回復途上の日本市場、バスク州観光局長が語るB2B重視の狙い
バスク州観光局ダニエル・ソラナ局長
スペイン・バスク州観光局は、日本市場におけるプレミアム層の誘客強化に乗り出している。観光客数の拡大ではなく消費額と質の向上を重視し、旅行会社との連携を軸に回復の遅れる日本市場の再活性化を図る方針だ。東京で開催された業界向けワークショップの機会に、ダニエル・ソラナ局長が戦略を語った。
バスク州観光局は、アジアや米国などの長距離市場を重点ターゲットとし、特に富裕層などのハイエンド旅行者の開拓に注力している。「遠方からバスク州に来る旅行者の多くがハイエンド層であり、平均消費額の向上にもつながる」とソラナ局長は説明する。高級ホテルや上質なサービスに加え、美食を核としたガストロノミー体験を強みとし、自然や文化と組み合わせた高付加価値な観光を打ち出す。
同州の特徴は、観光客数の増加を目的としない点にある。現時点でオーバーツーリズムの問題は限定的であり、「私たちは人数を増やすことは考えていない。観光の質を上げることが重要だ」と強調する。夏季への集中を避け、年間を通じた分散化を進める方針で、実際に夏の観光セクターの成長率が約1%にとどまる一方、その他の季節は4.5%と伸びているという。観光客の約90%がいわゆるスローツーリズム志向である点も特徴だ。
さらに、観光産業全体の収益性向上も重視する。「高単価だけを狙うのではなく、どの価格帯でも事業者が適切なマージンを得られることが重要だ」とし、過度な値引きに依存しない持続可能なビジネスモデルの構築を目指す。観光によって生まれた富を地域やサービス向上に再投資することで、長期的な成長を実現する考えだ。
日本市場については、コロナ前に増加していた訪問者数が回復途上にあり、「他国と比べて回復が遅れており、特にハイエンド層の回復が鈍い」と現状を分析する。その一方で「まだ大きな伸びしろがある市場」と位置付け、今回の来日では旅行会社やツアーオペレーターとの関係構築を重視した。プレミアム層の誘客にはB2B連携が不可欠であり、日本市場では特に有効な手法とみている。
旅行形態として、日本人はスペイン周遊の一部として訪問するケースが多い一方、欧州からは車で訪れる旅行者が多く、その割合は約65%に上る。また欧州からの旅行者の約50%はリピーターである。こうした傾向を踏まえ、同州では4泊から8泊で地域を深く体験する周遊ルートも提案している。
また、以前より取り組んでいるスペイン北部4州で展開する広域プロモーション「グリーンスペイン」を通じた訴求も進めている。同キャンペーンは、バスク州を含む北部地域の豊かな自然や景観を活かし、周遊型の観光需要を取り込む狙いがある。
加えて、足元では中東情勢が旅行先の選択にも影響を及ぼしている。ソラナ局長は「紛争地域に近いデスティネーションを避け、より安全と認識される地域へ旅行先を変更する動きがある」と指摘。その結果として、トルコやエジプトなどを検討していた旅行者がスペインへ流れる傾向が見られるとし、「バスク州に限らず、スペイン全体の観光需要を押し上げる要因になり得る」との見方を示した。
最後に日本の旅行会社に向けては、「バスク州は安全で、自然・文化・美食がそろった魅力的なデスティネーションだ。顧客満足につながる体験を提供できる」と訴求した。日本人旅行者についても「文化への関心が高く、地域との交流を大切にする」と評価し、今後の送客拡大に期待を示した。
