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多様化するシニア-現在~次の世代のマーケティング、JTBFシンポジウム

  • 2013年8月29日

注目はおひとり様
個人に旅行に行ってもらうためには

JTBF主任研究員の黒須宏志氏

 シニア化する社会で注目するべきは、「おひとり様」。団塊世代は実は独身者が多く、離婚率も高い。パートナーの死別等もあり、単身者が増えていくのは確実で、東京の60代の女性の単身世帯は2020年には現在より1割増えて、245万世帯になるという。さらに次の世代になるほど未婚が増えており、高橋氏は「全体のパイが減っていく中、おひとり様を取り込まないと商売として成り立たない」と指摘する。

 高橋氏によると、単身者は社会的なつながりを持っている人が多い。例えば同性同士の飲み会の参加率は、60代の女性の場合9%だが、単身世帯に限ると13%に拡大する。女性の方が仲間作りが上手いので、「今後は男性のネットワークを作りがポイントで、そのカギはインターネットにある。仕事で使用していた男性は、親和性が高い」と対応を促す。

 三浦氏はインターネットの可能性として、四国のある地域の事例を紹介。過疎地でのコミュニティづくりの一環としてフェイスブックのグループを作ったところ、一人が「飲み始めました」と投稿をしたのを見てその場に来る仲間が増えていったという。このことから「SNSが孤独になりがちなおひとり様をつなげる力がある。仲間ができると飲みに行こう、旅行に行こう、と消費が伸びる」とその効果を示す。

 すでにインターネット上ではこのような機会を提供する旅行サービス「トリッピース」がある。会員が旅のアイディアを投稿し、賛同者が集まるとツアーが実現するというソーシャル旅行サービスだ。若者向けのイメージがあるが、黒須氏によると、メディアでの紹介を機にシニアにも広まり、ニーズが顕在化した。「会員制だが組織化はしない。独立した個人が、ゆるく結び付けられる場という考え方が、シニアに受けている」という。

 なお、黒須氏はおひとり様の旅行の可能性として、「住む場所を変えるような滞在型の旅行」や「仲間を求める旅」を提案。例えば「仲間を求める旅」では、地域密着型の旅行でゲストとホストの関係を超えた考え方をすることで、新しいチャンスが増えるのではないかとの考えを述べた。




今のシニアから次の世代の特徴を探す

 黒須氏が旅行会社に聞き取り調査をしたところ、現在のシニア層のなかでも「上の世代と下の世代で違いがある」という意見が聞かれたという。「下の世代ほどイエス・ノーが明確」「今まで売れていたパッケージが売れない」など、団塊世代がシニア層に入り、ひとくくりでシニアを語れなくなった状況に、旅行会社も気が付いている。

 三浦氏は「団塊世代の次は新人類、団塊ジュニアがシニアになる。今より多様化するシニア層になっていくが、そのときに、次の世代の芽を探すことも重要」と指摘。「今の革新的なシニアの中に次のシニアの芽があるはず。次につながるものを検証しながらビジネスを進めていくことが大切だ」とアドバイスする。

 また、高橋氏はシニアのマーケティングでは、「コミュニケート」「コネクト」「コ・クリエイト(共創)」の3つの「C」が重要だと語る。「商品の提供側は、(年齢的に)シニアを体験できない。わからないならコミュニケーションをとって、ニーズを聞くことが大切」というのがその理由。積極的にシニアと接点を持ち、アイディアを得て、ニーズに合った商品を共に作っていくことが、シニア対策で必要になってくるだろう。