ユナイテッド航空、7月から発券手数料3%に引き下げ−「ゼロ」時代が迫る

複数の旅行会社によると、事前の打診はなく、UAは5月2日に一斉に文書と口頭で通知した模様だ。この書面によると、「原油価格高騰による運航コストの上昇の中、お客様と旅行会社のみなさまに引き続きフライトを安定して提供させていただくために、全社的な経費削減を進めております。今回の発券手数料変更もその一環として、ご協力をおねがいするもの」と、航空会社を取り巻く厳しい状況を手数料率引き下げの主な理由としている。UAの営業担当者らが旅行各社を訪問し、事情を説明しているという。
旅行会社の反応は、2006年と比べ、落ち着いている。「いずれゼロとなる」「他社も追随するだろう」「(コミッションカットの)流れは仕方がない」との意見が多い。また、レジャーを主力とする旅行会社から、「今年1月の下限撤廃を受け、PEX運賃を利用して地上手配を組み合わせた商品を作っているところ。アメリカ市場をはじめとするゼロ・コミッションを見すえ、その準備のスピードをあげ、旅行会社の価値を確立しなければ」という意見もあった。懸念材料は、視察、官庁など業務渡航にノーマル券面が使われることが多く、その需要に関連するもの。発券手数料が変更されることで、今後は「PEX運賃の券面が下がるなか、IT運賃を勧めることも視野に入れるべきか」との話しも出てきた。
UAが旅行各社に通知した2日、アメリカン航空(AA)太平洋地区副社長のテオ・パナジオトゥリアス氏はトラベルビジョンのインタビューに対し、コミッションについて「パートナー(旅行会社)の流通を可能にするもの」との認識を示しつつ、「コミッションは何を意味するかは航空会社によって違う。AAは現状をきちんと理解してもらえるように(旅行会社に)話をし、透明性を確保していく。ただし、ビジネスを成功に導くためには過去に引きずられてはいけない」との考え方を説明。AAとしては、「何も決定していることはない」ともコメントした。
▽3%は何を意味するか
今回のUAの発券手数料率の引き下げをめぐり、ある旅行会社の幹部は「販売報償費、あるいはオーバーライドコミッション、ボリュームインセンティブなどの上乗せはない」と、「今回の施策の方向性が見えない」という。特に、UAに限った場合、情報が錯綜するものの、「コミッションが下がるだけ」との声が多く、一部で聞かれた発券手数料率の下げ幅である2%分を販売報償費などに転嫁するとの説明を受けた会社は少ないようだ。
そもそも発券手数料率の引き下げは、コスト削減に大きな主眼を置いた施策。UAは今回、本社が「ゼロ」の意向を伝えて来たものを、「3%に引きとどめた」という動きをした模様だ。しかし、券面額が下がる現状で、3%を残し、販売報償費の対応がないとすると、今後の流通施策は、発券手数料率、販売報償費をあわせたUAから旅行会社への対価はゼロに近づく方向だ。一方、ある航空会社がゼロ・コミッションを検討していると話す旅行会社は、IATA代理店は発券手数料率と販売報償費をあわせた総額が焦点としており、その意味でUAの方針は「方向性が見えない」ということになる。
旅行会社側からすると、当然ながら「UA以外の航空会社へシフトする」動きが出ることが想定され、特にホールセラーは航空会社を選択して販売せざるを得ない。これにより、UA側も販売報償費を転嫁する旅行会社の選別を進めるだろう。この動きは7%から5%への引き下げでも起きている事象だ。この動きが加速すると、リテーラーは各航空会社別に仕入力の強い旅行会社を選択することになり、ホールセラーも選択にさらされる。旅行業界には、今よりもさらに変化が訪れるだろう。
いずれにせよ、今回の3%への販売手数料の引き下げで影響をうける旅行業の分野は、直接的には業務渡航と想定される。ただし、ゼロになる時期が2006年と比べ、さらに近づいており、旅行会社は消費者からマネジメントフィーの徴収など、ビジネスだけでなく、レジャーも新たな価値の追求を急がなければならない。成田の発着枠の増加、羽田の国際化が控える2010年は、供給量の増加が期待されている。また、航空自由化の流れは、下限撤廃をはじめ、航空座席の販売に自由化が訪れている。旅行会社と航空会社は互いにパートナーの位置づけを再定義し、互いに利益を生みだす新たな取引関係の中で、航空ビッグ・バンの時代を迎えるべきではないだろうか。(鈴木)
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