アメリカン航空、UAに追随−1割ほどの影響も対応検討、次はGDS/CRSコストが焦点
アメリカン航空(AA)日本地区旅客営業本部長の稲場則夫氏がトラベルビジョンの取材に応じ、5月13日付けで旅行会社に対し、7月1日以降の日本国内で発券する航空券の発券手数料を現在の5%から3%とすることを正式に書面で通知することを認めた。ユナイテッド航空(UA)の同様の施策に追随するもので、米系から日系への波及が焦点になりつつある。
稲場氏は、旅行会社へ説明を開始したことを明らかにし、「7%から5%へ変更した時と比べ、(旅行会社が発券手数料の削減に対する)準備はできているのではないか」との認識を示す。すでに前回の発券手数料率を削減した2006年にも、旅行会社に対して影響を押さえる対策として、セクターボーナス、NET価格の提供など旅行会社別に提案をしており、「レギュラーコミッションで影響が出るケースは、前回と比べ少ないのでは」との見方だ。AAとして、取り巻くビジネス環境について、「燃油価格が上昇すると、本国で上場する株価が低迷していく」ことに触れつつ、「燃油サーチャージで片道2万円、往復で約4万円を徴収しても、燃油費全体の約30%しか補填できない」と厳しさを表現する。「(本社の決算では)累積負債もあり、コミッションにも手をつけざるをえない」という。ただし、こうした状況について、AAの営業担当者らで旅行各社に事情説明し、個別の対応をとる。
ただし、今回の発券手数料率の削減で影響を受ける旅行会社もある。影響度とその対応について稲場氏は、「おおよそ1割を占めるKクラス、LクラスのPEX運賃とフルノーマル運賃。これを販売していただける場合、AAとしても優遇策を打ち出したい」とコメントし、AAへの販売を傾斜する旅行会社への還元策を打ち出したいという。例えば、往路はAA、復路は他社を利用する場合、AAプレートで発券する場合は3%で、他社では5%となり、他社の場合のコミッションが高く発券がAAプレートで無くなることも想定。こうした場合の旅程でもAAで発券、ボリュームを確保する旅行会社に対しては、インセンティブ、あるいはNET価格の提供などで、旅行会社にメリットある提示をする方針だ。
▽今後はコミッションからGDSのセグメントフィーの軽減へ
稲場氏は、今後の経費削減の方向性にも言及。経費はコミッション、インセンティブ、企業契約の割引、GDS/CRSのセグメントフィーが大きくあるが、「今後はGDS/CRSがポイントになる」との考えだ。旅行会社へのコミッションは7月1日付けで削減するが、稲場氏が語るように1割程度とAAは大きなコスト削減を見込んでいない模様。それに対し、GDS/CRSのコスト削減は端緒についたばかり。「GDS/CRS別に1セグメントを比較した場合、最低価格は3ドル70セントから7ドル20セントと大きな開きがある。ダラスへの往復でも、4.5セグメント、それに加えてトランスアクションフィーの10セントを加算すると、1PNRで5000円ほど」のコストといい、これを削減すると億円単位の節減につながるという。
GDS/CRSとの契約は基本的に、本社で一括してグローバル契約を締結している。ただし、これに加え日本地区で別途に打診をしており、経費削減につながる協力ができうる場合は、特定のGDS/CRSにシフトしていく考え。日本市場は複数のGDS/CRSがしのぎを削り、他国と異なる特殊性がある。ただし、あるGDS/CRS端末でダミーの記録を作成し、その後に別のGDS/CRS端末で発券することがあり、「旅行会社は手間が多く、航空会社は負担するコストが大きい」と指摘する。こうした対応について旅行会社には、「1つのGDS/CRSにするようお願いをしていく」とし、旅行会社から協力を得られた場合は、提示するNET価格等の契約面で優遇するほか、エールフランス/KLMが推奨GDS、推奨CRSを指名したことと同様の施策も考えていくという。
さらに、流通コスト削減の観点では、「ダイレクト・コネクト」としてアメリカ、ヨーロッパで既に展開している流通形態を日本でも導入したい考え。これは、AAが持つ座席を旅行会社に直接提供するもの。航空会社のインベントリーを旅行会社が直接参照する形態に変更し、流通コストの大幅削減をねらう。プログラム開発をはじめ、大きなコストの発生も予想されるが、「一緒に取り組んでくれる旅行会社があれば、すぐにでも展開したい」としている。
▽ゼロ・コミッションへの道すじ
近づいてきたと言われるゼロ・コミッションの導入、時期について稲場氏は明言を避けた。その上で、考え方として「インディビを扱う旅行会社との話し合いで、ゼロ・コミッションの場合の透明性が高い、という場合は前に進む姿勢はある」とし、日系航空会社の動向、旅行会社の新たなビジネスモデルの形成などがポイントとした。特に、旅行会社のビジネスモデルは、「トランスアクションフィーをはじめ、消費者への課金体系について、出張管理の購買担当者にいかに分かってもらえるかが鍵」ともいう。今後はガラス張りの価格体系が日本市場でどれほど受け入れられるかが、ゼロを導入するタイミングとなりそう。ただし、市場シェアを多く占める日系2社の動向は大きく影響しそうで、今回の米系航空会社の動きに日系航空会社が「いつ追随するか」を注視する航空会社も多く、この2社の動向、その決定時期が日本の旅行業界のビジネスモデルの変革を直接的に促す鍵になりそうだ。
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※氏名について、訂正を致しております。ご迷惑をおかけいたしましたこと、お詫びいたします。(編集部)
稲場氏は、旅行会社へ説明を開始したことを明らかにし、「7%から5%へ変更した時と比べ、(旅行会社が発券手数料の削減に対する)準備はできているのではないか」との認識を示す。すでに前回の発券手数料率を削減した2006年にも、旅行会社に対して影響を押さえる対策として、セクターボーナス、NET価格の提供など旅行会社別に提案をしており、「レギュラーコミッションで影響が出るケースは、前回と比べ少ないのでは」との見方だ。AAとして、取り巻くビジネス環境について、「燃油価格が上昇すると、本国で上場する株価が低迷していく」ことに触れつつ、「燃油サーチャージで片道2万円、往復で約4万円を徴収しても、燃油費全体の約30%しか補填できない」と厳しさを表現する。「(本社の決算では)累積負債もあり、コミッションにも手をつけざるをえない」という。ただし、こうした状況について、AAの営業担当者らで旅行各社に事情説明し、個別の対応をとる。
ただし、今回の発券手数料率の削減で影響を受ける旅行会社もある。影響度とその対応について稲場氏は、「おおよそ1割を占めるKクラス、LクラスのPEX運賃とフルノーマル運賃。これを販売していただける場合、AAとしても優遇策を打ち出したい」とコメントし、AAへの販売を傾斜する旅行会社への還元策を打ち出したいという。例えば、往路はAA、復路は他社を利用する場合、AAプレートで発券する場合は3%で、他社では5%となり、他社の場合のコミッションが高く発券がAAプレートで無くなることも想定。こうした場合の旅程でもAAで発券、ボリュームを確保する旅行会社に対しては、インセンティブ、あるいはNET価格の提供などで、旅行会社にメリットある提示をする方針だ。
▽今後はコミッションからGDSのセグメントフィーの軽減へ
稲場氏は、今後の経費削減の方向性にも言及。経費はコミッション、インセンティブ、企業契約の割引、GDS/CRSのセグメントフィーが大きくあるが、「今後はGDS/CRSがポイントになる」との考えだ。旅行会社へのコミッションは7月1日付けで削減するが、稲場氏が語るように1割程度とAAは大きなコスト削減を見込んでいない模様。それに対し、GDS/CRSのコスト削減は端緒についたばかり。「GDS/CRS別に1セグメントを比較した場合、最低価格は3ドル70セントから7ドル20セントと大きな開きがある。ダラスへの往復でも、4.5セグメント、それに加えてトランスアクションフィーの10セントを加算すると、1PNRで5000円ほど」のコストといい、これを削減すると億円単位の節減につながるという。
GDS/CRSとの契約は基本的に、本社で一括してグローバル契約を締結している。ただし、これに加え日本地区で別途に打診をしており、経費削減につながる協力ができうる場合は、特定のGDS/CRSにシフトしていく考え。日本市場は複数のGDS/CRSがしのぎを削り、他国と異なる特殊性がある。ただし、あるGDS/CRS端末でダミーの記録を作成し、その後に別のGDS/CRS端末で発券することがあり、「旅行会社は手間が多く、航空会社は負担するコストが大きい」と指摘する。こうした対応について旅行会社には、「1つのGDS/CRSにするようお願いをしていく」とし、旅行会社から協力を得られた場合は、提示するNET価格等の契約面で優遇するほか、エールフランス/KLMが推奨GDS、推奨CRSを指名したことと同様の施策も考えていくという。
さらに、流通コスト削減の観点では、「ダイレクト・コネクト」としてアメリカ、ヨーロッパで既に展開している流通形態を日本でも導入したい考え。これは、AAが持つ座席を旅行会社に直接提供するもの。航空会社のインベントリーを旅行会社が直接参照する形態に変更し、流通コストの大幅削減をねらう。プログラム開発をはじめ、大きなコストの発生も予想されるが、「一緒に取り組んでくれる旅行会社があれば、すぐにでも展開したい」としている。
▽ゼロ・コミッションへの道すじ
近づいてきたと言われるゼロ・コミッションの導入、時期について稲場氏は明言を避けた。その上で、考え方として「インディビを扱う旅行会社との話し合いで、ゼロ・コミッションの場合の透明性が高い、という場合は前に進む姿勢はある」とし、日系航空会社の動向、旅行会社の新たなビジネスモデルの形成などがポイントとした。特に、旅行会社のビジネスモデルは、「トランスアクションフィーをはじめ、消費者への課金体系について、出張管理の購買担当者にいかに分かってもらえるかが鍵」ともいう。今後はガラス張りの価格体系が日本市場でどれほど受け入れられるかが、ゼロを導入するタイミングとなりそう。ただし、市場シェアを多く占める日系2社の動向は大きく影響しそうで、今回の米系航空会社の動きに日系航空会社が「いつ追随するか」を注視する航空会社も多く、この2社の動向、その決定時期が日本の旅行業界のビジネスモデルの変革を直接的に促す鍵になりそうだ。
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※氏名について、訂正を致しております。ご迷惑をおかけいたしましたこと、お詫びいたします。(編集部)