日本発オーストリア、回復続くも現地コスト上昇 ウィーン市観光局とDMC2社に聞く
日本発のオーストリア旅行が回復基調をたどる一方、円安や現地コストの上昇を背景に、旅行商品のあり方も変わりつつある。9月7日に都内で開催された第37回オーストリア・ワークショップで、ウィーン市観光局と現地DMC2社に日本市場の現状を聞いた。
ウィーン、日本市場は回復も19年水準には届かず
ウィーンの観光需要全体はすでにコロナ禍前を上回っており、2025年の宿泊数は2006万5000泊で過去最高を記録した。一方、日本市場は20万2000泊で前年比24%増まで回復したものの、2019年比ではなお40%下回る。
ウィーン市観光局のクリスティーナ・フライスレーベン氏は、日本市場の回復が遅れている背景として、円安や航空座席、地政学的要因などを挙げる一方、「毎月毎月徐々に伸びている」とし、ウィーンへの関心自体は強いとの認識を示した。
同局は2026年に「食」をテーマに掲げ、ウィーン料理を文化やライフスタイルと結び付けて訴求する。フライスレーベン氏は「旅行するときに食はすごく重要な要素」と説明。音楽、美術、宮殿といった定番に加え、リピーターにも新たな訪問理由を提示したい考えだ。2027年には帝都ウィーンの遺産を現代的な視点から捉え直す「ウィーン、グランドニュー!」を展開する。
旅行会社向けの販売支援も用意している。公共交通機関の利用と市内施設などの割引特典を組み合わせた「ウィーン・シティカード」は、旅行会社やホテルが割引価格で仕入れ、顧客に販売することで10%の手数料を得られる仕組みとなっている。
現地手配費が上昇、商品造成にも変化
一方、現地手配の現場では価格上昇が大きな課題となっている。
ユーロスコープ・インカミング&イベントの日本部門マネージャー、香山あずさ氏によると、日本からの需要は2023年ごろから戻り始め、2025年には取扱案件が大幅に増加したという。
ただし、ホテルやバスなどの手配費については「コロナ禍前と後では大きく異なる」。エネルギー価格や人件費の上昇がホテル、バス、レストランなどに波及し、さらに円安も重なる。香山氏は、従来のような格安ツアーの造成は難しくなっていると指摘。旅行会社を利用する顧客層も一定の旅行予算を持つ層へ変化しているとの見方を示した。
同社はオーストリアだけでなく、ドイツ、チェコ、ハンガリーなど中欧各国をウィーンから一括手配するほか、音楽ツアーやザルツブルク音楽祭、ハイキング、地方滞在などテーマ性のある旅行にも対応している。
EETS、日本市場への本格アプローチ開始
今回、日本市場への本格的なアプローチを始めたのがEETSだ。同社はアジア市場に特化したプレミアムDMCで、MICEやインセンティブ、文化交流、テーマツアーなどを手掛ける。
ジョン・フアン・ウーCEOによれば、現在は台湾市場が中心で、日本市場については今回の商談を通じて需要を把握したい考え。これまで台湾では、短期間に多くの都市を巡る旅行から、一地域に長く滞在し、内容を深く体験する旅行へと変化してきたという。
ウー氏は、日本人についても「早く回るプログラムではなく、一つ一つをきちんと見るようなプログラムを求めているのではないか」とみる。
ウィーンへの需要が回復する一方、現地DMCの手配環境はコロナ禍前から大きく変化している。現地コストの上昇と円安で従来の価格帯の商品造成が難しくなるなか、旅行会社を利用する顧客層にも変化がみられ、滞在の質やテーマ性を重視した商品への関心が高まっている。
