アクセスランキング、1位は全日空LCC、JATA経営フォーラム分科会も

  • 2011年2月19日
[総評] 今週のアクセスランキング1位は、全日空(NH)の格安航空(LCC)事業についての記事でした。同事業を担うA&F・Aviationの代表取締役CEOに就任した井上眞一氏は、大手の半額程度という「圧倒的な低運賃」を武器に、就航から5年後に年間旅客数を600万人に拡大する考えを示されています。国土交通省によると、国内の航空会社の旅客数は2009年度(2009年4月〜2010年3月)の内際合計で9933万5536人といいます。600万人は6%程度に過ぎませんが、航空会社間の少なからず競争の激化が予測されます。

 7位に入った、2月15日のJATA経営フォーラム2011の分科会では、LCCと旅行会社の共存の可能性を探るパネルディスカッションが実施されました。ディスカッションに先駆けてプレゼンテーションを実施した航空経営研究所の牛場春夫氏によると、井上氏も手本にするというライアンエアー(FR)の場合、全旅客のうち既存航空会社の旅客の取り込みが約4割、車や鉄道などからが約2割で、新規需要の創造が約4割とのことです。

 この割合を600万人に当てはめて単純計算すると、240万人はもともと他の航空会社を利用していた旅客ということになります。日本で同じ割合になるとは限りませんが、奪い合いが増えることは間違いなく、その際は特にどのようにしてNHと棲み分けるかが課題となるでしょう。個人的には、国内線の基幹路線以外を新会社に集中していくこともあり得るのではないかと思っています。

 前述のパネルディスカッションで、パネリストとして登壇したエイチ・アイ・エス(HIS)執行役員仕入本部本部長のボビー・A・ハック氏は、LCCが旅行会社にとって「危機」であると断言する一方で、LCCの台頭は「旅行会社には止めることができない」とも語り、適切な関係を模索していると説明されました。個人的には、サプライヤー間の競争が激化すれば旅行会社のチャンスが増える可能性があると考えていますが、既存のビジネスモデルが通用しないだけでなく、市場自体を大きく変える可能性も秘めており、一筋縄ではいかなさそうです。

 一つ気になったのは、井上氏が「日本初のLCC」と表現された点です。例えばスカイマーク(BC)もLCCのような運航体制をとっていますし、井上氏が何をもって「LCC」とするのか、お考えを伺ってみたいところです。これも以前から書いてきましたが、実態としてLCCとフルサービスエアライン(FSA)の垣根が低くなる中で、定義の曖昧な「LCC」という言葉が独り歩きし、「LCCは安く旅行ができて、FSA(あるいは旅行会社)は高い」という概念が過度に一般化することが懸念されます。また、井上氏は、旅行会社経由の販売について、消費者に届く価格が高くならなければ取り組みたいとの考えを示されましたが、果たしてどのようなスキームがあり得るのか、こちらも気になるところです。(松本)


▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2011年2月第3週:2月14日2時〜2月18日18時)
第1位
全日空LCC、圧倒的低運賃で潜在需要開拓−井上社長、3年で黒字化に意欲(11/02/14)
A&F、運航機材はエアバスA320−200型機−今秋に初号機、約2年で10機受領へ(11/02/16)

第2位
ハワイアン航空、関空に就航へ、7月からデイリー−年間10万席増へ(11/02/15)

第3位
全日空、成田/成都線をデイリー運航へ、正規割引運賃を発売(11/02/16)

第4位
ベルリン、日本人訪問者数は15%増−ベルリン新空港への直行便就航に期待感(11/02/16)

第5位
デルタ航空、国際線長距離路線にプレミアムエコノミー座席導入−11年夏から(11/02/14)

第6位
中部、1月の国際線航空旅客数は2ヶ月連続で微減−発着回数は増加(11/02/15)

第7位
LCCとの共存に向け議論、ビジネスモデル変革圧力も−JATA経営フォーラム(11/02/16)

第8位
取材ノート:カナダ、業界重視の施策にシフト−いかに「期待」に応えるか(11/02/17)

第9位
楽天トラベル、10年営業利益100億円を達成−国際事業拡大へ意欲(11/02/16)

第10位
2010年の新聞広告、阪急が1位、6年連続−上位各社、クラツー以外は出稿量減(11/02/14)