海外教育旅行シンポジウム、専門特化型ツアーなど9事業を紹介 工業高校の進路直結プログラムも

観光庁参事官(旅行振興)根来恭子氏

 観光庁はこのほど、「海外旅行シンポジウム2026」をハイブリッド開催した。シンポジウムでは、2025年度の「海外教育旅行プログラム付加価値向上支援事業」で採択した企画9件について、検討状況や現地視察、実施状況の発表、有識者による講評などを実施した。

 冒頭に登壇した観光庁参事官(旅行振興)の根来恭子氏は、2025年度は過去最高の30件超の応募があり、このうち9件を採択したことを説明。加えて、旅券法の一部改正により、7月1日からパスポートの申請手数料が最大7000円減額される見通しであることに触れ、「手数料の引き下げで『海外旅行に行ってみたい』というきっかけになれば」と期待を示した。

 そのうえで同氏は「学校の教育旅行が多くの子どもたちにとって人生初の海外旅行体験になると思う。観光庁の事業を活用し、よりよい海外教育旅行を作っていただきたい」と関係者に呼びかけた。

 また、選定委員会の座長を務めた、次世代教育ネットワーキング機構理事・事務局長の高野満博氏は「応募数が多く審査が難航するなか、いかに横展開できるかが一つの課題だった」と振り返った。今回の応募には独自性の高い「とがった」提案も多く、個別では展開しにくいものの、「見方や切り口を変えることで横展開できる」という観点で採択した事例もあったという。

応募団体・実施学校名 プログラム概要 実施国・地域
くま川鉄道 × 熊本県立球磨工業高等学校 建築で未来を創る:台湾で学ぶ災害復興と伝統継承の実践型グローバル教育 台湾
東武トップツアーズ札幌支店 × 立命館慶祥高等学校 STEM交流プログラム モンゴル
カモメツーリスト × 新渡戸文化中学校・高等学校 新しい時代の未来を創造する旅!~インドの精神・哲学から、創造性・柔軟性・余白を感じる 次世代スタディツアー~ インド
JTB 茨城南支店 × 茗渓学園中学校高等学校 微笑みの国で拓く、Well-being探究の旅~自由研究で見つける、私と世界のつながり~ タイ
イクシル × 全国工業高等学校長協会 多文化理解 × ものづくり × キャリア育成の「体験型」プログラム マレーシア
東武トップツアーズ仙台支店 × 聖ウルスラ学院英智高等学校 ストリートチルドレン支援現場で学ぶ「産業福祉」実地研修 フィリピン
JTB教育第二事業部 × 東京都御蔵島村教育委員会(御蔵島村立御蔵島小中学校) 離島と世界を繋ぐ~歴史から未来を創り人材を育む教育旅行プログラム~ アメリカ
JTB佐賀支店 × 佐賀県立有田工業高等学校 Think globally, Act locally! 「グローカル人材育成プログラム」 ~職業観を通して持続可能な地域社会へ~ ドイツ
エモック・エンタープライズ × 開智中学・高等学校 海外で日本を学ぶ:日本語・日本文化から始める海外研修の形 チェコ

専門特化型のテーマが顕著 工業高校向けプログラムも

 今回採択された9件のプログラムの特徴は、建築、STEM、福祉、ウェルビーイング、伝統工芸など、テーマを明確に絞り込んだ専門特化型のプログラムが目立った点だ。なかでも工業高校など専門教育に対応したプログラムが存在感を示した。

 全国工業高等学校校長協会とイクシルが造成したマレーシアのプログラムでは、工業高校に特化し、錫の歴史やロボティクス、多文化共生社会を「技術」という視点から読み解く内容とした。

 具体的には、現地学生とロボット相撲のワークショップや錫の鋳造体験、企業訪問やフィールドワークを組み合わせ、技術と社会の関係性を体感的に学ぶ構成とした。

 イクシルによれば、生徒同士がプログラミングなどを議論しながらロボット相撲競技に取り組むことで、語学力に依存しない専門性ベースの交流をはかる。英語は教科ではなく「有効な対話ツール」と捉え、現地の人と積極的に関わることを重視したという。

 アドバイザーを務めた日本大学国際関係学部教授の宍戸学氏は、「専門性を意識した国際交流や現地での学びが興味深い」と講評。農業や水産業などの他の専門分野に広がる可能性があるとし、「キャリア教育と関連付ければ今後のアプローチに可能性がある、先進的な取組」と今後の展開に期待を示した。

 また、くま川鉄道と熊本県立球磨工業高等学校は、伝統建築の継承や災害復興をテーマに、現地大学や専門機関と連携した技術的な学びを深めるプログラムを実施。JTB佐賀支店と佐賀県立有田工業高等学校は、有田焼の産地として後継者不足や地域産業の衰退といった課題を背景に、ドイツ・マイセンで陶磁器技術の保護・継承・発展を学ぶプログラムを用意した。事後学習ではキャリアビジョンの具体化や地域への還元も図る。

 アドバイザーを務めた和歌山大学観光学部・武蔵野大学しあわせ研究所教授の加藤久美氏は、両事例について「国や地域の風土・気候と密接に関わる伝統産業技術を学び、専門性を活かしたプログラム」としたうえで、「グローバルなサステナビリティの観点から今後の継承やの職業観を考える機会となる」と評価。そのうえで、日本独自のサステナブルな観光プログラムになる可能性から、事前・事後学習に観光商品デザインを組み込むことを提案した。

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