HIS、違法残業で強制捜査-JATA「業界全体で見直しを」

  • 2017年2月1日

 エイチ・アイ・エス(HIS)は1月31日、同社で労使協定の上限を超える残業があり、東京労働局が労働基準法違反の疑いで同社と複数の幹部社員を書類送検する方針を固めたとの報道を受け、公式ウェブサイトで謝罪した。「ご関係の皆様方に多大なるご心配をお掛けしたことを、深くお詫び申し上げます」と述べるとともに、「労働環境の改善に向けて引き続き全力で取り組んでまいります」とコメントしている。日本旅行業協会(JATA)などによれば、旅行会社が過重労働に関して書類送検されるケースは例がないという。

 本誌の取材に応えたHIS広報担当によれば、労働基準法に違反していたのは新宿本社のスタッフ1名と、法人団体事業部のスタッフ1名。それぞれ2015年4月から16年3月までの間に、新宿本社のスタッフは最大で月に110時間、法人団体事業部のスタッフは最大で月に135時間の残業をしていたという。同社の労使協定では1年間のうち残業時間を42時間までとする月を6ヶ月、78時間までとする月を6ヶ月設定。部署ごとに繁忙期と閑散期にあわせて選択している。ちなみに現在は労働組合はなく、各部門の代表者などが現場の意見を吸い上げて協議しているという。

 労働基準法では第32条で、勤務時間を原則として1週間40時間まで、1日8時間までと規定。これらの時間を超えて勤務させるためには、残業の上限時間を定める労使協定(36協定)を結ぶ必要があり、協定を結ばずに残業させたり、協定で定めた時間を超えて残業させたりした場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となる。

 同社は16年3月に東京都労働局から指摘を受け、任意で調査に協力。その後7月に、厚生労働省が15年に新設した「過重労働撲滅特別対策班」による強制捜査を受けた。是正勧告は14年から16年にかけて、5回あったという。

 16年4月には当時の代表取締役社長だった平林朗氏をプロジェクトリーダーとする社内プロジェクトを立ち上げ、社内全体への36協定の周知徹底、労働時間の管理、営業時間の短縮、人員体制の整備、予約システムの簡素化による業務効率化などを推進。取り組みの結果、従業員の1月あたりの平均残業時間は15年度の44.5時間から、16年度は30.4時間に短縮したという。

 また、HISグループのCSRレポートによれば有給取得日数も徐々に増加しており、15年度が8.27日だったところ、16年度は8.45日に伸長。同社広報担当は本誌に対し、「違反は2015年4月から16年3月までのものであり、2016年については改善が見られている」と強調した。

 なお、本誌の取材に応えたJATAは今回の報道について「旅行業界は一般的に長時間労働が多い。1社だけの問題ではないので、業界全体で働き方や休み方を見直す機会としたい」とコメントしている。