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海外医療通信2017年4月号【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

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東京医科大学病院・渡航者医療センター

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・海外医療通信 2017年4月号
 
海外感染症流行情報 2017年4月
(1)中国で鳥インフルエンザH7N9型の患者数が増加
中国では昨年末から鳥インフルエンザH7N9型の流行が発生していますが、昨年11月から今年3月までの患者数は560人にのぼり、うち207人が死亡しました(外務省海外ホームページ 2017-4-18)。患者発生は南部の沿岸地域で多くなっていますが、今期は北京でも患者が13人発生している模様です(北京CDC 2017-4-20)。WHOの報告によれば、患者のほとんどは生きた家禽との接触で感染しており、ヒトからヒトに感染するリスクは低いようです(WHO 2017-4-20)。中国に滞在中は、生きた家禽の販売されている市場などに近寄らないようにしましょう。

(2)アジアでのデング熱、チクングニア熱の流行
WHO西太平洋事務局の報告によれば、今年は東南アジア(マレーシア、シンガポール、ベトナム)でデング熱患者の発生数が昨年よりも少なくなっています(WHO西太平洋 2017-4-11)。一方、南アジアのスリランカでは、3月末までのデング熱患者数が2万人以上と、昨年より増加傾向にあります(英国FitForTravel 2017-4-3)。また、パキスタンのカラチでは、蚊に媒介されるチクングニア熱の患者が3月末までに1000人以上発生しました(WHO東地中海 2017-4-13)。同国では今までにチクングニア熱の大きな流行は発生していませんでした。

(3)ヨーロッパでの麻疹流行
今年になりヨーロッパ各地で麻疹が流行しています。4月中旬までに、フランスでは東部のロレーヌを中心に100人以上、ドイツでは約400人、イタリアでは北部のロンバルディアなどで約1600人の患者が確認されています(ヨーロッパCDC 2017-4-21)。いずれも東欧のルーマニアでの流行が波及したもので、同国では昨年1月から今年3月までに約4700人の患者が発生しました。ゴールデンウイークなどにヨーロッパを旅行する方は十分にご注意ください。

(4)西アフリカのガーナで髄膜炎菌感染症が流行
ガーナ中部のクマシなどで髄膜炎菌感染症が流行し、60人以上が死亡しまし(ProMED 2017-4-7)。髄膜炎菌感染症は飛沫感染する病気で、ガーナなど西アフリカ諸国では、毎年乾季(1~5月)に大流行します。この期間、流行地域に滞在する人は、事前にワクチン接種を受けておくことをお勧めします。

(5)米国での先天性ジカウイルス感染症の発生率
米国CDCの調査によれば、2016年に米国で250人の妊婦がジカウイルスに感染し、このうち24人の胎児や出生児に異常が確認されました(MMWR 2017-4-7)。妊婦が感染した場合の胎児や出生児への影響は約10%で、この数値はブラジルでの調査結果とほぼ同じです。胎児への影響は妊娠初期に感染した場合におこりやすいとされていますが、妊娠中期以降に感染した場合も起こる可能性があります。

(6)ブラジルでの黄熱流行状況
ブラジル南部では昨年末から黄熱の流行が発生しており、4月中旬までに患者数は2400人以上(疑いも含む)になりました(米州保健機関 2017-4-17)。このうち320人以上が死亡しています。患者発生の多かったミナス・ジェライス州では4月になり流行は鎮静化していますが、隣接するエスプリト・サント州やリオデジャネイロ州で患者数が増加傾向にあります。なお、一部の中南米諸国では、ブラジルからの入国者に黄熱ワクチンの接種証明書の提示を求めています(ProMED 2016-3-26)。
 

・日本国内での輸入感染症の発生状況(2017年3月6日~2017年4月9日)
最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査を参考に作成しました。出典:http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2017.html

1)経口感染症:輸入例としては細菌性赤痢5例、腸管出血性大腸菌感染症16例、腸・パラチフス5例、アメーバ赤痢4例、A型肝炎9例、ジアルジア3例が報告されています。腸管出血性大腸菌感染症は前月(5例)から大幅に増加し、エジプトでの感染が3例と多くなっています。また、A型肝炎の2例はスペインでの感染で、同国滞在中も飲食物への注意が必要です。

2)蚊が媒介する感染症:デング熱は輸入例が29例で、前月(3例)から大幅に増加しました。感染国はフィリピン、インドネシアが各7例と多くなっています。なお、今年のデング熱の累積患者数は60例で、昨年同時期(99例)に比べて減少しています。これは今年の東南アジアでの患者数の少ないことが関係している可能性もあります。マラリアは2例で、アフリカ(シエラレオネ、ガボン)での感染でした。

3)その他の感染症:麻疹の輸入例が10例報告されており、感染国はインドネシアが6例と多くなっています。
 

・今月の海外医療トピックス
4月24-30日は世界予防接種週間
世界予防接種週間はWHOが公式に規定する8つの公共保健キャンペーンの一つです。
今年のテーマは“#VaccinesWork”です。従来のテーマとの違いは#(ハッシュタグ)が付与されていることに気がつきます。TwitterやFacebookなどのソーシャルネットワークで特定のイベントに対して言葉やスペースの無いフレーズの前にハッシュ記号をつけることで活発化な議論につなげることがねらいかと思われます。以下のサイトでは様々な情報が提供されていますが、そのなかで「毎年世界中で1億1600万人の子供たちがDPTやポリオ、MMRなどの定期接種を受けているが、1940万人が未接種であり、そのうちの60%がインドやナイジェリアなどの10カ国に住むこどもたちである」と記載されています。ワクチン未接種の子供たちやその家庭は、ソーシャルネットワークへアクセスすることが困難と思われますが、このキャンペーンがそのギャップの解消につながることが期待されます。兼任講師 古賀才博
参考 http://www.who.int/campaigns/immunization-week/2017/en/ 
 

・渡航者医療センターからのお知らせ

1)第18回渡航医学実用セミナー(当センター主催)
当センターでは、渡航医学に関連するテーマのセミナーを定期的に開催しています。今回は「海外渡航者の麻疹対策」や「海外勤務者と労災保険」などをテーマに、下記の日程で開催します。
・日時:2017年6月29日(木曜) 午後2時~ ・場所:東京医科大学病院6階 臨床講堂
プログラムや申し込み方法などの詳細は次号の本メルマガや、当センターのホームページでお知らせします。http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/tokou/seminar.html
2)渡航者医療センターが「海外健康生活Q&A」を出版
渡航者医療センターでは、経団連出版から「海外健康生活Q&A」を出版しました。当センターに蓄積された海外渡航者向けの健康情報が満載されています。海外赴任者や帯同家族の健康ガイドとしてご活用ください。詳細は下記をご覧ください。https://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/public/book/index.php?mode=show&seq=464&fl=2