外国人目線の広域観光促進を-ツーリズムEXPO訪日シンポ

地方にこそ日本の自然や文化の魅力が
価値を理解し、体制整備や情報発信を

地域の魅力をまずは地元が理解
精神的・文化的な訴求も


パネルディスカッションの様子  シンポジウムの後半はパネルディスカッションを実施。訪日外国人旅行者の地方への誘致、広域観光の促進をテーマに議論をおこなった。平田氏は広域観光の先進市場である韓国、香港、台湾では地方への誘致が進んでいると説明。日本における今後のさらなる地方への誘客について、各パネリストに意見を求めた。

 多田氏は目的意識の高い観光客とそうでない観光客、団体と個人のどちらを対象とするのか、ターゲットを絞ることが必要と主張。また、プロモーション活動だけにとどまらず、宿泊関係者向けの外国人対応研修など、受入体制の整備が重要になるとの考えを示した。

 高岡氏は美観に対する配慮などについて言及し、「地元の人々がその土地の価値をいかに理解しているかが重要」と述べた。また、外国人観光客はその場でしか味わえない雰囲気を大事にするとの見方を示し、必要以上の看板は設置しないなど、その土地にしかない雰囲気を際立たせる工夫が必要と語った。

 吉村氏は地域への誘客のためのプロモーション活動について、その地域にしかない魅力を広告などでわかりやすくアピールすることの重要性を主張。また、各国の市場のニーズに合わせたマーケティングをおこなうことを提唱した。加えて「地方への誘客には自治体が推進役となり、複数の企業が連携することが必要」と説いた。

 後藤氏は「地方にこそ日本の自然や文化などの魅力がある」と述べ、「そのことを各地域がまず認識することが必要」と強調。2005年の設立当初の九州観光推進機構における、県レベルの連携の難しさについても言及し、各地域が急速に連携することは難しいとしながらも「一体となり取り組むことの価値を、活動を通して証明していかなければならない」と述べた。

 この日のパネルディスカッションでは、今年の6月に観光庁が制定した7つの広域観光周遊ルートに対する意見交換も実施。後藤氏は「外国人は、日本人が持ちがちな地方に対するネガティブな固定観念を持たない傾向が強い」と指摘し、「魅力的な素材があれば率直な評価が得られる」との見解を示した。

 多田氏は個人旅行者のためのアクセスの改善、高岡氏は菜食やハラールといった食習慣への対応などを課題として挙げた。吉村氏は今後のインバウンドの課題として「リピーターの増加」と「観光資源や受入地のサービスの品質の向上」の2つを挙げ、各地域は外国人に対して精神的、文化的な魅力を訴求すべきだと主張した。