取材ノート:静岡空港、2年目は70万人めざす−11年の台湾線定期便へ

  • 2010年8月10日
 2009年6月4日に富士山静岡空港(静岡空港)が開港して1年が経過した。世界的な経済不況や日本航空(JL)の撤退など厳しい状況が続く環境下で、1年間の旅客数や就航便数は予測値を下回る結果となった。そんななか、静岡県ではチャーターの誘致と定期便化への取り組み、インバウンドの取り込み、他の地方空港との連携など、さまざまな施策で利用者数の拡大に取り組んでいる。1年間の実績をふまえ、今後の利用促進に向けた方針を聞いた。
                    
                    
旅客数は予測値の半数未満−搭乗率は平均レベル

 静岡県文化・観光部国際・交流局空港利用政策課によると、2009年6月4日から2010年6月3日までの静岡空港の旅客数は国内線41万8742名、国際線21万5919名の計63万4661名となり、平成14年に静岡県空港需要等検討委員会が出した需要予測値の計138万人の半数にも達しない結果となった(上部・右表参照)。

 予測値を大幅に下回った要因として、空港利用政策課国内班長の小泉祐一郎氏は、世界的な経済状況の悪化により、就航便数が予測したほど伸びなかったこと、大型機材での就航を見込んでいたが、ボーイングB737-700型機とエンブラエルERJ170型機といった100席前後の小型機材での運航となったことをあげる。

 ただし、小松線や熊本線といった予測していなかった地域への路線開設もあり、想定外の需要を取り込むことができた。また、搭乗率は国内線で64.6%、国際線は67.6%、平均65.6%で、小泉氏は「地方路線としては平均レベルではないか」と、景気が低迷するなか堅調な動きを見せていると評価する。

 一方、国際線は需要予測では9方面に計32万人の需要を予測していたが、ソウル線はアシアナ航空(OZ)と大韓航空(KE)が1日1便ずつ計2便、上海線は中国東方航空(MU)の週4便(4月26日から週2便増便)にとどまった。国際チャーター便は計150本の運航となった。

 定期便のうちソウル線は好調に推移しており、搭乗者数は予測を大きく上回る17万7760人。搭乗率はOZが71.8%、KEが66.7%となった。エイチ・アイ・エス(HIS)中部営業本部によると、同社の静岡営業所でソウル旅行を申し込んだ消費者の約9割が静岡発を希望しており、静岡/ソウル線を利用したソウル旅行は浸透してきた感があるという。

 一方、MUの静岡/上海線の搭乗者数は1万9640人で、需要予測は上回ったものの搭乗率は50.5%とやや苦戦した。ただし、JTB中部によるとMUの増便により、中国への送客はグループを中心に伸びてきているという。


基本は既存路線の利用者の増加

 小泉氏によると、2年目はまず既存路線の利用者増をはかり、年間旅客数を70万人に近づけていく目標だ。同氏によると、静岡県内部で空港の存在は浸透してきているものの、空港を利用した静岡県民の数はまだそう多くない。今年1月29日から2月28日に県内の市役所、大型スーパーマーケットなどで実施した住民の認知度等調査によると、回答者1万6119人のうち空港があることを知らない人はわずか0.8%だったが、実際に利用したことがある人は8.8%にとどまった。

 静岡県では修学旅行をはじめ旅行の際に新幹線を利用する「新幹線文化」が根強く、小泉氏は「飛行機の利便性を十分に理解できていないのでは」と考える。今後は飛行機を利用した旅行を浸透させていくため、旅行会社に商品造成を促すとともに、新聞広告やチラシの作成などをタイアップし、飛行機での旅行の定番化をはかる。さらに、空港見学に訪れた観光客を対象に旅行相談会を実施するなど需要喚起に努め、着実に旅客数を増やしていく方針だ。


定期便化、新規路線開設に向けた取り組みも

 また、需要の高い台湾の定期路線の開設をねらう。まずはチャーター便による実績を拡大し、週に2、3便のプログラムチャーターの運航を促進していく。さらに、チャイナ・エアライン(CI)を中心に定期便運航化を働きかけていき、2011年度中の就航をめざす方針だ。

 開港から1年間で国際チャーター便は片道ベースで150本、そのうち112本が静岡/台湾間のチャーター便で、空港利用政策課によると需要も高く好調だったという。たとえばCIは1年間で約90本のチャーターを運航。乗客の6割がインバウンド、4割がアウトバウンドで、開港から2010年6月までの搭乗率は平均で80%を記録した。

 一方、新規就航路線の受け入れに備え、空港のインフラ整備もすすめている。2010年度から約6億円を投じて空港の西側に新たなエプロンを整備し、駐機スポットを3つ増設。供用開始は2011年度中を目標としている。静岡県交通基盤部空港局空港経営課によると、静岡空港には5つの駐機スポットがあるが、昼の時間帯にはソウル便、上海便に加え国内線3路線で5つすべてが埋まってしまっている。今回新たに増やす駐機スポットは小型機用で、国内線での利用となる計画だが、スポットに余裕ができることから新たな海外路線就航にも対応できるという。


インバウンドで他空港と連携、静岡/小松間で新ルートを設定

 静岡県ではインバウンドでの利用拡大にも積極的だ。静岡県文化・観光部観光局観光振興課課長の加藤博昭氏によると、開港後1年のインバウンドはおよそ5万人だが、2年目は2倍の10万人に増やしたい考えだ。重点市場として韓国、中国、台湾、香港の4つを設定。なかでもこれまでは定期便が就航している中国本土と韓国に注力して誘致策を展開してきたが、2年目はチャーター需要が高い台湾に対しても力を入れていく方針だ。

 また、静岡空港と他空港との連携も強化していく。加藤氏によると、静岡空港が人気のゴールデンルートを結ぶ成田や関空、中部の間に位置することから、静岡空港の単純往復だけでなく、静岡イン関空アウトなど他港と組みあわせたオープンジョーのツアーも多く、今後の展開が期待できるという。さらに、成田や羽田、関空の混雑空港へのチャーターは運航する際の調整に時間がかかることから、運航しやすい地方空港間で連携する動きも生まれているという。

 たとえば静岡/小松間ではインバウンド用の観光ルート「ドラマティック街道」を設定。「日本どまん中物語」をキャッチコピーに静岡県と富山県、石川県、長野県、山梨県が連携して実現したもので、富士山観光や御殿場アウトレットモール、立山黒部アルペンルート、兼六園などの見どころを組みあわせた。2009年から中国市場をターゲットにプロモーションを開始しており、今年5月にはMUを利用した小松イン静岡アウトの3本のツアーが催行。100名弱の観光客が参加したという。今年はターゲットを韓国市場にも広げ、新ルートの定着をはかる方針だ。


取材:栗本奈央子