ハワイ体験レポート:ワイキキ歴史街道を巡る

  • 2011年3月10日
歴史あふれるワイキキの新たな魅力を知る
〜先史時代から現代に至る歴史街道ウォーキングツアー〜


 リピーターを中心に、ハワイの文化・歴史との出会いを求めてハワイを訪問する観光客も少なくない。そんななか、日本人観光客ばかりか現地在住者の間でも注目を集めているのが、ハワイを知り尽くした日本人ガイドがワイキキの歴史的スポットを案内する、ワイキキ歴史街道日本語ツアーだ。ワイキキを回りながら歴史を感じさせる遺物を実際に見たり、ハワイ原産の植物に手を触れたりしながら、先史時代から現代までのワイキキの歴史を学ぶことができるウォーキングツアーならではの魅力をレポートする。
                    
                    
地元ハワイアン団体のツアーとしてスタート

 ワイキキ歴史街道日本語ツアーは元々、ハワイ文化・伝統への理解促進を目的としたネイティブ・ハワイアン・ホスピタリティ・アソシエーションが、2001年にはじめた歴史ツアーから派生したものだ。英語の歴史ツアーの日本語版を、同アソシエーションの依頼を受けてサユリ・ロバーツさんが2004年にスタート。サユリさんは2002年、結婚を機にハワイに移住し、そもそもは客としての立場で参加したのが歴史ツアーとの出会いだったとのこと。日本では英語教師をしていたサユリさんにとって、英語ツアーは十分楽しいものだったが、その際、ツアーガイドから「英語でのツアーなので、一般の日本人客は途中で抜けてしまう人が多い。日本語ツアーの手助けをしてほしい」とのリクエストを受け、日本語ツアーが始まったそうだ。そして2005年に英語ツアーが終了した後も、サユリさんが独立して引き継ぐ形で日本語ツアーを続け、現在に至っている。

 「ワイキキだけでなくハワイの歴史や文化が学べる人気のツアーだっただけに、それが終わってしまったのは残念でした。それでは、私一人でも続けていこうと決意し、アソシエーションからも快諾をもらい、翌年から独自の日本語ツアーをはじめました」(サユリさん)とのこと。

 今では日本からの観光客だけでなくハワイ在住者の参加も少なくないとのことで、ハワイ在住50年の女性が勉強になったと、喜んでくれたこともある。また地元小学校の依頼で英語ツアーを実施したこともあるそうで、ツアー内容の質の高さがうかがえる。

 ツアーは毎週木曜日の朝9時から11時までの2時間、予約制で実施。この日は集合場所のワイキキ・ビジネス・プラザ前に、日本からのファミリー、ハワイ在住者など8人が集まった。サユリさんははじめに、最近造られたリゾート地というイメージの強いワイキキが、実は500年もの歴史に彩られた土地であることを強調すべく、先史時代のワイキキのイラストや19世紀以降の写真などを複数見せてくれた。昔ワイキキには湿地帯が広がりタロイモ畑もあったこと、王族も多く住んでいたことなどを説明し、「今日はそのワイキキの500年の歴史の足跡を見ていきます」との言葉に、参加者の目が輝く。いよいよ2時間のウォーキングツアーのスタートだ。


ワイキキ500年の歴史の足跡を訪問

 最初に向かったのは、集合場所の向かいにあるロイヤル・ハワイアン・センター。中庭でタロイモやハラの木、ノニ、バナナやその花などハワイの植物を見ながら、その利用方法や薬草としての効能を聞く。ハワイには85種以上のタロイモがあったことや、身体によいノニのジュースの作り方、ただしノニジュースは正露丸を酢で割ったような味であることなど、サユリさんのユニークな説明に、参加者は一様にメモを取ったり写真を撮ったり、質問を浴びせたりと忙しい。

 次いで隣接のホテル、ロイヤル・ハワイアンへ。一帯には昔オアフの王族が住み、酋長の椰子園が広がっていたことなどを聞き、またホテル前のビーチでも、そこにビッグ・アイランド(ハワイ島)からカメハメハ大王軍のカヌーが大挙して押し寄せたことなどを説明するサユリさん。ツアー中、「椰子の木の寿命はどれくらいでしょう?」「ダイヤモンド・ヘッドという名の由来は?」「それ以前のハワイ語の名は?」などクイズがたびたび出されるので、参加者全員がグループから離れることなく、集中してサユリさんの話に耳を傾けていた。

 次に向かったのはアウトリガー・ワイキキ・オン・ザ・ビーチ。ロビーに展示されている19世紀建造のアウトリガー・カヌーを見たり、航海図を見ながら、ポリネシア人の大移動や古代ハワイアンの航海術の説明を受ける。またロビーのガラスケースに並ぶ、一帯から出土したという先史時代の生活用品も見学した。

 続いて観光客で賑わうインターナショナル・マーケットプレイスへ。以前その地にはハワイ王朝6代目のルナリロ王の別荘があったことに加え、ルナリロ王が死後、カメハメハ4世の未亡人のエマ女王に別荘を残したことで広まった2人のロマンスの噂などにまつわる説明に、参加者は興味津々だ。

 その後は隣に位置する、王女カイウラニの屋敷跡に建てられたというシェラトン・プリンセス・カイウラニや、その向かいにあるハワイ王朝7代目のカラカウア王の別荘の跡地に造られたショッピングエリア、キングズ・ビレッジなど数々のスポットを巡りながら、ワイキキの昔の様子や王朝時代の華麗な人間ドラマに耳を傾け、いにしえのワイキキに想いを馳せた。

 いよいよツアーも終盤。クヒオビーチでは不思議なマナ(霊力)が宿るとされ、今評判のパワースポットのひとつといわれているカパエマフ−ヒーリング・ストーン(カフナストーン)を訪問。最後にハワイ最古の大型ホテルであるモアナ・サーフライダー・ウェスティン・リゾート&スパを訪れ、同リゾートが建設された1901年はじめから1930年頃の古き良き船旅時代のハワイの様子を聞いて解散となった。



ワイキキを超えてハワイの歴史も学ぶ

 2時間のツアーを通じてのサユリさんの解説は、昔のハワイの生活様式、植物、ハワイ王朝の話など含め、ワイキキにとどまらずハワイ全体、ひいてはポリネシアの文化・歴史にまで及び、興味深い。しかもその語り口は楽しく軽快で、次々繰り出されるユニークなクイズもあり、2時間があっという間。歴史のドラマの展開されたまさにその場所に立ち、ホテルやショッピングセンターの展示物もうまく使って、古代の足跡を目の当たりにしながら学べるのもこのツアーの魅力だ。

 ツアーで配慮することとしては、「ハワイ初心者の方でもわかりやすい内容を心がけ、ツアーのなかにクイズを盛り込むなど工夫をしてみた。一方的に話すだけでは、どうしても話が耳から抜けてしまうので」と説明してくれたサユリさん。その結果、以前はシニア層の参加が中心だったが、今ではフラを親しむ人や家族連れなど、参加者の幅は確実に広がってきているという。参加者のペースに合わせて巡る徒歩ツアーなので、ベビーカーを押しながらの参加も大歓迎とのこと。これまで知らなかったハワイの過去を知り、歴史のエキスパートになったかのような気分に浸れるこのツアーは、小学生高学年以上の子どもたちにも十分楽しめると思う。

 なお、今年1月からは徒歩ツアーの後にランチを楽しみながらのハワイアンフード講座も登場し、こちらも好評とか。ダウンタウンを巡る歴史街道日本語ツアーと合わせ、半日でハワイの歴史を体感できるこれらウォーキングツアーを、ハワイ初心者はもとよりリピーターにもぜひすすめたい。

 なお、ワイキキ歴史街道日本語ツアーは、4月から催行日が月曜日と木曜日の週2回となるほか、5月9日以降、ウォーキングツアー後にクラフト手作り体験を加えた新たな内容にリニューアルする予定だ。


今週のハワイ50選
ワイキキ(オアフ島)
ダイヤモンド・ヘッド(オアフ島)
カメハメハ大王(全島)
ハワイアンフード(全島)



取材:森出じゅん