フィンランド航空、アジア戦略を促進−ヒエノネンCEOが日本線拡充も視野

  • 2008年5月12日
 フィンランド航空(AY)社長兼CEOのユッカ・ヒエノネン氏(右写真)は、2001年以降に着手してきたアジア戦略が順調に進んでいるとの考えを示し、今後はアジア戦略のいっそうの推進、ヘルシンキのMCTの短さを活かしたハブ戦略、環境を配慮した事業展開を重視する考えを示した。2008年第1四半期のヨーロッパ/アジア間は航空業界全体で需要は前年と同様であったが、AYは23%増、特にビジネスクラスの需要が伸びているという。収入割合も、フィンランド国内線が15%、欧州域内路線が40%に対し、アジア線は42%となっており、アジア発の乗り継ぎ需要を含めると50%に近い割合を占めるまでに成長しているという。

 AYのアジア戦略は、ヨーロッパで最もアジアに近い地理的優位性を最大限に活用。ヨーロッパとアジアをつなぐ最短のゲートウェイとしてヘルシンキをハブに、MCT25分を活用した直行便と遜色のない出発地と到着地間の移動時間の短さを強みとしている。2001年にAYはアジアに週9便で、このうち成田2便、北京3便、バンコク4便。現在は日本線だけで成田4便、名古屋4便、大阪7便の計15便と大幅に供給を増やし、欧州系航空会社で日本/欧州間の供給量はルフトハンザドイツ航空(LH)、エールフランス/KLMに次ぐ規模を誇る。AYのアジアへの供給量は2001年から6.5倍となり、アジアから欧州へのハブを意識した展開を強めている。

 利便性では、最短乗り継ぎのパターンが豊富にあることが特徴だ。アマデウスの2007年12月データによると、デリー、ムンバイ、バンコク、北京、上海、杭州、香港、東京、大阪、名古屋の10都市から、欧州36都市の乗り継ぎに720パターンのうち、AYが最も早い接続の路線として278パターンを数え、2位のLHの126パターン、KLMオランダ航空(KL)の40パターンを大きく引き離している。このため、ヒエノネン氏はアジア戦略を引き続き継続し、MCT25分の維持しつつ、供給量を増やす成長戦略を継続していく。ヘルシンキ空港でも、AYのアジア路線の増便とそれを受けた欧州での増便を視野に拡張工事が進んでおり、アジア/欧州間の需要を受け入れていく。

 アジアへの供給量の増加の方法として、「デリー、北京、東京などはスロットの確保が難しい」とし、現在から飛躍的な供給増は難しいとの考えを示しつつ、アジアの主要都市(Primary Cities)と欧州の地方都市(Secondary Cities)をつなぐ路線を強化し、需要を確実に確保していく。このうち、アジア路線の展開は、今後は就航地の増加に加え、時期的な明言を避けたが「日本路線は便数を増やしたい」と東京線の増便をはじめ、各路線の増便を目指しつつ、コードシェアなどの展開も視野に入れる。また、アジアから近い地理的な優位性はあるものの、コペンハーゲン、フランクフルト、パリ、ロンドンなどアジア主要都市と欧州主要都市を結ぶ直行便との競争は避けつつ、ヘルシンキから東欧、西欧へのネットワークを充実させていくことも重要な施策になるとの考えだ。


▽航空事業展開の厳しさ

 ヒエノネン氏は現在の航空業界を取り巻く厳しさとして燃料費、チケット価格の下落などをあげる。2008年の燃油費は2002年比で6倍と想定しており、この価格上昇は大きな負担となると見ている。ただし、経営体質の強化は、AYとしては統合、M&Aなどの再編ではなく、単独でより効率性を高めていく方向性を志向している。これはAF/KL、LHとスイス航空(LX)の統合が堅調に進んでいるとの見方も示しており、効率化を図らなければ生き残りができない状況にあることを指摘している。ただ、「規模が利益に直結するのであれば良いが、他の業界を見ても、最大規模の企業が最大の利益を得ているわけではない」とし、規模の大きさが利益確保の秘訣ではないとの考えを示した。

 実績は「2008年上半期までは、昨年と同様の実績を収められる」と語ったが、「それ以降はわからない」として、世界経済の停滞や燃油費の高騰、さらに格安航空会社を含めた価格競争でチケット価格が下落しており、こうした懸念材料がある中で、先を読みにくい状況にあるとしている。そうした状況下で、第1四半期の営業利益は前年の2倍を記録、最終利益は燃油費の高騰もあり前年から下落している。このため、引き続き経営体質を強化することを最優先の課題としつつ、基盤を作りつつ欧州内の路線展開を積極的に展開する考えだ。


▽将来像のひとつとして−環境への配慮

 ヒエノネン氏は乗り継ぎについて、「環境を考える上でも重要」という。例えばAYが就航するニューヨークとデリーを結ぶ場合、直行便では旅客ひとりあたり燃料418キログラムを消費するところ、ヘルシンキ経由の場合は342キログラムと少なくとも10%は燃料削減ができると例示し、長距離路線の場合は燃料を多く積むと燃費が悪くなる点を指摘。現在はヘルシンキ経由のニューヨーク/デリー間は乗り継ぎ時間6時間30分と接続は良くないものの、「2017年までの中長期計画で、ヨーロッパ/アジア間、北米/東南アジア間を結び、環境を配慮した事業を進める」とし、アジア路線のネットワークを増便などの施策で利便性の高いスケジュールを構築しつつ、環境に配慮した展開につなげる。

 機材でもボーイングMD11型機を退役し、エアバスA320型機とエンブラエルで欧州域内、長距離路線はA330型機、A340型機、2014年以降はA350エクストラ・ワイド・ボディを最大で15機の受領する契約をしており、新型の機材を取り入れていく。これによる燃費効率の改善も期待しており、A330/340型機で現在から2割減、A350XWB型機で31%減を想定している。