インタビュー−クロアチア政府観光局副局長のミロ・スルシェン氏


2007年は11月現在の日本人訪問者数は約8万3000人で、「12月を含めると10万人に限りなく近づいている」と好調に推移しており、「2003年の1万6000人から4倍増と勢い良く伸びている」。クロアチアの観光素材は、8つの国立公園、11の自然公園、6つの世界遺産が売りだが、中でも「古代ギリシャからロマン、バロックまで文化、歴史的な遺産、雰囲気、街並みは日本人の興味を引く素材と聞いている」と、今後の伸びにも期待する。例えば、西暦305年にローマ皇帝によって建設されたスプリットのディオクレティアヌス宮殿はクロアチアの歴史を感じるひとつであり、世界遺産でもある。また、ドブロブニク旧市街の美しさも定評があると自信を示す。
食やワイン文化も、「旅の醍醐味」として欠かせないと語る。クロアチア料理は大きく分けてハンガリーなどの影響を受けた内陸と、地中海料理の要素を取り入れた海岸地域に分けられるが、いずれも洗練されているという。こうした食事とともに、ワイン文化も重要で、700種ほどの上質なワインが醸造されており、知的好奇心を満たしながら各地をめぐる満足度の高い滞在を提供できる。日本の海外旅行市場は「成熟しており、伝統や文化を感じ、理解してもらえる素材を継続して提供をしていきたい」という。
▽チャーター便と定期便乗り継ぎを活用−客室確保は早めに
日本からの訪問者数の増加は、チャーター便の運航によるところも大きい。今後の日本からの訪問者数の増加に向け、今回の来日で日本の航空会社との意見交換をはじめ、旅行会社と対話をしていく考えだ。クロアチア/日本間の直行便の開設を望むものの、直行便の就航していないアメリカからの訪問者数も多いことから、乗継の良いミラノ、ローマ、ウィーン、ブダベスト、ミュンヘン、フランクフルトの各都市に就航する既存の定期便の活用も、策のひとつとして考案していく。また、日本人のクロアチア訪問は2泊から3泊を周遊で滞在することが多いことから、今後も近隣国との組み合わせを絡めた誘致も継続する考えだ。
客室供給量については、新たなホテルの建設が進んでいることを紹介。ドブロブニクにはベルビュー、リベルタス、エクセルシオールなど質の高いホテルがそろう。それぞれ、リノベーションや新規オープンなど、数年前に比べ供給量が増加。ただし、ドイツ、イタリア、オーストリアなどからの訪問者も多く、早めの予約が必要だという。
▽観光楽しむ、もてなし上手の国民性も武器に
クロアチアはGDPの20%超を観光産業が占め、主軸の産業だ。現政権は主力産業として位置づけを新たにし、観光行政は「大臣」をトップとして位置づけは格上げ。このため、観光大臣は交通機関、警察、健康(日本の厚生労働省)などと連携し、観光を中心とした各種の施策を掌握し、実施していく強力な指導力を得ている。
クロアチア観光局の目指す方向性は持続的な発展。手付かずの自然の環境保護、歴史のある文化遺産の保護ことも念頭に置き、質を高めていくという。2012年までに観光客数は1200万人、宿泊ナイト数は6600万ナイトの目標を掲げている。クロアチアの人口の約400万人に対し、200万人が旅行を楽しむというが、こうした余暇を楽しむクロアチアの人々は、海外からの観光客の受け入れにもゆとりを持った対応、ホスピタリティ精神の高さも売りだ。「クロアチアの人々は海岸沿いにもう一つの家を持ち、休暇を楽しむ」。1000を超える島を持つ国土がこうした暮らし方を生み出し、伝統を重んじたり、自然を大切にする風土を創りだした。「旅行業界の方は、ぜひ訪れ、雰囲気を体験していただきたい」。
