アクセスランキング、1位は震災関連倒産-間接被害の回避に向けて

  • 2011年5月21日
 今週のアクセスランキング1位は、帝国データバンクが発表した震災関連倒産の調査結果についての記事でした。宿泊施設の倒産は全体の26.4%となる12社で、全業種で最も多いといいます。全体では1日1.4社のペースで倒産が発生しているといいますから、今後も増えてしまう可能性は十分にあるでしょう。全体として、東日本大震災の直接的な影響よりも消費自粛など間接的な理由で倒産する会社が多いそうです。

 物理的には被害を受けていないのに立ち行かなくなった無念さはいかばかりか、そう思うと胸が詰まります。先日掲載した東北の旅行業界についての記事(◆リンク)の中で、福島ツーリストサービス代表取締役社長の斎藤修氏は「間接被害であれば立ち直るチャンスがある」と話され、融資の枠組みや行政などによる地元旅行会社への優先発注を訴えられました。優先発注は融資よりも実現が困難ですが、このような状況ですから少なくとも是非についての議論はあっても良いのではないかと思います。

 また、間接被害の回避という意味では、当然ながら需要が最大のチャンスですが、3位の記事で紹介したツーリズム・マーケティング研究所(JTM)の調査結果では自粛傾向が薄れつつあるといいます。特に、「夏休みに旅行をしたくない/旅行はしないと思う」との回答は全体の8.4%であったそうで、夏の需要への期待が高まります。JTMの調査はサンプル数が500名ですし、首都圏、中京圏、関西圏のみが対象ですので、日本全体の動向を正確に表しているとは言いがたいですが、実際に東京で生活している身としては、たしかに感覚として日常が戻りつつあるように感じます。

 昨日地震が起きましたが、揺れている最中に社内の誰かが“久しぶり”であることを指摘していました。少し前まで毎日のような余震に怯えていたことからすれば、随分な変化だろうと思います。コンビニの棚も、いつの間にか商品で埋まるようになりました。また、昨日表参道で会食する機会がありましたが、会場のレストランはほとんど席が埋まっていたように記憶しています。こうした「普通」が知らず知らずに戻ってくれば、旅行需要も自然と回復してくるのではないかと思います。

 一方で、日常が戻るのに合わせて、これまで日本全体で共有していた被災地への思いやりが薄れてしまうことは懸念しています。ゴールデンウィークには間際需要もあって多くの人が東北を訪れたようですが、東北に行こう、東北を旅行で応援しようという意識が働いていたことは間違いないでしょう。

 しかし、今後徐々に日常生活が当たり前になり、テレビや新聞でも被災地のニュースが少なくなり、日々の仕事や飲み会、遊びなど、自らの生活に関心が移っていけば、被災地への思いやりが心に占める割合は下がっていくはずです。地震が過去のものになり、被災者は“他人”になっていく。そうなってしまえば、新たな間接被害が起きかねません。その意味では、東北への旅行の意義をアピールし続けていくことも、旅行業界や旅行会社の大事な役割だろうと思います。(松本)


▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2011年5月第3週:5月16日2時〜5月20日18時)
第1位
震災関連倒産、ホテル、旅館は最多の12社に-消費の自粛響き(11/05/16)
 ◆4月倒産件数、旅行業は5件、うち震災影響1件-宿泊業も増加(11/05/17)
 ◆東北海外旅行が特別清算へ-震災影響で廃業決定(11/05/18)
 ◆大阪の第2種、明星コーポレーションが営業停止-国内メインの取扱い(11/05/16)

第2位
3月の海外旅行取扱額、HISがJTB14社抜き1位に-主要61社は1割減(11/05/19)

第3位
「自粛」すでに見られず、夏の旅行に影響は2%未満-JTMが意識調査(11/05/18)

第4位
震災後の海外旅行市場、FITから回復-夏商戦は長期で割安な旅行提案を(11/05/17)

第5位
デルタ航空、スカイマークとマイレージ提携、DL顧客が国内線利用可能に(11/05/18)

第6位
取材ノート:震災後の観光産業は一気に変化-緊急未来対策ミーティングより(11/05/16)

第7位
ANAセールス社長に現NH名古屋支店長の稲岡氏-全日空役員体制(11/05/19)

第8位
スカイネットアジア航空、新ブランド「ソラシドエア」に-7月1日付けで(11/05/17)

第9位
日本/香港航空協議開催へ-成田自由化、首都圏以外の以遠権焦点に(11/05/16)

第10位
全日空、エズニス航空と戦略的パートナーシップを締結、スタッフ派遣など(11/05/16)