訪日客4268万人、消費額9.5兆円で過去最高——JNTOインバウンド旅行振興フォーラムより
JNTOが9月3日・4日の2日間にわたって開催した「第29回JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」では、観光庁・JNTO企画総室による講演に加え、英国・米国・中国など各市場を担当するJNTO海外事務所長による講演も行われた。本稿では、3日午前に行われた観光庁国際観光部国際観光課長の馬場裕子氏とJNTO企画総室長の竹中理登氏の講演、およびあわせて実施した個別取材の内容を中心に報告する。
2025年は訪日客・消費額ともに過去最高
観光庁の発表によると、2025年の訪日外国人旅行者数は約4268万人と過去最高を更新し、国別の外国人観光客受入数でも日本は2019年の12位から7位に浮上した(アジア域内では1位)※。訪日外国人旅行消費額も約9.5兆円と過去最高となり、自動車産業に次ぐ国内第2位の輸出分野となっている。
今年3月に閣議決定された第5次観光立国推進基本計画(2026〜2030年度)では、2030年に訪日客6000万人(うちリピーター4000万人)、訪日外国人旅行消費額15兆円、訪日外国人旅行消費額単価25万円、訪日外国人旅行者の地方部延べ宿泊者数1.3億人泊という目標が掲げられた。本計画の1つの特徴として、人数の追求だけでなく、消費単価や地方分散、住民生活の質との両立を重視することが挙げられている。
※中国は2025年の数値が未発表のため、2025年のランキングから除いていることに留意。
JNTOが見る欧米豪市場の拡大とAI時代への対応
企画総室の竹中氏は、欧米豪8カ国(米国・カナダ・豪州・英国・仏・独・伊・西)からの訪日客数が2015年の245万人から2025年には703万人へと約3倍に伸び、構成比も拡大したと報告。背景としては、日本人気の高まりがあり、世界的に著名な旅行雑誌で日本が魅力的な目的地として取り上げられるなど、訪日旅行への関心が高まっていることがあげられるとした。あわせて、子ども連れの家族旅行層が増加している点(同行者に「家族・親族」を選ぶ割合が10年間で2.6ポイント増、10代の訪日客数は4倍に伸長)も紹介された。
生成AIへの対応にも言及があり、旅行の情報収集・計画段階で生成AIの利用が急速に進んでいることを踏まえ、JNTOとしても、AIに推薦されやすい有用性・信頼性・独自性のあるコンテンツ制作を進めているという。
個別取材で見えたDMCマッチングの課題
個別取材でJNTO役員は、海外の富裕層向け旅行会社から「日本のDMCとの接点を持ちにくい」という声が聞かれる実情を明かした。また、DMOの組織体制や対応能力にも地域ごとに違いがあるが、DMOと地方自治体やDMCを含む関係事業者など地域の関係者が連携して、海外からの旺盛な需要を受け止める国内の受入体制を構築していくことが今後ますます重要となるとした。
また、JNTO担当者は、海外の高付加価値旅行の商談会であるILTM(International Luxury Travel Market)のような場では、自治体が単独で地域をPRするより、自治体とDMCが一体となって地域の魅力と手配機能を提示する方が、その後の具体的な相談につなげやすく効果的と話した。これは一般的な旅行商談会においても共通していえることで、JNTOとしてもB2B事業を通じて海外旅行会社と国内DMCのマッチング支援を引き続き行っていく考えを示した。
一方、FIT(個人旅行者)層に向けては、OTA経由で体験型コンテンツを流通させる動きも紹介された。FIT向けでは、いつ何人の旅行者が訪れるか見通しが難しいなか、地域の受け入れ態勢をどう柔軟に整えるかが課題となる。岐阜県では、地域の関係者や旅行会社などが連携し、OTAや海外の旅行会社向けに体験商品を成立させるためのトライアルも進められているという。
リピーターの周遊が示す地方誘客のヒント
台湾などのヘビーリピーター市場では、すでに47都道府県すべてを訪れた旅行者もいるという。JNTO担当者によると、シンガポールなどリピーター率の高い市場では、鹿児島や青森など、より遠方の地域への訪問が目立つ傾向もみられる。スキーや自転車など趣味を軸に各地を巡る旅行者の事例も紹介され、テーマ性を切り口とした地方誘客の可能性が示された。
訪日客6000万人という量的拡大とともに、消費額や地方誘客など旅行の質も追う第5次計画。その実現に向けては、地域の魅力を磨き上げるだけでなく、実際に予約・手配できる商品として海外の商流にどう乗せるかも課題となる。海外旅行会社と国内DMCをどうつなぎ、FIT向けの商品をどう流通させるか。今回のフォーラムでは、地方誘客の「その先」にある実務上の課題も浮かび上がった。