政府、令和8年版観光白書を閣議決定 宿泊業の人手不足と生産性向上を重点分析
政府は7月10日、令和8年版観光白書を閣議決定した。2025年の訪日外国人旅行者数と旅行消費額が過去最高を更新する一方、外国人宿泊需要の三大都市圏への集中や、宿泊業の深刻な人手不足が今後の観光成長を制約する課題として浮上した。白書ではテーマ章に「『働いてよし』の観光産業の実現に向けて―宿泊業の人材確保と生産性の向上―」を掲げ、投資や人材育成を待遇改善につなげる必要性を示した。
2025年の訪日外国人旅行者数は前年比15.8%増の4268万人、訪日外国人旅行消費額は16.4%増の9兆4549億円となり、いずれも過去最高を記録した。国籍・地域別では、2019年に比べて欧米豪の構成比が上昇するなど、市場の多様化も進んだ。
一方、2025年の外国人延べ宿泊者数は8.2%増の1億7787万人泊と過去最高となったものの、三大都市圏が67.0%を占め、地方部は33.0%にとどまった。地方部の比率は前年の30.9%から上昇したが、需要は引き続き都市部に偏っている。地方への送客拡大には、二次交通や多言語対応などの受入環境整備に加え、周遊や連泊を促す滞在型商品の造成が重要となる。
2025年12月から2026年1月に宿泊施設を対象に実施したアンケートでは、全体の72.2%が人手不足の状況にあると回答した。施設規模別では中規模施設が77.1%と最も高く、大規模施設が69.9%、小規模施設が66.0%だった。宿泊業は全産業に比べて年間賃金が低く、休日数も少ない傾向にあり、2025年の年間賃金総支給額は全産業の546万円に対して宿泊業は413万円となった。
労働生産性も、コロナ禍を除けば全産業の7割程度の水準にとどまる。従業員向け研修を実施していない割合が高く、設備やソフトウェアへの投資も低水準で推移していることから、省力化だけでなく、人材育成を含む有形・無形の投資を一体的に進める必要があるとした。季節や曜日による需要変動への対応から非正規雇用の割合も高く、人材の定着と能力開発を難しくしている構造が示された。
白書では、財務状況や曜日別の稼働率を分析して休館日を設定し、客室改装や食事の高付加価値化、従業員のマルチタスク化を進めた宿泊施設の事例や、地域間の繁閑差を活用して人材を融通する取り組みも紹介した。観光庁は、生産性と収益力の向上を賃上げや休日確保に還元し、人材確保とサービス品質の向上につなげる循環が必要だとしている。