旅館協、生産性向上めざし協議会開催-モデル施設8軒を設定

  • 2015年10月4日

第1回会合の様子 日本旅館協会は10月1日、「第1回旅館ホテル生産性向上協議会」を開催した。宿泊業が抱えるサービスのさらなる向上と人手不足の解消などの課題に対し、官民一体で取り組みを進めていくもの。今回は同協会に加え、内閣府や国土交通省、観光庁、日本経済団体連合会(経団連)、日本生産性本部などから約30名が参加し、協議会の趣旨の説明や意見交換、経営コンサルタントによる講演会などを実施した。

 第1回会合では、冒頭で登壇した同協会会長の針谷了氏が「長時間労働をなくし、待遇を改善して優秀な人材を旅館ホテル業に迎えたい」と語るとともに「生産性の向上について、一生懸命取り組んでいきたい」と意気込みを述べた。また、国土交通省政務官のうえの賢一郎氏は「サービス業の生産性についてはまだまだ改善すべき余地があり、なかでも旅館ホテル業は生産性の改善を大きくはかれる分野」と説明。訪日外国人旅行者が増加するなか「日本の宿泊施設は大変高い評価と満足度を得ている。今後さらに頑張ってもらえるような環境を整えていくことが重要」と強調した。

 「旅館ホテル生産性向上協議会」は6月18日に総理官邸で開催された「第1回サービス業の生産性向上協議会(5分野共同)」を踏まえ、日本旅館協会が中心となって発足したもの。宿泊業、道路貨物運送業、飲食業、小売業、介護の5分野の業界団体が出席し、サービス業の生産性向上をはかる取り組みなどを発表した。同協議会では内閣総理大臣の安倍晋三氏が「労働力不足の克服がアベノミクスの最大の課題」とし、「課題を乗り越えるためには、生産性の向上しかない。なかでも我が国の雇用の7割を担うサービス業は、飛躍的に生産性を高める潜在的な力を秘めている」と期待を示した。

 5分野共同の協議会を受けて、日本旅館協会では生産性向上のモデルとなる「モデル旅館ホテル」を募集。30室未満の「小規模旅館」、30室以上100室未満の「中規模旅館」、100室以上の「大規模旅館」、「ビジネスホテル」の4カテゴリで計8軒選定した。

 第1回会合では、事務局が今後のスケジュールを発表。2016年1月から、日本生産性本部が大規模、中規模、小規模、ビジネスホテルの順に、無料でコンサルティングを実施する。各施設はコンサルティングを受け、生産性向上に向けた取り組みをおこなっていくことになる。16年5月の第2回協議会で中間報告をおこない、10月に開催する第3回協議会で最終的な取りまとめをおこなう計画だ。なお、生産性向上に向けた取り組みについては、日本旅館協会や観光庁が、補助金などの金銭的なサポートの可能性について模索しているという。

 このほか、会合では、モデル旅館ホテルの8軒の代表者がそれぞれの抱える課題について意見を述べた。各施設からは、宿泊施設周辺の人口減少などで人材確保が難しく、「人手不足で予約が取れない状況になっている」という声や、1人がフロントから予約、接客までこなす必要があるなか、「いかに人材育成をおこない生産性を上げていくのかが課題」といった声が挙がった。また、繁忙期と閑散期の差が大きいため、需要を標準化する必要性があるとの意見も出された。このほか、訪日外国人旅行者が増加している旅館からは、外国人旅行者が夕食を頼まないケースが多いことから「チェックインは120名、夕食は60名、朝食は80名といったように人数にばらつきが出るため、現場のオペレーションが組みにくい」といった声も挙がった。

 なお、モデル旅館8軒の詳細は以下のとおり。


▽モデル旅館ホテル

・小規模旅館
綿善旅館/京都府
山口旅館/熊本県

・中規模旅館
長栄館/岩手県
あぶらや燈千/長野県

・大規模旅館
観月苑/北海道
小豆島国際ホテル/香川県は

・ビジネスホテル
芝大門ホテル/東京都
ホテル松風/愛知県