近未来の旅-ベルトラ創業者 荒木篤実氏
久しぶりに、WIT(Web In Travel)参加のため、シンガポールを訪問した。カンファレンスそのものからの収穫等は、ほぼ想定通りであったので後述するが、先に現地で感じ取ったシンガポールの人や街の変化から、近未来の旅について、考察をまとめてみたい。
シンガポールは、かれこれ10年ぶりぐらいになるので、アジアの「今」がどう変化しているかもみてみようと、また未来の旅のあり方のヒントを求めて空港に降り立った。
空港到着時の快適さ、これは以前よりさらに向上していた。到着からイミグレーションをでるまでほぼ5分、ノーストレスで自動にてパスポートコントロールを通過。以前よりもスピーディな越境パス体験に、少し未来を感じた。もちろん事前に入国審査の手続きをオンラインで済ませているからであるが、シンガポール来訪者はこのことを皆熟知している模様で、誰一人、迷子になっている人はみかけることすらなかった。
空港出口をでて、真夜中到着便だったので、タクシー乗り場へ直行した。気のせいか、TAXIよりも友人出迎えが多かったように思う。が、待機レーンがしっかり分かれているのでこれもスムースに乗車。白タクもいないことが明確なので、安心して利用できた。
街の中心部のビジネスホテルは、アジア独特の匂いともいうべき、不思議な空気感がある。特にシンガポールのような、人工都市ならではの独特の風情は、以前のままであった。F1開催が近いこともあり、道路はあちこちに柵が敷かれ、まさにレース場の様相を呈していたが、これはこれでイベント感満載でよかった。
旅の醍醐味は、未知との遭遇である。が、それがどんな未知かが大切であり、それは人さまざまだ。
タクシー利用ばかりでは未来はみえてこないので、MRT(地下鉄)に乗る。見覚えのあるプラットフォームだが、地下鉄改札は、クレジットカードのタッチ決済で普通に利用できた。大きなストレスがまた1つ減ったと感じた瞬間だ。世界的に進みつつあるこの改札方法は、明らかに未来型トランスポートの1つの形だろう。
さて、ランチタイムに外にでる。日中は、街ゆく人々は少ない。中近東の砂漠地帯と同じで、それはほぼ自殺行為だからだろう。日本も確かに暑いが、暑さの中身が違う。人々は建物のなかでまるで火星にでも住んでいますといわんばかりの安全地帯での生活に終始している。断念ながら、私個人としては、こういう環境は好きではない。こういう未来は正直遠慮したい。ここはまだ地球のはずだ、と独り言を心中で叫ぶ。
夕食時。ホテル近辺の街中のレストランを探して散策する。見覚えのある風景から、街中だとわかる。通りには、人気店とそうでない店は一目でわかる。同じ通り沿いにあるのに、店頭をみれば、一方は閑古鳥、もう一方は長い行列だからだ。並ぶのがいやな私は、結局不人気店にはいり、おいしくもない料理で我慢する。注文はもちろんQRコード。いまや世界中でメニュー表が消えている。これも未来図の1つかと思いつつも、どちからというと、憂鬱な気分で、仕方なくQRを読み込む。選択に悩んでいるとせっかちな店員さんが、これがうまいからとしきりに高いものをすすめにくる。これでは、DX化の意味が全然ないと失笑する。
最後に、今回のカンファレンスについて。さまざまなジャンルの方が登壇していたが、AIにふれない人はほぼいないぐらい、ホットなテーマでもあった。が、スピーカーも、聴衆も、まだ誰一人としてその正解をもっていないようにみえた。
ただ、1つだけ、とある人がよいことをいっていた。それは、人は結局人を信じたがる、という調査結果であった。AIは参考程度にする、リサーチャーとして時短化に活用する、ぐらいの感覚だという。これはまだまだ人間が人間の正しい勘を信じようとしている証左であり、すこしほっとした瞬間であった。
パクサヴィア創業パートナー。日産自動車勤務を経て、アラン(現ベルトラ)創業。18年1月から現職。ベンチャー経営とITマーケティングが専門。ITを道具に企業成長の本質を追求する投資家兼実業家。


