕掛けだが、これだけでも犯人グループは嫌がる」とメリットを話す。3Dセキュアや不正検知システムは顧客を失う恐れもあるが、認証ツールは注文画面上にポップアップで表示されるだけのため、消費者の不信感や負担も低くなるという。

ウェブサイト内にASUKA特設ページも設けた  カード加盟店のコスト負担も低い。従来の不正検知システムは従量課金制が大部分で、取扱が増えれば増えるほど費用が膨れ上がることを心配する加盟店もあるが、「ASUKA for Travel」は「知りうる限り国内でははじめて」(近藤氏)、初期費用10万円、月額利用料10万円をベーシックとする定額制にした。また、条件により、月額の保証料を払うことでチャージバックを保証するオプションも用意。栗田氏は「薄利多売と言われる旅行会社にも現実的に使ってもらいやすい価格を実現した。認証ツールの認知と普及を進めて、旅行業界での不正排除に貢献していきたい」と意欲を示す。

 昨年11月に決済代行会社のイーコンテクストの協力によりベータ版をリリースし、複数のOTAにて検証を開始。12月3日から本格的に販売を開始しており、まずは、イーコンテクストの取引先のOTAを含む旅行会社などに対し、ツールをアピールする考え。近藤氏は「当面は被害にあった経験がある会社など、数十社程度に利用していただきたい」と話す。今後はほかの決済代行会社やカード会社など、ASUKAを販売するパートナーを順次拡大し、導入会社を増やす方針だ。

 なお、国は、20年の東京五輪に向けてクレジットカードの利用を促進しているところ。不正利用も増えると予想されることから、経済産業省は3月31日、「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画2018」を取りまとめ、各社に対策を呼びかけている。ECなどで非対面取引を実施するカード加盟店に対しては、具体的な不正利用対策として、「本人認証」「券面認証」「属性・行動分析」「配送先情報」の4つのうち、不正利用が多発している「不正顕在化加盟店」には2つ以上を、デジタルコンテンツやチケット販売会社などの「高リスク加盟店」には1つ以上の導入を求めている。

 ASUAKA for Travel の認証ツールは、そのうち「属性・行動分析」にあたるソリューションになる。近藤氏は「ASUKAは従来の不正検知システムとは別物。すでに導入している、あるいは今後導入する不正検知システムとの併用も可能」と話し、認証ツールとして幅広い利用に期待を寄せた。