インタビュー:ニュージーランド航空 国際線グループゼネラルマネージャー シムズ氏

  • 2008年6月11日
「世界36位の航空会社だからこそ常に新たなチャレンジを」
エアラインコンシェルジェ導入で、お客様目線のサービスを提供し期待される航空会社へ



 ニュージーランド航空は、日本市場に2005年夏頃から順次導入してきた3クラス体制のサービス拡充に加え、今年5月28日からサンフランシスコ線に「インターナショナル・エアライン・コンシェルジェ」の導入を開始し、航空業界として初のサービスに着手した。特に日本市場は、メインがレジャー市場であるが、差別化されたサービスに興味を持つ客層が多く、パシフィック・プレミアムが好評。次のビジネス・プレミアの乗客に繋がる期待も持っているという。世界ネットワークの日本市場の位置づけと今後の展開について、先ごろ開催されたトレンツで国際線グループゼネラルマネージャーのエド・シムズ氏に聞いた。(聞き手 本紙記者:秦野絵里香)


−世界の海外旅行市場をどのように受け止めていますか。そのなかで、ニュージーランド航空をどのように位置づけていますか

エド・シムズ氏(以下敬称略) 私たちは航空会社の世界市場の中で36位と、決して大きなエアラインではないが、このポジションを上げることに注力するつもりはない。ニュージーランドの人口はたった400万人であり、搭乗客の獲得という数の理論での戦いは、無意味に近いと思っている。しかし世界旅行市場の中で最も革新的であり、最も前向きな気持ちを持ち続けるエアラインでありたいと常に思っている。その結果の一例として、2005年の7月から導入した、「ビジネス・プレミア」「パシフィック・プレミアム」クラスの新サービスは、その独創性と、多くの創意工夫により、世界から高く評価され、スカイトラックなどの世界的な調査でも、非常に高い評価を獲得している。今後も、ただ「売上げ」「販売数」を追いかけるエアラインではなく、その内容でお客様から選ばれるエアラインをめざしていく。



−5月28日からサンフランシスコ線に導入した「インターナショナル・エアライン・コンシェルジェ」も、こうした戦略の一環ですか

シムズ 国際線全般で見ると、ファースト、ビジネスのクラスのロードファクターは5年前は40%程度だったが、ファーストを廃止し、現在のビジネス・プレミア、パシフィック・プレミアムを導入してから現在は80%まで増えてきた。そうなるとお客様全員に十分なケアをしきれなくなる。運航上で最も大切なのはお客様の安全なので、クルーはクルーの仕事や役割を全うし、そのほかの部分をケアするコンシェルジェを作ったのだ。

 3000人の応募の中から35人を選び、6週間のインセンティブトレーニングを実施。上海線以外はクルーもコンシェルジェも、どのデスティネーションに行っても大丈夫なように訓練をしている。また、コンシェルジェは現地では2泊し、1泊目は休息、2泊目は現地の新しい情報を得るための日としている。ガイドブックでは紹介されていないホテルやアクテビティの紹介のほか、飛行機が遅れた時には搭乗ゲートでお客様と一緒に待つなど、必ず「お客様と同じ」という考えで、どのクラスのお客様に対しても同じサービスを提供するのが、コンシェルジェの役割だ。



−日本路線への導入予定はありますか。また、コンシェルジュ以外で、日本路線で新サービスの導入や強化した部分はありますか

シムズ まずはサンフランシスコ線への導入となったが、日本路線は今のところ10月、11月頃の導入を予定している。日本語を話し、日本の知識を身につける必要があるからで、準備期間を設け、予習をして、しっかりとしたサービスを提供したい。

 また、今年の下期から、関空路線の767型機内のインテリアを一新する。エコノミークラスにもボーイングB777型機と同様に、パーソナルテレビを取り付け、エンターテイメントを楽しめるようにする。また、成田路線ではNZが運航する機材のうち最も新しいB777−200型機を使用している。こちらでは、現在18席のパシフィック・プレミアムクラスを来年4月以降に、2倍に増やしたいと考えている。

 日本路線に限ったことではないが、2010年にはB777−300型機、2012年には長距離用のB787−900型機の導入を決定しており、シカゴやブエノスアイレスなどへ就航させたいと考えている。特にプレミアムクラスはシート、トイレ、サービスなどを全く新しいものにしたい。成田線に導入するのであれば、787−900型機は座席数が266席しかないので、スロットがもらうことができれば1日2便体制にしたいと思っている。




−このところ日本市場が伸び悩んでいます。アジア市場の変化をどのように受け止めていらっしゃいますか

シムズ NZが注視するマーケットは、オーストラリア、イギリス、アメリカ、日本、中国の5つ。これらは全て伸びて欲しいマーケットであり、重要だと位置付けている。この中で、アジア市場では中国市場で香港に加えて、一昨年から上海、さらに今年の7月から北京線就航が決定し、規模を拡大しているが、日本も重要であることには変わりはない。

 ニュージーランドへの日本人訪問者数は、ピーク時には17万人ほどを記録していたが、今は約12万人に下がっている。しかし、日本市場は過去も未来も非常に有望であり、多くの期待を持っている。また、日本は収益性の高い路線なので、例えば新機材や、よりよいサービスを導入していて適正な座席供給をし、2010年、2011年には14万人から15万人市場へ戻したいと思っている。現在は様々な要因で、ニュージーランドへの訪問者数そのものが低迷気味であるものの、近い将来、特に日本市場に関しては、増加傾向に転じることを確信している。



−中国やインドの旅行市場が伸びてきていますが、ニュージーランド航空への影響はどれほどあると思われますか

シムズ 現在の市場規模は、1位オーストラリア、2位イギリス、3位アメリカという順位だが、中国からニュージーランドへの渡航に関しては、近い将来に年間25万人の渡航者数に達し、渡航者数が3番目に多い就航地となることを予測している。また、現在運航している香港線、上海線に加え、この7月から北京線を新設することで、今後中国からニュージーランドへのビジネスおよび、レジャーマーケットの双方が力強く伸びることを期待している。特に新設される北京線に関しては、富裕層および、在中外国人の需要が見込まれ、必ず成功すると確信している。インド市場も非常に前向きに考えている。NZが計画する20以上の新規就航希望地のなかで、インドへの進出は強い関心を持っている。



−現在注目しているデスティネーション、また今後新たに就航したいデスティネーションはありますか?

シムズ アメリカのシカゴは市場性が高く、期待できるデスティネーションであると感じているほか、インドのムンバイ、南アフリカのヨハネスブルグ、南アメリカのブエノスアイレス、ブラジルのサンパウロなどにも興味がある。特にサンパウロは日本移民が多いので、成田/オークランド線をサンパウロに繋ぐことができたら非常に興味深いだろうし、期待したい。


ありがとうございました。