JATA原新体制、観光立国の実現へ課題提示 「業界の実態数値化を」

  • 2026年7月12日

 日本旅行業協会(JATA)は7月8日、記者懇談会を開き旅行業界の現状と重点施策を説明した。原優二会長は、旅行産業が価格競争から脱却し、手配力や問題解決力に見合う対価を得る高付加価値産業へ転換する必要性を強調。バランスの取れた双方向交流、訪日客の地方分散、国内旅行需要の平準化を重点課題に掲げた。

 原会長は、コロナ禍を経て旅行各社が店舗やホールセール事業などのコスト構造を見直した結果、取扱人数が完全に戻らない一方で、生産性や収益構造が改善した企業もあると指摘した。今後は過度な価格競争に戻るのではなく、接客力、調整力、危機対応力、コンサルティング力など、旅行会社が持つ機能を価値として提供することが重要との考えを示した。

 2026年4月に施行された第5次観光立国推進基本計画では、国内交流とアウトバウンドの拡大が基本方針に位置付けられ、2030年の日本人海外旅行者数2000万人超が政府目標として示された。JATAは、インバウンドとアウトバウンドの不均衡が航空ネットワークの維持にも影響するとして、地方空港を活用した双方向交流や、教育旅行を通じた若年層の交流促進に取り組む。

 海外旅行市場は回復途上にある。2026年1~5月の日本人出国者数は585万人で、前年同期比5%増となったものの、2019年比では73%にとどまった。円安や海外の物価上昇、航空運賃と燃油サーチャージの高騰に加え、中東情勢による航空便や旅行心理への影響が市場回復の重荷となっている。旅行会社の海外旅行取扱額も2019年比で7割程度であり、単価上昇を考慮すると、人数ベースの回復はさらに低いとの見方を示した。

 JATAは海外旅行拡大プロジェクト「もっと!海外へ」を通じ、旅行会社や航空会社、空港と連携した需要喚起を進める。パスポート保有率の低下を課題に挙げるとともに、外務省の海外安全情報配信サービス「たびレジ」への登録や、十分な補償内容を備えた海外旅行保険への加入も促す。

 国内旅行では、2025年の日本人国内旅行消費額が26兆7746億円と過去最高となった一方、宿泊者数は伸び悩み、週末や大型連休への需要集中が続く。主要旅行会社の国内旅行取扱額も2019年比89%にとどまっており、直販やOTAの拡大に対応した事業モデルの再構築が課題となる。

 JATAは、ラーケーションや企業の有給休暇取得促進を通じ、平日旅行への需要シフトを働きかける。会員各社による平日旅行商品の造成や情報発信を進めるほか、企業に対して月曜や金曜に重要会議を設定しないといった取り組みも提案する。国内需要を平準化することで、混雑緩和に加え、長期滞在する訪日客の受け入れ余地を広げる狙いもある。

 訪日旅行では、2030年の訪日客6000万人、消費額15兆円という政府目標を見据え、ゴールデンルート以外への地方分散を推進する。旅行会社とDMOが地域資源を掘り起こし、ガイドや体験を組み合わせた高付加価値商品を造成することで、地域への経済効果と旅行会社の収益確保を両立させる方針だ。JATAは海外商談会への参加機会やインバウンド商談の場も拡充し、会員企業の市場参入を後押しする。

 原会長は、旅行産業の賃金、生産性、労働環境、従業員満足度などを継続的に数値化し、業界の実態と改善状況を社会に示す考えも表明した。人材確保と育成を進めながら、「働いてよし、給料よし、仲間よし」の産業を目指すとしている。